第9話

 文化祭当日、午前のシフトを終えたうちは急いで校門まで行った。


「ごめん!お待たせ!」

「おっ唯!久しぶり」

「久しぶり」

「中学の頃からめちゃ身長伸びてる!それにショートヘアすごい似合ってる。イケメン」

「そんな事ないよ。玲乃も垢抜けたね、かわいい」

「急に来ちゃってごめんね」

「うんん、全然大丈夫だよ。会えて嬉しい」


 うちの初恋の人は全然変わっていなかった。ロングヘアに人形みたいな顔立ち。一重とは思えないほどぱっちりした目。好きだった頃の玲乃と全く変わっていなかった。



「今日はいつまで居られる?」

「文化祭の最後に上がる花火までに戻らなきゃいけないからそれまでなら一緒にいられるよ」

「そっか、花火一緒に見たかったな」

「ごめんね、先約がいるの」

「まぁいいや!昼間の間に楽しむ!」


 先に玲乃が行きたいと言っていた脱出ゲームをしに行った。そのあと屋台で焼きそばやたこ焼きを食べて、美術部や写真部の展示を見に行った。楽しい時間はあっという間に過ぎていった。


「ねぇ最後に音楽部のライブ行きたい!」

「おー!いいね!昨日観にいけなかったし」


 時間的に音楽部のライブは文化祭の最終公演。予想以上に人が多かった。


「やっぱ人多いね」

「はぐれたら困るから手繋ご」

「う、うん」

「何、緊張してるの?」

「そ、そんなことない!」


うちは玲乃と手を繋いだまま体育館に入った。


「もうそろそろ始まるみたいだね」

「うん!ほんと楽しみ!」


 玲乃は小さな子供みたいに目をキラキラ輝かせている。一気に体育館の照明が消え、ステージに注目が集まった。


ライブは大盛り上がりで、玲乃も楽しそうだった。


「ほんと唯の学校の音楽部のライブはすごいね」

「だよね、ほんとにかっこいい」

「また来年も観に来たいな」

「うん、また来年もおいで」


ライブが終わり、うちは玲乃を校門まで送っていった。


「じゃあまた来年の文化祭?で会おうね」

「うん。それと本当は話したいことがあって唯に会いに来たの」

「ここじゃ人多いしあっちで話そっか」


 そう言って校門近くのちょっとした広場の様なところに移動した。


「話たいことってなに?」

「私本当はね、唯のことが好きだった。でも女子を好きになるなんて変だと思って、誰にも言えなくて、でも高校別れてからもずっと唯に気持ち伝えたくて…」


 玲乃が私の事好きだなんて知らなかった。玲乃の恋愛対象はずっと男子だと思ってた。


「ずっと唯が好きだったこと隠してた。でも今日会って、昔の好きだった時の想いが蘇って、ずっと一緒に居られたらいいのにって…」


玲乃の目がどんどん潤んでいく。


「だから私は唯の事が好き」


「私も好きだった。大好きだった。」


私は玲乃を抱きしめた。


「直接好きだなんて言えなくて、いつも玲乃が他の子と仲良くする度に嫉妬してた。あの時素直に好きって言えばよかった。でもね今好きな人がいるの。だから付き合えない。でも好きって伝えてくれてありがとう」


 中学の間に玲乃に告白しておけば付き合えていた。幸せだったはず。でも今は音儚が好きだから。


「振られちゃったけどまだ友達として好きでいてくれる?」

「もちろん。また遊びに行こうね」

「うん。唯に気持ち伝えられて良かった」

「うちと玲乃の気持ち聞けてよかった」


すると後ろでドーンと花火の音がした。


「花火始まっちゃったよ、行かなくていいの?」

「ほんとだ!でも校門まで送るよ」


 うちは玲乃を校門まで送り、走って屋上に向かった。幸い校門近くの校舎の屋上集合だったからダッシュで階段を駆け上がり、屋上に向かった。


「音儚!遅れてごめん!」

「ねぇ今までのって全部思わせぶりだったの?私にキスしてくれたのも、好きって言ったのも全部思わせぶりだったんだね」

「どういうこと?」

「私はずっと好きでアピールしてたのに!」

「ちょっと待ってよ」

「他に好きな人いるんでしょ?言い訳なんて聞きたくないよ!」


 そう言って音儚は屋上から出ていってしまった。

音儚は勘違いをしている。多分さっきのを見てたのだろう。


 それ以来、音儚はほとんど口を聞いてくれなくなってしまった。

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