第32話
エルクが確認したキラーアントキングとキラーアントクイーンの体長はどちらも九メートル近くあった。
そして、心なしかルリの態度が少しおかしいことにエルクは気付いたが、エルクはルリの様子を見てあえてそのことには触れないことにした。
「ここにキングとクイーンがいると言うことは、この奥にエンプレスキラーアントが居るかもしれないな。ルリ、準備はいいか」
「え、ええ、だ、大丈夫に決まっているわ」
「そうか、じゃあ、俺はキングの方をやるから、ルリはクイーンの方を任せるぞ」
「ええ、ま、任せておきなさい」
エルクはルリの情緒不安定さに一抹の不安を抱きながらもルリなら大丈夫だろうと判断した。
「それじゃあ、行くぞ。ルリ」
エルクはそう言うと【雷切】を中段に構えてキラーアントキングに向かって駆けだした。
「ちょ、わかったわよ。行けばいいのでしょ。行けば」
ルリもまたそう言うとキラーアントクイーンへと駆け出して行った。
勿論、フェンリル形態で。
キラーアントキングに攻撃を仕掛けて行ったエルクは、キラーアントキングの異常に硬い甲羅に思いがけずも苦戦していた。
「クソッ、こいつの甲羅が硬すぎて【雷切】の刃が通らないな。このレベルの魔物だと只の剣術じゃダメか」
【雷切】ではキラーアントキングに攻撃が通らないと悟ったエルクは、【雷切】を無限収納に仕舞うと、仙術を使うために、仙気を練り始めた。
仙術は仙気を練ってその気を各属性に変換して技を繰り出すが、仙気を変換せずにその気で体を覆うと身体能力が強化されて普段の身体能力の十倍程になる。
エルクは、その気で体を覆い超身体強化を施すと、再びキラーアントキングに攻撃を仕掛けた。
「ふっ、ウォォォォ、ふん、俺の仙術を余り甘く見るんじゃねえぞぉぉぉ」
エルクが仙気で強化された拳でキラーアントキングの胴体部分の甲羅を数回全力で殴りつけるとあの強靭だった甲羅に亀裂が走った。
エルクは甲羅に亀裂が走ったことを見逃さず、体に纏っていた仙気の一部を火属性に性質変化させて、その亀裂めがけて仙術、火の型、火拳を叩き込んだ。
エルクの放った火拳はそのまま亀裂の走っていた甲羅を突き抜けてキラーアントキングの体内を高温の火で焼いていった。
「グ、ギャァァァ」
体を内側から火で焼かれたキラーアントキングは、甲高い叫び声をあげて絶命した。
その頃、キラーアントクイーンの相手をしていたルリは、やけを起こして理性を一時的に失い暴れていた。
「グルルルル、ガアアアア」
ルリは、目にも止まらぬ速さでキラーアントクイーンに近づき、その強靭な爪でキラーアントクイーンの首をあっさりと切り飛ばしてしまった。
しかし、ルリは一向に正気を取り戻す気配はなくその場に留まりずっと唸り声をあげ続けていた。
「お~い、ルリ、そんな所で唸り続えて一体何をやっているんだ。こっちにこいよ」
暫く唸り続けていたルリは、エルクの呼びかけで正気に戻ると、目の前に首の落ちた巨大な虫の死骸があり、ルリは不覚にもエルクの近くで少し漏らしてしまった。
「あ、あ~~~、……エルク、あなた、今何か見たかしら」
「え、あ~、うん。いや、何も見てないぞ。それにしてもルリ、お前、虫が苦手だったのか。最初に言ってくれれば少しは配慮できたのに。まあ~、何だ。この後に控えているエンプレスキラーアントは俺が主体で倒すからお前は、俺のサポートをしてくれ。それなら大丈夫だろ」
「ええ、サポートなら。あんな気持ち悪いのにはもう二度と近づきたくないもの」
そして、エルクとルリはこの巨大な部屋の奥にある通路を通って先へと進んで行った。
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