最終話 えッ、嘘だろ!
ある朝の事だった。
いつものように聡が目を覚ます。何気ない日常が始まる予定だったのだが・・・。
「ファ~~~あ! あー良く寝た。今日も一日・・・。??」
眠い目をこすりながら目を開けると、何かが違う。
「ん、?? ?? ん、なんだ?? ここは一体どこなんだ?? あれぇ~~? 誰かの家に泊ったのか? 酒を飲んだ覚えは無いし、こんな狭い部屋・・。一体どこなんだ???」
起きたばかりでまだ状況がつかめていないようだ。聡はキョトンとした顔で辺りを見回していた。
「ん、? それにしても変だなぁ。なんか懐かしい様な見覚えがある様な、それにこの部屋の空気感・・・。 えッ、まさかなぁ
。 そんなことがあるわけないだろ。」
いや、それがあるのだよ聡君!
「え、これってもしかして俺が住んでた安アパート? まさか~
おい、ちょっと待て。この干しっ放しの洗濯物、これ俺が勤めてた工場の作業服じゃねぇか。え~~、嘘だろ!」
嘘ではない。聡よ、嘘ではないのだ。良~~く日付を確認してみるがよい。
「何だよ、どうなってるんだ? パラレルワールドか? そうだスマホ、スマホ。TVも付けよう」
次第に状況をつかみ始めた聡はあれこれ確認を始めた。TVではニュース番組をやっていた。
「令和4年8月15日、終戦記念日を迎えた靖国神社では自民党の国会議員が次々に参拝に訪れています。」
聡はスマホやカレンダーを見て日付を確認したが、それは紛れもなく令和4年8月15日だった。 工場が夏休みに入るまでは過酷な残業続きで最終日の12日は夜勤だった。疲れきっていた上に最後が夜勤だったので体が悲鳴を上げていたのだ。アパートに帰りシャワーを浴びて洗濯物を干してからちょっと一休みのつもりでベッドに入り、そのまま三日間も眠り続けてしまったのだった。
驚いた聡は訳も分からず玄関のドアを開けた。
そこにはいつもと変わらないただの《 日常 》が情け容赦の
「嘘だ~~、嘘だ、嘘だ、嘘だ。そんなのありえね~~。 悪い冗談だと言ってくれ。 嘘だ、マジかよ~~。 俺の逆転、成功人生は夢だったのか? 無縁仏の爺さんは? 宝くじの当たった3000万円は? IT社長は? 貧乏暮らしから抜け出せたんじゃなかったのかよ。投資話はどうなったんだ? 縁結びは、やっと出来た彼女はどこへ行っちゃったんだ?? 全部ただの夢だったのか~~??」
そうなのだ、三日も眠り続けている間に見た長~~い夢だったのだ! だいだい、夢で見たようなそんな都合の良い人生なんてあるわけないだろうが。
聡は頭の中が真っ白になった。いくらご都合主義の人生だったとはいえすべてが夢だったとなれば誰だって頭の中が真っ白になる。 聡は全身の力が抜けベッドに横たわり
「あ~~、悪夢だ! 最低の悪夢だ! もう俺立ち直れねぇ。こんなのありかよ~」
それから二時間を回った頃だ。
「フフフフフ、アハハハハー。 ガハハハハー!」
意味もなく笑いがこみあげてくる。そして聡の眼には大粒の涙が溢れていた。
「そうだよな、そんな旨い話があるわけないよな。お笑い草だ!
結局、俺は地道な貧乏生活をするしかないんだな。 つくづく嫌になるぜ。 しょうがねえ、とりあえずシャワーでも浴びてくるか・・・。」
力の抜けきった身体をやっとの思いで起こして立ち上がり、ふらふらと歩き出した。そして何気なくテーブルの上に目をやると
、そこにはグラス一杯に注がれた麦茶が室温に温められて置かれていた。そしてその陰に何やら怪しげな物が見えた。
「何だこれ、お守りじゃねえか? こんなの買った覚えはねえしここに置いた記憶もねえなぁ~?? なんか今日は変なことばっかりだ。暑さのせいで頭がおかしくなったのかな? 変なお守りだなぁ、表に龍の絵がある。裏は金・・。 ん? どこかで見たような・・・? アッ! そうだこれ、夢で見た、【 金運のお守り 】だ!!」
無縁仏。 無縁仏とは親族や縁者がいなくなった故人やお墓のこと。
調べるとそう書かれている。
「快談 無縁仏」この話はこれで終わりです。人の一生とは一体何なんでしょうか?
さて、
お わ り
快談 無縁仏 高草木 辰也(たかくさき たつや) @crinum
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