第8話

 夏休みもあっという間に過ぎ、学校では文化祭の準備に追われていた。うちらのクラスでは"夏休みはまだまだ続く!青春夏祭りin 風桜高校"簡単に言うと教室で夏祭りを再現する。当日の運営スタッフは浴衣を着ることになった。


「唯は何色の浴衣着るの?」

「うちは黒の浴衣かな。音儚は?」

「音儚は水色の浴衣!お母さんのお下がりだけど」

「音儚の浴衣姿楽しみだな」


 うちらの部屋は2人ずつシフトをずらして、千本引きのブースを担当することになった。


 キャンプが終わってからうちと音儚は今までより仲良くなって、明日香と夢乃もより仲良くなった。その流れでうちと音儚、明日香と夢乃で運営することになった。


 千本引きは割と単純作業で、紐に景品が書かれた紙をくっつけるだけ。うちと音儚で机に向かい合わせに座って準備を進めた。


「新幹線の時に言ってた好きな人って誰?」

「えっうーん。教えられない。でも片想いだよ」

「うちも好きな人と片想い。好きな人には好きな人がいるんだって」

「はぁ好きな人の好きな人になりたい」


 好きな人はうちの目の前にいるのに。

あぁあの時なんで友達として好きって言っちゃったんだろう。あの時正直に言うべきだったのに。


"最終下校時間になりました。校内にいる生徒は宿泊棟に移動してください"


「あ、もう最終下校時間か」

「部屋もどって続きやろう」

「そうだね」


荷物を片付けて、うちらは部屋に戻った。


「はぁ最終下校時間までには終わると思ったのに」

「まぁ仕方ない!うちら単純作業だけど量は異常だから」

「でもいいや!唯と一緒に作業できるから」


なにそれ可愛い。ほんとに愛おしいよ。


結局完成したのは消灯時間直前だった。


「やっと終わった!」

「これで明日の直前準備に間に合うね」

「明日の直前準備も前夜祭も楽しみだな」

「ねぇ前夜祭も後夜祭も当日も一緒に回らない?」

「うん、もちろん」


 明日香と夢乃も準備が終わったみたいで、今日は明日に備えて早めに就寝した。


 翌日教室の装飾をして当日のシュミレーションをした。


 他のブースはヨーヨー釣りやスーパーボールすくい、射的などもやっていた。違う教室ではお化け屋敷や体力テスト、映画を上映する学年もあった。後夜祭では音楽部がリハーサルとして模擬ライブを行った。


 そして文化祭初日、朝からうちらのクラスは大人気で休憩時間がほとんどなかった。午後になって明日香達と交代し、私服に着替えて音儚とほかの教室を回った。


「さっき言いそびれちゃったんだけど、音儚の浴衣姿すごい可愛かったよ」

「本当に?ありがとう。唯も似合ってた」

「ありがとう。音儚どこか行きたい所ある?」

「ここの男装カフェ行きたい!」

「いいね!お腹すいたし」


 同じ学年の教室でやってる男装カフェも多くの客で賑わっていた。幸い座席数も広さも1番の視聴覚室を使っていたからすぐに入ることが出来た。


「ご注文はお決まりでしょうか?」

「うちはチュロスとノンアルコールカクテルで」

「音儚はチョコレートパフェとノンアルコールカクテルお願いします」

「かしこまりました」


 男装をした店員はキッチンの方に行き歩いていった。


「店員さん達イケメンだね」

「唯の方がイケメンだよ」

「ふふっありがとう」

「明日はシフトの時間短くして良かった。おかげで唯と長く回れるよ」

「あ、その事なんだけど明日の午後どうしても会いたい人が居て、一緒に回ることになったの。だからごめん」

「そっか、残念」

「でも最後の花火までには音儚に会いに行くから」

「うん、わかった。屋上で待ってるね」

「ほんとにごめんね」


しばらくしてさっきの店員さんが食事を運んできてくれた。


「チュロス、チョコレートパフェ、ノンアルコールカクテルでございます。ごゆっくりお召し上がりください。」


 料理はプロが作ったのかと勘違いするぐらい美味しかった。


「チュロス美味しそう!1口ほしい!」

「いいよ、あーん」

「んー!美味しい!」


 男装カフェを出た後はお化け屋敷に行ったり、映画を見たり。2日間で回る分を1日に凝縮したから色んな所を走り回ったけど、無事に回りきることが出来た。


「あーあ、明日も唯と回りたかったな」

「ほんとにごめんね」

「誰と会うの?」

「それは秘密。でも大事な人」

「そうなんだ…」


明日会う人。その子はうちの初恋の子。

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