運命

 私には、他人の未来が見える。私の見る未来は必ず現実になる。だからこれは、単なる未来じゃない。運命と呼ぶべきものだ。未来は変えられるかもしれないけれど運命は変えられない。何度試したって結果は同じなのだからもう何も期待はしない。それに自分に関係する未来は見えないから変なところで不便だ。他人の嫌な未来は見えるのに、自分に降りかかる不幸さえわからないのだから。

 運命は、見ようとしなければ見えない。つまりはそう、見ようとしなければいいだけの話なのだ。私だって、他人の人生を覗き見る趣味はないし、できることならしたくはない。


 だからあの日、君の未来を見てしまったこと。あれは不可抗力であって決して悪気はなかったんだ。私だってこんな運命、知らない方が良かった。


 私は君に恋をしていると自覚した。気づいた時にはもう手遅れだった。今更嫌いになるなんて無理な話だった。目が合うだけでも心が壊れてしまいそうで、会えない日は君のことを考える。きっと、きっと「普通」の恋をしていた。

 だからかもしれない。願ってしまったんだ。君の運命の相手が私であればいいと。見たくないという気持ちは嘘じゃなかった。でも見えてしまった。見たくない気持ちに見たいという気持ちが勝ってしまった。

 あなたの未来に私はいない。

 君の運命の人は私じゃない。

 ショックだったし、悲しかった。こうやって涙を流せるくらいには、君のことが好きだった。けれど、運命に抗うつもりはない。今まで何度やっても無理だったのだから、今回はできるなんてあるわけがないだろう。諦めるには十分すぎる。自分の未来が見えないことを心から残念に思った。いつになったら君のことを忘れられるのだろうか。きっとそう簡単にはいかない。それでもさ、


 君の人生を、運命を、邪魔する気はないよ。

 だから、まだ好きでいることくらいは許してね。



『君のになりたかった』

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