春を告げる竜と雪夜の国

KaoLi

第一章 春を忘れた国

第1話

 昼頃になれば少しは治まるであろうと言われていたはずの雪は、いまだに澄み渡った青空から絶え間なく振り続けている。広大な庭園には寒色の花が咲き誇り、冬であることを嫌なほどに強調していた。


 ひとりの少女がその庭園を駆けていた。陶器のような白玉の肌を持つ彼女は寒さのせいで鼻頭や頬を赤く染めている。しかしながら、そんな寒さをも超える息を呑むほど美しい雪に心奪われた少女は楽しげに歌を口ずさみながらここぞとばかりに雪に触れた。しゅわっと小さく音を立て、ひとの手の体温によって静かに溶けていく。儚げなその溶け方がこの国に降る雪の特徴だった。

 普段は自由に外出することも容易にできない分、実に心の向くままに彼女は庭に降る雪を楽しんだ。彼女の肌のように白い吐息が空へと溶けていく。


 ああ、日が暮れる前に戻らなければ。


 もう少しだけこの白銀の世界に浸っていたかったけれど、戻ることを選択した少女は大人しくきびすを返した。瞬間、視界の端にこの世界に相応しくない色が飛び込んだ。

 あか色に染まった雪の絨毯。その場にそぐわない紅色に、少女は一瞬にして心を奪われた。おそるおそる近づくと、そこには珍しい色の花弁はなびらまとった青年が雪に埋もれ倒れていた。


「あら」


 さて、どうしたものかと思案していると、ふと青年のまぶたが静かに開いた。淡い薄紅色の瞳が少女の姿を捉える。その瞳に映った少女は優しく微笑んだ。

 青年は少女のこの微笑みを、

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