第6話

 そしてキャンプ当日。朝8時に4人は駅前に集合した。


「おはよう!」

「おー!おはよう」


 音儚と夢乃は既に到着していた。


「あとは明日香だけ?」

「そうだね」


少し待っていると改札口から明日香が走って来た。


「集合時間2分前!ギリギリセーフ」

「じゃあ行こうか」


 新幹線乗り場に向かい、チケットに書いてある席に座った。家族の話とか恋愛の話で盛り上がった。


「みんなは好きな人いないのー?」

「私は居ないかな」

「私も」


明日香も夢乃も居ないらしい。


「音儚と唯はいないの?」

「うーん、どうだろ。気になってる人なら」

「私はいるよ」

「えっ!唯好きな人いるの?誰?」

「それは秘密」


 音儚のことが好きだなんて口が裂けても言えないよ。


「音儚の気になってる人って誰?どんな人?」

「誰かは言えないけど、優しくて、笑顔が可愛くて、いつも守ってくれる人」

「ってことは身近な人?でもうちら女子校だよ?」

「まさか、先生?」

「違う違う。でも身近っちゃ身近」

「そっか」


 音儚は好きな人いるんだ。あぁやっぱ片想いなのか。


「あ、電話だ。ちょっと出るね」


 夢乃が立ち上がって、車両の奥の方で電話をしている間、隣に座っていた音儚がウトウトし始めた。


「音儚眠いなら寝ていいからね」


 私がそう言うと音儚は気を失ったように眠ってしまった。私の肩に頭を乗せて。


「そういえば音儚とは仲直り出来たんだね」

「仲直り?」

「しばらく2人距離あったよ」


 私が音儚に壁ドンして好きって言ったのを思い出した。


「あ、うん。でももう解決」

「それは良かった」

「ねぇちょっと写真撮って」

「おっけー」

「ありがと」


 私は明日香にスマホを渡し、写真を撮ってもらった。


 隣で寝ている音儚がとてつもなく可愛い。

音儚は身長も低くて、細くて、名前の通り儚くて、ずっと愛でていたい存在。独り占めできたらどれだけ幸せか。


「戻りました〜」

「おーおかえり」

「キャンプ場からだったんだけど急遽4人部屋使えなくなったみたいで2人ずつになっちゃうんだけど大丈夫?」

「うちは大丈夫だよ」

「私も大丈夫」

「着くちょっと前に音儚起こして相手決めよっか」

「そうだね」


 色々な話をしていると、新幹線は目的地に到着した。


「音儚、音儚起きて」

「ん、唯」

「もう着いたよ」


全員忘れ物がないか確認して新幹線を降りた。


「それじゃ誰と一緒の部屋にするか決めるか」

「明日香なんの事?4人部屋じゃないの?」

「さっき電話で2人部屋しか使えなくなったんだって」

「なるほど」

「じゃあ行くよ、グーとパーで別れましょ!」


うちと音儚はグー、明日香と夢乃はパー。


「じゃあ音儚と唯、私と夢乃で決定ね!」

「はやくコテージ行きたいな」


 うちらはバスを乗り継いでキャンプ場に向かった。チェックインを済ませて、それぞれの部屋に荷物を置きに行った。


「わぁ部屋広ーい」

「ダブルベッドだ!」

「お風呂もめちゃめちゃ綺麗!」


軽く荷解きをして、明日香達の部屋に向かった。


「こっちも荷解き終わった?」

「うん!無事終了!」

「早くバーベキューしようよ!」

「夢乃はしゃぎすぎ!バーベキューはまだ」

「川遊びしない?たしかバーベキュー場の隣に浅い川があったよ」


全員賛成で川遊びをすることになった。


「キャー!冷たい!」

「ちょっと夢乃水かけないでよ〜」

「だって楽しいじゃん!」

「そうだけどさ〜」

「ねぇあっち側行ってみよ!」


 夢乃はバシャバシャ音を立ててどんどん進んでしまった。その後ろを明日香が追う。


「ちょっと待って〜」


うちと音儚も後を追う。


「ここ滑りやすいから気をつけてー」

「音儚大丈夫?」

「うん!」


うちは音儚の手を取って前に進んだ。


 1時間ぐらい川遊びをして、バーベキュー場に戻った。


 うちと音儚は食材の準備、明日香と夢乃は調理担当。


「夢乃手際いいね〜」

「いやぁプロですから」


 先に火起こしや食器の準備をしている隣で、うちは音儚と野菜を切っていた。


「音儚大丈夫?包丁危なっかしいよ」

「大丈夫!多分…」

「うちが見てるし大丈夫だよ〜」

「確かに!」


 でも本当に危なっかしい。指を切っちゃいそう。


「音儚、包丁使う時はこうするんだよ」


 うちは後ろからハグする感じで音儚の両手を取り野菜を切った。


 自分からやったけど結構ドキドキするもんなんだな。


 時間はかかったけど食材の準備が終わって無事暗くなる前にご飯を作り終えた。


「じゃあ食べよう!」

「いただきまーす!」


焚き火の周りを4人で囲ってご飯を食べた。


「夜は上着着てても肌寒いね」

「大丈夫?うちの使って」


うちは自分の上着を音儚の肩にかけた。


「そういえばさっき野菜切ってる時に2人カップルみたいだったよ」

「「カップル?!」」


"カップル"か…嬉しいな。


「もう唯はいつも行動がイケメンなんだよ」

「えっそう?」

「自覚なしだったのね」

「あれはほんとに惚れるな」


 ほとんど毎日一緒にいるのに話す内容は全く尽きなかった。食べ終わったあとは花火をして、それぞれのコテージに戻った。


「どっちからお風呂入る?」

「音儚先に入っていいよ」

「ありがとう。じゃあ入ってくるね」


 音儚がお風呂に入っている間、うちはずっと今日撮った写真を見ていた。もちろん4人の写真は沢山あるけど、やっぱ音儚ばっかり。


 音儚の気になる人って誰なんだろう。ボーとしていたら音儚がお風呂からあがってきた。

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