第33話

 巨大な部屋の奥にある通路を先へと進んで行ったエルクとルリの前には、直ぐに巨大な両開きの扉が現れた。


「どうやらこの扉の中にエンプレスキラーアントは居るみたいだな。ルリ、心の準備は出来ているか。これで最後だぞ」


「ええ、少し待って、今から深呼吸をするから」


 ルリは、入念に深呼吸をしてバクバクと激しく脈打っている心臓を落ち着かせるとゆっくりと隣にいるエルクを見て頷いた。


「どうやら準備が出来た様だな。よし、行くぞ」


 そして、エルクとルリは二人で扉を開けて中へと入って行った。


 部屋の中へと入ったエルクとルリに突如、何者かが話しかけて来た。


「おや、これは、これは、この様な所に珍しいお客さんですね。歓迎しますよ。それで、この様な場所に何様でしょうかね」


 エルクたちに声をかけて来たその女は褐色の肌をして王城にいる女性の官僚が着ているスーツを着てその上から研究員が着ている様な白い白衣を羽織っていた。


「ああ、様なら大ありだ。お前がこの辺りの水脈に強力な酸を垂れ流しているエンプレスキラーアントか。もしそうなら到底許すことは出来ないな」


 エルクがその様に女に質問すると、女は少し間を置いて突然お腹を抱えて笑い始めた。


「おい、何がそんなに可笑しいんだ。こっちは真面目に聞いているんだが」


 エルクは女の余りの態度に少し怒気を混ぜて聞いた。


「はははは、は~、これは失礼しました。良いでしょう。あなたの質問に答えてあげましょう。確かにこの辺りの水脈に酸をばら撒いているのはこのわたくしであっていますが、このわたくしをあの様な蟻畜生と一緒にされるのはいささか心外ですね」


 その女は話しながらエルクたちに強烈な威圧を放っていた。


「うっ、中々強い威圧じゃないか。それじゃあ、ここにいた筈のエンプレスキラーアントは一体どこにいるんだ」


「あなたは、何を言っているのですか。エンプレスキラーアントならさっきからあなた方の後方にいるではありませんか」


「「なに」」


 エルクとルリは、とっさに後ろを振り返ると入り口から少し離れた所に体長十五メートルはありそうな巨大な蟻が体のあっちこっちが切り飛ばされた瀕死の状態で倒れていた。


「あれは、お前がやったのか」


「ええ、そうですよ。中々良い声で鳴いてくれましたね。あなた方にも聞かせてあげたかったですね。非常に残念です。おっと、自己紹介がまだでしたね。わたくしは魔王国技術開発局局長ドンナと申します。あ、別に名前は覚えなくて良いですよ。だってあなた方はここで死ぬのですからね」


「ふんっ、上等だよ。こんな酷えことしやがって、この外道が。お前のせいでここから近くの村にも被害が出ているんだ。この報いは受けてもらうからな」


 こうして、魔王国技術開発局局長ドンナとエルク、ルリの戦いが始まった。







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