星
人は死んだら星になって、空の上から大切な人を見守るんだって。
だからさ、私も死んだら星になるのかなぁ?
もう、なんで、君が泣くの。これじゃあまるで私が泣かせたみたいじゃない。
ね、笑って?私、君には笑っていてほしいよ。
……今日の面会はもう終わり。うん、そうだね、また明日。
朝、ふと目が覚める。窓の外を見る。変わらない景色。深く深く息をする。腕を少し動かしてみる。注射針の刺さっている、確かな感覚。ようやく心に浮かぶ実感。
…ああ、今日もまた、生きていられる。君に、会える。
君はいつも決まった時間にやってくる。
そしてそっと椅子に座る。
その時私は少しだけ、救われたような気持ちになる。
あれ、今日は珍しい服着てるね。…そうなんだ。
ううん、似合ってるよ。ほんとだって。
……昨日の、話?なんだっけ。ああ、死んだら星になるって話?冗談なんかじゃないよ。そうだったらいいなって。
…そんなこと言われても、長くせずに死ぬんだし。
……そうだね、ごめん。これからは、言わないようにする。
もうすぐ面会時間も終わりだね。うん、じゃあね。
君に当たり前にある未来を、私も同じように望めたら。そう、思っただけなのに。そうして君をまた傷つけたんだ。
規則的だった音が突如として音を刻むのを止めた。狭い部屋に電子音が鳴り響く。私の日々は、今日で終わり。最期に見た星空は、いつもと同じように美しかった。
星になんてなれるわけもないけれど。ただ一つ、願うのならば、
『君の星になりたかった』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます