第31話

 ドーム状の部屋を出たエルクは、そこから先に続く通路へと足を踏み入れた。


「ここからは暫く真っすぐなんだな」


 エルクは、通路を真っすぐ進んでいると、通路の少し先に何か小さな穴があるのを発見した。


「何だ。この穴は」


 エルクは怪しげなその小さな穴を覗き込んだ。


「うお、何だ魔物の死骸か。どうやらここはキラーアント達の食料保管庫の様だな。少し惜しいような気もするけど、こんなに原型を留めていない状態じゃ持ち帰っても余り意味は無いかな。先に行くか」


 エルクは、キラーアント達の食料として捕らえられた魔物たちの死骸を回収するのを諦めて先を急いだ。


 エルクは、その後も同じような食糧庫を見つけたが、それらは無視して通路を進んで行った。


 その頃、ルリはあいも変わらずフェンリル形態で通路を進んでいた。


 因みに氷漬けにして倒したキラーアントクラッシャーはルリが少し乱暴に箱庭の中に入れていた。


 通路をヨチヨチと歩いて進んでいたルリは通路の壁に少し大きい横穴があるのに気づきそこまで行くと恐る恐る鼻先を横穴に近づけて臭いを嗅ぎ危険がないことを確認すると、顔を穴の中に入れて何があるのかを確かめてみた。


「い、一応、この中に何があるのか確認しないといけないわよね。本当は嫌だけれど、し、仕方ないわよね。い、行くわよ」


 そして、穴の中を確認してみるとそこには大量の卵があった。


 しかも中には卵の中から出て来て体を半分近く出した状態で死んでいるものまであった。


「う、うぇぇぇ、最悪だわ。こ、これは回収しなくて良いわよね。気持ち悪くて触りたくないし」


 結局ルリはその横穴の周りを暫くウロウロしていたが、卵は回収することなく通路を先へと進んで行った。


 そして、また暫く進んでいると巨大な部屋へと出た。


 ルリは辺りを伺いながら前へと進んで行くと、急に横から声をかけられた。


「あれ、ルリじゃないか。そうか、あの分かれ道はこの巨大な部屋で合流するようになっていたのか。それにしてもルリ、お前何でフェンリル形態なんだ。心なしかへっぴり腰になっているしさ」


「な、何でも良いでしょそんなことは、それよりも、あの中心辺りに大きい何かが二体いるわよ」


「ああ、わかってる。お前と話しながら鑑定眼で鑑定してみたけど、どうやら、キラーアントキングとキラーアントクイーンみたいだ」


「はあ~、また虫。私、もう嫌だよ~」


 ルリは小声でそう呟いたがエルクはルリと少し離れていたため聞き逃した。


「え、ルリ、何か言ったか」


「い、いいえ、な、何も言っていないわ」


 エルクとルリはキングとクイーンの全容がはっきりと見える所まで進んで行った。


 そして、確認したキングとクイーンの体長はどちらも九メートル近くあった。







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