第2話

 教室に向かうと部活の中でも特に仲のいい美玖がいた。


「おっ!今年も唯と近くの席だ!」

「美玖の苗字"成宮"だからいっつも前後だよね〜」

「確かに!中学からずっと一緒!」

「うんうん」

「てかさっき唯と一緒に入ってきた子知り合い?」

「うんん。さっき会った」

「仲良くなるの相変わらず早いね〜」

「そんなことないよ〜」


 ドアを開ける音がして、騒がしい教室が一瞬で静まり返った。


「はい!このクラスを担当する相原みはるです。今年からこの学校に勤務することになったのでまだ分からないことたくさんあるけれど、1年間よろしくお願いします。それじゃあまず……」


 先生は学校生活についてや寮についての説明をした。


「そして、最後にお待ちかね!寮の部屋割りです。これから部屋割りを配るので、部屋を確認したら2年の寮の部屋に向かい、既に送った荷物の荷解きをしてください。今日はこれで解散なので、昼食は各自食堂でとってください」


 寮の部屋割を見ながららクラスメイトは「誰と一緒だぁ」とか「誰と離れちゃった」とかそんな話をしている。


「ねぇ唯〜今年も部屋違うよ」

「ほんとだ。残念」

「唯誰と同じ?」


 自分の部屋割りを見ると確かにあった。


"加瀬音儚"


 部屋に向かうと他の3人は既に部屋で荷解きをしていた。


「あっ!初めまして!七海唯です。よろしく!」

「私は三原明日香!よろしく!」

「私は雨宮夢乃!」

「加瀬音儚です」

「みんなよろしくね!荷解き終わらせてご飯食べに行こう!」


 うちらは超特急で荷解きを終わらせ、食堂に向かった。


「やっぱこの学食美味しいよね〜」

「私うどん派」

「え〜私カレー派」

「明日香ほんと昔からうどん好きだね」

「昔から?」

「明日香と音儚は中学から一緒だから」

「あーなるほど」


 うちらは近くの空いている席に座り、学食を食べた。


 この学校の学食はものすごく美味しい。音儚と明日香は去年も同じクラスだったみたいで、2人はものすごく仲が良さそうだった。夢乃は私と同じように2年から同じクラスになった。


 新学年に上がってからあっという間に2ヶ月が経ち、体育祭の準備が着々と始まった。この学校の花形競技といえば選抜リレー。選抜リレーに出場するのは大体陸上部だ。


「選抜メンバーは女子は七海さんと成宮さん、男子は松平くんと山本くんで決定です。騎馬戦の……」


 学級委員長と副委員長がどんどんメンバーを決めていく。このクラスの学級委員長は受験で首席合格というのもあって、なんでも効率よく進めてくれる。


「それでは全ての競技のメンバーが決定したので、選抜リレーの人達は部活が終了したあと練習があります。日時はおって連絡しますが、なるべく参加してくださいとのことです。よろしくお願いします」


 部活で走った後にリレーの練習は鬼畜だ。選抜リレーは全校生徒が1番力を入れる競技であり、特に3年生の先輩たちが1番大事にしている競技。練習があるのも仕方がない。


「ねぇ部活終わりだって、めんどくさい」

「私去年も出た時は練習全部昼休み中だったのに」

「あのコーチにしごかれた後に練習はきついな」


 翌日の夜、選抜リレーの練習日程が出た。練習は毎週水曜日と金曜日の午後。


「水曜と金曜かぁメニューきつい日じゃん」

「あ!私この日跳躍練習だからまだマシ!」


 そっか美玖は短距離と跳躍掛け持ちしてるからこの日はメニュー軽いのか…


「おーい!美玖ー!課題やるから早くミーティングルーム来て!」

「はーい!」

「あの例の課題?」

「うん。それじゃまた明日」


 美玖と別れた後うちは部屋に戻った。


「あれ?明日香と夢乃は?」

「他の部屋行ったよ」

「音儚は行かないの?」

「うん」

「そういえば選抜リレー毎週水曜と金曜なんだけどさ〜」


 私は練習日誌を書く準備をしつつ、音儚に話しかけた。


「水曜と金曜日いっつもメニュー大変だからめんどくさいなぁ」

「唯…」

「どうし……」


 言いかけた瞬間、音儚はうちの方に倒れ込んできた。元々色白な音儚の顔はもっと白くなっていて、軽く息切れして苦しそうだ。


「唯…音儚貧血持ちだから…」

「とりあえず横になろう」


 1番近かったベットがうちのベットだったから、とりあえず寝かせた。


 食堂のキッチンで暖かいうどんを作って横の机に置いた。うちは音儚が目を覚ますまで練習ノートを書いて待っていた。


「唯…?」

「あ、体調大丈夫?」

「大丈夫」

「うどん作ったんだけど食べれる?」

「うん」

「はい、あーん」

「あ、あー」


 口を開けてうどんを待つ音儚の姿はとてつもなく可愛い。


 消灯時間が近づくと、明日香と夢乃が部屋に戻り、音儚を移動させて、うちらは布団に入った。自分のベットはいつもと違う匂いがした。多分音儚の匂いだ。音儚は女子らしい匂いがする。


 そのことは気にせず、うちも眠りについた。

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