第29話

 エルクは再びルリのライトの魔法を頼りに凍り付いたキラーアントの巣へと入って行った。


 キラーアントの巣の中に入ってみると、先程までの湿気たっぷりのジメジメした巣とは打って変わって一面銀世界になっていた。


「見た感じしっかり氷漬けに出来たみたいだな」


「ええ、でも高位の魔物は耐えきっている可能性があるから一応警戒をしながら先に進みましょう」


「そうだな。気を引き締めて行こう」


 そして、暫く先程引き返した分かれ道に差し掛かった。


「よし、ここから先も俺たちにはそれ程危険ではないはずだ。二手に別れて進んでみよう。先が行き止まりになっていた方は直ぐに引き返してもう片方の道を追うって事でどうだ」


「ええ、それでいきましょう」


「あ、後、途中で見つけたキラーアントの死骸は箱庭の中に入れておいてくれないか。どうやらこの前手に入れた錬金眼で素材として使える様なんだよ」


「そうなの。わかったわ」  


 そして、エルクとルリは互いに別々の道を進んで行った。


 ルリと別れたエルクは分かれ道の右側の道を進んでいた。


「お、早速素材ゲット。これはキラーアントガードナーか。盾や鎧の素材に出来そうだな。確保しておくか」


 エルクはキラーカントガードナーを無限収納に仕舞うとまた先に進んで行った。


 そして、普通のキラーアントの死骸を何個か無限収納に仕舞いながら暫く先に進んでいると、先の方に何かモゾモゾと動いているものを発見した。


「ん、何だあれは。もしかしてキラーアントの生き残りか」


 エルクはその動くものが何なのかを調べるために近づいて行った。


「こ、これは、何て言うか、災難なやつだな」


 そこにいたのは氷漬けにされて死んだ、沢山のキラーアントや上位種のウォーリア、ファイター、ナイト、ウィザードに囲まれて身動きが取れなくなっているキラーアントジェネラルだった。


「まさか、こんな浅い所でこいつに会うことになるとは思わなかったぜ」


 エルクは身動きが取れなくなっているキラーアントジェネラルに近付き首を切り落とした。


「うん。中々良い素材をゲット出来たな。後で錬金眼を使って何が出来るか楽しみだな」


 エルクはそう言うとキラーアントジェネラルとジェネラルを囲って死んでいたキラーアント達を無限収納に仕舞って先へ進んで行った。


 その頃ルリは、エルクとは反対側の道を真っすぐ進んでいた。


「本当にどこもかしこも氷漬けね。こんなので生き残って居るキラーアントがいるのか少し疑問だけど、万が一って事があるから油断せずに行きましょう。それに私って実は、む、虫が苦手なのよね。はあ~、少し時間がかかっても良いからエルクと一緒に行けば良かったわ」


 そんな事を言いながら前へ進んでいると曲がり角が現れた。


「うう~、最悪。こんな所に曲がり角なんて、私、ついてないわ」


 ルリは恐る恐る曲がり角から先に顔をのぞかせてみると、いきなり目の前に氷漬けにされて死んだキラーアントが姿を現した。


「き、きゃああああああ!!」


 ルリは突然の事に仰天して尻もちをつき不覚にも少し漏らしてしまった。


「あ、…………これエルクに会うまでに乾くかしら」


 ルリはその様なことを心配しながら恐る恐るキラーアントの死骸に触れてその死骸を箱庭の中に仕舞うと、少しへっぴり腰になりながら先へと進んで行った。









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