第184話 招かれざる客
「会わせたい人? 一体誰だ? それは」
ブリジットは
今日、初めて会ったばかりのクローディアから、会わせたい人がいると言われてもまったく見当がつかなかった。
彼女はクローディアの表情を探るように見つめる。
クローディアは何やら堅く
(何だ?
事情を問いたげなブリジットの顔を見て、クローディアは気を取り直したように笑顔を取り
「今、ワタシの部下がここに連れてくるから。会ってあげて」
「……それはアタシの知っている人物か?」
ブリジットがそう
ブリジットもクローディアも弾かれたように頭上を見上げる。
星空の下を数羽の
本家のアデラを初めとした
宴会場は本家と分家の
「敵襲か!」
「まずいわね」
2人は顔を見合わせるとすぐに谷戸の谷間にある宴会場に降りるべく走り出した。
女王2人で会うための信頼の
だが、2人はすぐに足を止めた。
頭上から直径50センチ以上はあろうかという岩石が高速で飛んできて足元の土を盛大に吹き飛ばしたのだ。
「くっ!」
ブリジットもクローディアも素早く後方に飛び
「投石機か?」
そう思ったブリジットは前方に目を
その目が
クローディアも同様だ。
2人の見つめる先には、今しがた飛んできた岩石よりもさらにひときわ大きな岩石を両手で頭の上に持ち上げている女の姿があった。
およそ人間
「あらあら。こんな夜中に女が2人で密会なんて、どんなお話をしていたのかしら。興味あるわねぇ」
「アメーリア!」
招かれざる客の登場にクローディアが厳しい表情で声を上げた。
対照的にアメーリアは、まるで近所の住人に
「あらクローディア。先日はどうも。戦いの途中で退場してしまってごめんなさい」
「今夜はあなたのことは招待していないのだけど。突然の訪問は困るわ」
「不作法は謝るわ。でも
そう言うとアメーリアは再び岩石を投げつけてきた。
「チッ!」
ギリギリのところで2人に避けられた岩石は、彼女たちの背後の木の幹にぶつかり、ガツンという音を立てて真っ二つに割れた。
そして木の幹はその衝撃に耐え切れずにへし折れて横倒しになる。
その威力にブリジットは舌打ちした。
「あいつが……黒き魔女アメーリアか」
「ええ。そうよ。念のため言っておくけれど、あなたに会わせたいのは彼女じゃないから」
「分かっている。そんな軽口を叩いている場合じゃないぞ」
アメーリアは嬉々として斜面を歩み降りて来る。
そしてその背中に背負った重厚な金棒を取り出すと、それをブルンブルンと振り回して周囲の木々を
「ブリジット。せっかくのトバイアス様の誘いを断るなんて馬鹿な女。何様のつもりなのか知らないけれど、蛮族の女王程度が選り好みできる立場だと思っているのかしら?」
そう言って笑顔の中にも冷たい目でブリジットを見つめるアメーリアに、ブリジットは冷笑を浮かべる。
「フンッ。悪いがトバイアスにはちっとも魅力を感じなかったんでな。自分の
次の瞬間、アメーリアが目にも止まらぬ速度でブリジットの眼前に
そしてまるで重さを感じていないかのように金棒を高速で振り下ろす。
ブリジットの脳天を目がけて。
「ブリジット!」
「ぐうっ!」
ブリジットはこれをギリギリのところで右に飛んでかわすが、金棒が地面を
「くっ……」
「つまらない挑発はやめたほうがいいわよ。ワタクシのトバイアス様を
そう言うとアメーリアは
クローディアは間の悪い襲撃に内心で
(まずい……丸腰じゃ勝負にならない)
ブリジットとの秘密の
ブリジットもそれは同様だった。
だが、アメーリアはそれを簡単に許しはしないだろう。
「さて、ブリジットとクローディア。まずはどちらを
ブリジットもクローディアもアメーリアに注意を払いつつ、周囲に武器として使えるものがないか視線を走らせた。
アメーリアが
「あまりのんびりしている
「なに?」
ブリジットもクローディアもハッとして
すると無数の黒い影が山を越えて谷間へと駆け下りていく様子が見えた。
「あ、あれは……」
クローディアには見覚えがあった。
クルヌイ
火の消えた宴会場になだれ込むその無数の影は、全員がその
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