第4話
唯はなんの夢見てたんだろう?
始業式の日に唯に助けられて、貧血で倒れた時も助けてもらってずっと唯に助けられてばっかり。
「あれ?音儚なんでいるの?今日部活あったっけ?」
「ううん!でもちょっと残って自習してたから」
「そっか!一緒に寮戻ろ」
「うん!!」
なんでか分からないけど唯と出会ってからずっと唯を意識して、今日も本当は一緒に寮に帰りたくて待ち伏せしてた。
唯は私よりも身長が7cmも高い。陸上をやってるからか筋肉がついてて女子に言うのはなんだけど頼れる体つきをしている。おまけにショートヘアだから遠くから見たらほぼ男子に見える。
それに比べて私は昔から病弱で小学校の頃は入退院を繰り返してまともに学校に通えなかった。
唯は私を守ってくれる存在。
でもどこか唯に特別な感情を抱いてる。
他の子と楽しそうにしてる唯を見ると胸が張り裂けそうになるし、あの笑顔を向けられるとドキドキする。
寮の部屋が2人部屋だったら良かったのにな…
「唯の練習してる姿ちょっとだけ見てたけどすごいかっこよかった」
「ほんと?嬉しいな」
「そういえば体育祭もう来週か…」
「リレー大丈夫かな」
「大丈夫だよ!唯なら絶対大丈夫!」
唯は足が速い。練習を見ていて分かったけど、多分唯は部活の中で一番速い。走ってる姿はものすごくかっこいい。女子でも惚れるぐらいかっこいい。
「音儚のこと応援してるね」
「唯のことも応援してる!」
「障害物走しか出ないけど」
「簡単なお題だといいね」
「お互い頑張ろ!」
「うん!」
翌週、ついに体育祭当日になった。
"障害物競走に出場する選手はスタートライン側に集合してください"というアナウンスを聞き、私ははスタートラインに向かった。
「よーい、スタート!」
私の番が回ってきて、走ってお題を確認しに行く。
"大切な人"
大切な人。沢山いるけれどやっぱり…
「唯!」
「え、うち?」
「速く!」
「わ、やば抜かされる!」
「ちょ失礼!」
唯は私をひょいと持ち上げて全力で走った。
「2組の加瀬さん1位!お題もクリアです!」
走ったの私じゃないけどなぁ
「音儚やったね!1位だよ!」
「唯の足が速すぎるだけ!」
「ねぇお題ってなんだったの?」
「大切な人……」
唯は顔を真っ赤にして言った。
「嬉しいな、音儚」
午後、体育祭の花形競技、選抜リレーが始まった。
花形競技と言うだけあって応援がすごい。唯は今回アンカーを走る。
「唯、頑張って!」
「うん、絶対1位で帰ってくる」
みんな凄い勢いで走り出す。ついに唯の番が回ってきた。
「唯!頑張れ!行けー!」
前半のカーブで唯は一気に一位に躍り出た。しかし後ろの選手が唯に足を引っ掛けて転倒してしまった。だが、同じチームの人の声援が聞こえたのか、唯はすぐに立ち上がり、転んだのにも関わらず全力で追い上げ、唯は1位でゴールした。
「唯、大丈夫?歩ける?保健室行こう」
「歩けるよ、大丈夫」
私は唯を支えながら保健室に向かった。
「あの、すみません。2年2組の七海なんですけど転んでしまって」
「あー今忙しくて適当に座ってもらえる?」
入口付近にあった椅子に唯を座らせた。
体育祭は怪我する人が沢山いるため先生も大変そう。
「あの、私手伝いましょうか?擦り傷程度なので消毒ぐらいなら」
「あら、そう?できる?」
「母が看護師なので何度も見たことあります」
「わかった。よろしくね。何かあったら声掛けて」
「ありがとうございます」
私は棚にあった消毒液とガーゼ、綿棒を取り、唯の座っている椅子の前に屈んだ。
「音儚のお母さん看護師なんだね」
「うん。将来は音儚も看護師になりたいんだ」
「将来か…うちはまだ決まってないな」
私はテキパキと処置をした。
「はいっ!OK!」
「ありがとう、音儚」
保健室から出ると唯は私の手を引いてどこかに連れていった。
「もう閉会式始まってるよ?それに閉会式はこっち側じゃ…」
言いかけたところで唯が私の腕を引っ張り壁ドンした。
「唯…?」
唯はじっくり私を見つめて言った。
「好き……」
そう呟くと唯はどこかへ行ってしまった。
え、今好きって言った?
それはどんな好き?
同じ好き?それとも違う好き?
夜になって部屋に戻ると唯は黙々と練習ノートを書いていた。
「唯…さっきのって」
「ごめん。なんでもないよ」
そう言って部屋を出ていってしまった。
それからしばらく唯と距離ができてしまった。
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