純白ロードを言霊で抜けて
DITinoue(上楽竜文)
第1話・どこまでもドア
俺はこの日曜日に、渋谷スクランブル交差点を歩いている。
友達とゲーセンではしゃいだ帰りだ。
信号が青になり、人波が動き出す。
自分も向こう側へ歩く。すると、何かが交差点の真ん中にたたずんでいた。
ドアだ。
「どこまでもドア……?」
真っ白のドアには赤ペンでそう書かれている。
「なんか面白そうじゃねぇか。どこでもドアじゃなかったら何だ?」
俺はドアを開けた。向こう側は真っ白な道が続いている。
なんだ、奇妙な道だ。俺はドアの向こう側へ足を踏み入れた。
その瞬間、とてつもなく強い風が吹きつけてきた。一瞬なにか見えた気がするのだが、一瞬で俺は気絶した。
誰もその存在に気づかないドアが閉まった。
俺は目を覚ました。いつの間にか気絶していたらしい。
確か、交差点でドアを見つけて入って白い空間で。
と、俺は気づいた。
――ドアがない。
その真っ白な道が続いている不思議な空間。不気味だと思って俺は引き返そうとした。なのに、ドアがない。
今、この瞬間に純白の道は出口があるかも分からない一本道と化した。
と、どこまでもドアが現れた。
「っしゃ! 出られる! て……?」
俺がいた。俺の目の前に俺が立っている。
俺はここにいる。なのに、目の前には俺。つまり、もう一人の俺、ということ。
「……」
もう一人の俺は黙ってうつむいている。だが、ビックリしてしゃがみこんでいる俺の目線からは分かった。
彼の風貌。真っ赤な目を持ち、口には二本の犬歯が生えている。
「……お前を、食う。殺してヤル……!」
時を待たずして、もう一人の俺は走り出した。
「何だ……ヤバい!」
冷や汗を滝のように流しながら、俺も白の一本道に飛び込んでいった。
ダダダダダ
二人の男が純白ロードを駆けている。
なんか良く分からんが、俺を食うと言ってくるわけだ。逃げるしかない。
幸い、能力は俺と同じらしく、走る速さも全く同じ。それなら、前の俺が有利だ。
一心不乱に駆けるが、そのせいで少しバテてくる。一方の相手は体力調整しているようで、疲れは見えない。
すると、カサカサと、ズボンの中から音がしてきた。紙のようだ。
「何だ?!」
走りながらポケットに手を突っ込み、紙を出す。
紙にはこうある。
***
『ルール説明』
このゲームは、【どこまでもドア】に気づいた霊感のある特別な人間の身が参加できるものです。
ルールは簡単、この真っ白な道、通称・純白ロードであなたは一心不乱に走りながら、物語を口述で書き続けます。その文章から発動する“言霊”を駆使してもう一人の自分、通称カリブンから逃げるのです。
あなたは何時間も物語を書き続け、完結した時にカリブンが消滅。あなたは現実世界へ戻ることができるのです。
ただ、もしカリブンに追いつかれてしまった場合、あなたの命の保証はできません。
疑問があれば裏面をご覧ください。それでは、言霊を駆使した素敵な物語を期待しております。
***
何、物語を書かなければならないだと。妄想は良くするタイプだから、それは行けるだろう。ただ、走りながら物語を考え、口述するのはかなりきついかな。しかも……。
そんなことを考えているともう一人の俺、いや、カリブンが追いついてきた。慌ててギアを上げ、距離を離す。
で、言霊って言うのは見ればわかるのだろうが、信用できない。でも、それをやらないと死ぬ。
「あぁ、やるしかねぇ!!!!」
そう叫ぶと、真っ白な壁の一部分がきらりと光った。
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