時間

影神

溶けたアイス



「はああぁあ、、


ダリいなぁああ。」


夏の空を車内の窓から見上げる。



子供達は夏休み。


水遊びをしている子供達が、


元気に。楽しそうに、はしゃいでいる。



世間はお盆で、帰省ラッシュがどうだのと。


ラジオから流れる交通情報は、


毎年の様に、渋滞を知らせている。



「はぁあ、、。」



俺は車のエアコンの風量を最大にして。


公園の駐車場で、昼休憩をしていた。



「はぁあ。。」



癖の様につくため息が。


呼吸をするペースで、口からもれる。



この場所に来てから、ずっと。


目の前のベンチに座っている男の子が、 


じっと。何処にも行かずに居る。


「日陰に居りゃあいんによぉ、、



あちーんべに。。」


誰かを待っているのか。



毎日の様に猛暑日を口にするテレビは、


静寂と憂鬱を紛らわす様にして、


ただただ毎朝勝手に流れていた。



ミーン、ミーン、ミーーン。



蝉は一生懸命生きている。


俺は。一生懸命泣いた事なんてねえな、、



"一生懸命"



大人になると、どれだけ楽を出来るか。


効率が良いかを優先して動く。



時間も。羞恥心も。


何もかも気にせず、、



一生懸命になって没頭出来る時間。



そうゆうモノは、若い時にしか出来ない、


"特権"


なのだろうか、、



座席を倒して目の前に広がる天井は。


灰色に濁っていて、汚れていた。



「はぁああはあ、、



ダル。」


携帯のディスプレイで時間を確認して、


煙草を吸おうとして、座席を上げると。


男の子はまだ座って居た。


「おいおぃ、、



あんなんじゃ熱中症になるぞ??」


煙草のフタを開けようとしたら、


残りの本数が少ない事に気付く。


「うわぁ。。


マジでダルい。。」



今車を動かせば。


きっとこの場所は埋まってしまうだろう。



ここは都合が良い。


周りには、外仕事の大人達が、


脚を上げて休憩していた。



「うわぁ、、」


目の前には、コンビニのロゴが。


木々の隙間から見える。


「歩くかぁああ、、」



ガチャッ。バンッ、



外の扉は、熱を持ち。


ずっとは触っていられないくらいになっていた。



コンビニへ行く時に、横目で男の子を見る。



顔は赤くなり、水筒を持っては居るが、


ここへ来てからは口にしてなかった。


中見が無いのか。


水道で水を入れて飲む事もしないのか。



「いらっ、しゃいやせ~」


コンビニと外との温度差を感じながら。


気付いた手には、余計なスポーツドリンクと。


かき氷のアイスを買っていた。


店員「ありがとう、ございやした~」



俺は男の子の所へと行く。


「そこに居ると、熱中症になるぞ??」


お節介と呼ばれる注意をする前に。


男の子は、ベンチの上で横になっていた。


「おぃい!!



大丈夫かよ!!?」


周りを見ると、車の中から、


気になっている男性が見ていた。


「おい??


大事か??」



身体を触ると、火傷しているかの様に、


真っ赤っかになっていた。


「救急車!!」


携帯を探すが、車の中にある事に気付き、


急いで車に戻る。



少し歩いただけで、身体からは汗が滲み出ていた。


プルルルル、、


119「どうなさいましたか??」


「男の子が熱中症みたいで。


公園のベンチで横になっています。」


119「熱は計りましたか??」


「は??」


意味が分からなかった。



119「生憎ですが、近くの救急車が全て出払っていて。


申し訳ありませんが、近くの病院に連絡して貰えますか??」


「はい??」


話している意味が分からなかったが、電話はそこで終わった。



続く猛暑に。度重なる様にして次々と新しくなる流行り病。


医療現場が逼迫しているのは分かっていた。



俺がネットで近くの病院を検索していると。


さっき目が合った男性が事態を察して出て来た。


男性「大丈夫か??」


「救急車が来れないみたいで。


病院にこっちから連絡しないといけないみたいです。」


男性「俺は何したらいい?」


「えっと。。


じゃあ、スポーツドリンク買ってあるんで、


それを飲ませて貰っても良いですか?


飲めない様ならアイスあるんで、


首か脇を冷やして貰って、、



もしもし??」


男性「大丈夫か??


名前は??」



顔面が悪そうだったが、不器用なりにも。


彼なりに、介抱してくれた。


「はい。



男の子が。。」


女性「まずは、動脈を冷やして貰って。」


「今やってます。」


女性「どうしてそうなったんですか??


一体何を考えてるんですか??」


中年の偉そうな看護師だか何かが。


上から偉そうにモノを言ってくる。



俺はイライラしたが。


何とか男の子の身体の状態の説明をした。



電話が切れるとタイミング悪く会社からも連絡が来た。


会社「何時まで出歩ってるんだ!!


今何時だと思っている!?」


「すいません男の子が倒れてまして、、」


会社「そんなの知らん!!」


俺はその言葉で、遂に我慢してたモノが切れてしまった。



「ふざけんじゃねえよ!!!


どいつもこいつも舐めやがってよ!!



子供が体調悪くて倒れてんだよ!!!



今何時だと??


何度だと??


知ったこっちゃねえよ糞!!」 


会社「じゃあ。


"クビ"


って事で良いよね?」


「上等だボケ!!!」



電話を切った時には既に救急車が近くに来ていた。


彼に付き添って貰い、俺は辞表を叩き付けに行った。



人間。死ぬまでは時間が有限にあると思っていたりする。


でも死に際では、その僅かな時間が。命を左右する。



男の子「おじさん。。



ありがとう。」


病院に着くと、少し元気になった男の子が居た。



全てを知っていた彼は、俺を慰める様に呑みに誘ってくれた。



同じ様な時間でも。


その人間が。


どう生きて、どう成長するかは、


結局自分次第の所もあったりする。



年輩の男性「変な会社もあったものだね、、」


「ええ、、」


男の子の件はニュースになり。


母親は男と外出していたらしい。



彼とはたまに会う呑み仲間になり。


男の子とは友達になった。



こうして、俺は。


全てがまるで何もなかった日常へと戻り。



また、いつもの日を。


新しい勤め先の面接を終えて一服するのであった。



「ダリ、」
















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時間 影神 @kagegami

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