第30話
ルリがへっぴり腰で先へと進んでいる時エルクは、さらに先へと進んで少し広いドーム状の部屋に出ていた。
「うお、何だこの部屋は」
エルクはルリがいないのでこの周辺を見るために無限収納からマスイの街で買っておいたランタンを取り出し明かりをつけた。
「うわ、これはまたうじゃうじゃいるな。全部死骸だけど。それにしてもこの部屋までに回収したノーマルのキラーアントよりも小さいような気がするな。少し鑑定眼で調べてみるか」
鑑定眼で調べたところこの部屋にいる小さいキラーアントはレッサーキラーアントと言う種族であることがわかった。
何でも卵から孵ったキラーアントの幼虫が成体であるキラーアントになる前になる種族らしい。
「そうか、俺達人間で言う少年期みたいなものか。成程な。奥の方に卵もあるな。全部回収しておくか。何かの役に立つかも知れないしな」
エルクは数十体いるレッサーキラーアントと同じく数十個あるキラーアントの卵を無限収納に仕舞うと、先に進む道を探してこの部屋の中を歩き回った。
「やっと見つけたぞ。このドーム状の部屋、どんだけ広いんだよ。結構時間を喰っちまったな。先を急がないと」
そして、エルクはドーム状の部屋を後にした。
その頃、ルリはキラーアントへの余りの恐怖に人化を解いてフェンリル形態で道をもの凄い速さで進んでいた。
無論、道中にあったキラーアントや上位種の死骸はなるべくじかに触れない様にしっぽで箱庭の中に叩き入れていた。
そして、遂にそれがルリの前に姿を現した。
「な、なななな、何で生き残っているのよぉぉぉ」
何と虫嫌いのルリの前にエルクの仙術、氷神の絶対零度領域を耐えきったキラーアントクラッシャー、ジェネラルの上位種が姿を現したのだ。
キラーアントクラッシャーは突然の絶対零度による攻撃で仲間であり部下のキラーアントやその上位種を殺され自身も手ひどい傷を負い、気が立っていた。
そんなキラーアントクラッシャーの前に強敵であるフェンリルが現れてキラーアントクラッシャーは最初大変驚き直ぐにその場から逃げようとしたが、現れたフェンリルは何故か自分に対して恐怖心を抱いている様にキラーアントクラッシャーには見えた。
ルリはまだ生きているキラーアントクラッシャーにしり込みしながらも何とかゆっくりと近づいて行きながら、なるべく触れない様に倒すにはどうすればいいかだけを頭をフル回転させて考えていた。
「やっぱり、凍らせるのが一番手っ取り早いわよね。うん。これ以外にはないわね」
ルリがアイスブレスでキラーアントクラッシャーを凍らせて止めを刺そうと決めた時だった。
ルリは心を決めて視線を前方に向けた時、ルリの目にこちらに突撃して来ようとしているキラーアントクラッシャーの姿が映った。
「ひぃっ」
ルリは突然の事で先程決めた決意よりも恐怖心の方がわずかに上回ってしまった。
そして、物凄い速さで突っ込んでくるキラーアントクラッシャーにルリはパニックを起こしてアイスブレスを何発もキラーアントクラッシャーに放った。
そして、目を瞑っていたルリが目を開けて前を見てみると、ルリの眼前数十センチ距離に氷がガチガチに凍り付いたキラーアントクラッシャーの姿があった。
「チョロロロ~」
そして、ルリはまた漏らしてしまった。
「何で私がこんな目にあわなくちゃいけないのぉぉぉぉ~」
その場にルリの悲し気な声が木霊していた。
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