第12話

 翌朝、エルクは目を覚まし顔を洗いに小屋の外に出ると小屋の戸の前にセイントキングワイバーンのブロンが妻と子どもたちを連れて戸の前にたたずんでいた。


「ん、ブロン、奥さんと子どもたちを連れてそんな所で何をしているんだ」


「はっ、我が主、我はこの三日間、妻と子どもたちと顔を突き合わせて話し合って決めて来たのだ」


「ん、何を決めて来たんだ。話してみろ」


「はっ、我と娘、妻と息子に分かれて主様とルリ様の護衛もとい身の回りのお世話や雑用などをしようと言うことになったのだ」


「……何でそう言うことになったんだ。まず、俺とルリは単体でも強いから護衛なんて必要ないし、雑用と言っても食材の買い出しとかそう言うのになってしまうが良いのか。あ、それとそろそろこの小屋を大き目の一軒家に建て替えようと思っていたからその家の維持とか後は、後々作ろうかと思っている畑とかの施設の管理とかになるけど、本当に良いのか」


「勿論、良いに決まっているではないか。我々はこの箱庭に住まわせてもらっているんだ。その位の雑用きちんとこなして見せよう。なあお前たち」


 ブロンの問いかけにブロンの妻と子どもたちは揃って頷いた。


「しかし、お前たち、そのワイバーンの姿じゃあ色々と動き難いんじゃないか」


「それなら大丈夫だ。種族が変化した時に合わせて人化のスキルを手に入れているからな。これで外に出ても主様とルリ様の手伝いをすることが出来る」


 ブロンがそう言うとブロン一家は揃って人化のスキルを使い人型になってエルクに片膝をついて頭を下げて来た。


 エルクがブロンたちの願いにどう返答するか困っていると後ろから戸の開く音がして後ろを振り返ってみると、まだ眠たそうに目元をこすりながら立っているルリがいた。


「良いんじゃないかしら。これからどんどんやる事も増えて行くことだし人ではあっても困らないもの。それに人化できるのなら箱庭の外でのことも色々頼めるし私たちとしてもメリットしかないんじゃないかしら」


「まあ、そうだな。それじゃあブロン一家、これからよろしく頼むな」


「はっ、何でも言いつけてくれ。我らで出来ることなら何でもする」


「それじゃあまず、手始めにお前たちには自分のギルドカードをギルドで作って来てもらうとするか。これから色々仕事を頼むことになるからな。ギルドカードは身分証にもなるから作っておいて損はないはずだ。お前たちも箱庭のゲートは自由に開いたり閉じたりして出入りできるからな。では早速、朝食を食べたらギルドに向かうか」


 そして、朝食を食べ終えたエルクたちは箱庭を出てマスイの街のギルドに向かった。


 ルリとボロンたち家族を連れて冒険者ギルドを訪れたエルクはまず、ボロンたち家族のギルドカードを作るために受付カウンターに向かった。


 エルクは、カウンターで受付をしている受付嬢に声をかけようとすると、エルクが声をかける前に受付嬢の方から声をかけて来た。


「あら、エルクさんじゃないですか。昨日ぶりですね。早速、依頼の受注ですか」


「ああ、でもその前にこいつらの冒険者登録を済ませてしまおうと思ってな。頼めるか」


「はい。わかりました。少々お待ちください」


 受付嬢はそう言うとカウンターの奥へと向かって行った。


 そして、二、三分して受付嬢が昨日と同じ水晶玉を持って戻って来た。


「お待たせしました。では、あなたから冒険者登録を始めましょうか。手をこの水晶玉にかざして下さい」


 そして無事にブロンたち四人のギルドカードを作り終えたエルクたちは、一度カウンターを離れて依頼書が貼られている掲示板のところまで向かった。


「さてと、どの依頼を受けるかな。みんなで受けられる依頼がいいからな」


 エルクたちはみんなで掲示板に張り出されている依頼書を物色していると、受付カウンターから先程俺たちの対応をしてくれた受付嬢がやって来てエルクに話しかけて来た。


「あの、依頼をお探しですか。よろしければ私がみなさんの階級や要望に沿った依頼をご紹介しましょうか」


「え、良いんですか。え~と」


「あ、まだ自己紹介していませんでしたね。私はこの冒険者ギルドマスイ支部で受付嬢をしています。キイラと申します。以後お見知りおき下さい」


「キイラさんですね。先程の申し出、ありがとうございます。是非、お願いします」


「わかりました。では、依頼を紹介しますので受付カウンターの方までお越しください」


 エルクたちはキイラの後に続いて受付カウンターに向かいキイラはカウンターの後ろにある棚から依頼書の束を持って来ると、それをカウンターの上に置いてどの様な依頼を探しているか聞いて来た。


「それで、みなさんはどの様な依頼をお探しなんですか。ウッド級とアイアン級の依頼の中からみなさんの要望にあった依頼をご紹介しますよ」


「そうだな。それじゃあ、討伐依頼と採取依頼を一つずつお願い出来ますか」


「わかりました。少々お待ちください」


 キイラはエルクにそう言うと後ろの棚から持って来た依頼書の束をペラペラとめくり始めた。


 そして、依頼書の束をペラペラとめくり始めてから少ししてキイラは二枚の依頼書をエルクの前に出して来た。


「こちらの依頼などはどうでしょうか。一つは討伐依頼で、マスイの街近隣にあるエスト村の近くにある森に生息しているゴブリンの間引き。十体の討伐です。これはアイアン級の依頼です。そしてもう一つが、そのゴブリンが生息している森に生えている薬草ヒール草の採取依頼です。これもアイアン級の依頼ですね。この二つの依頼でいかがでしょうか」


 エルクは一度後ろにいるみんなを見て全員がうなずいているのを確認するとキイラにその二つの依頼を受けることを告げた。


「わかりました。では、手続きをしてきますので少々お待ちください」


 そう言うとキイラは手続きをするためにカウンターの奥へ行った。


 そして、数分後、キイラが戻って来た。


「お待たせしました。手続きが完了しました。それと、討伐依頼についての注意事項ですが、依頼の期限は三日となっています。その期日を過ぎてしまいますと、依頼失敗となりますので気お付けて下さい。それと、ゴブリンを討伐したら必ず右耳を切り取って持ち帰って来て下さい。討伐証明となりますので。それからエスト村まではマスイから乗合馬車が出ているので良ければ使って下さい。エスト村までは大体馬車で五時間位なので、徒歩だと一日かかりますので。では、気お付けて行ってくださいね」


「はい。わかりました。それじゃあ、行って来ます」


 エルクはキイラにそう言うとみんなを連れてギルドを出て行った。






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