第147話 黒き魔女の再来
砂漠島。
島の大半が砂と岩で
女ばかりが生まれるその一族は、過酷な環境で生き続けられるように
わずかに生まれる男児は女たちが子供を増やすための情夫となり、その一生を生殖行為に
それでも男が足りない時は、近くを航行する船を襲って男をさらって来るのだ。
そうした理由から砂漠島は
だがある時、1人の女がその島を訪れた時に島の歴史が大きく変わった。
金色の髪と白い肌、そして
ダニアは圧倒的な身体能力で時の族長たちを打ち倒し、その圧倒的なカリスマ性で複数の部族をまとめあげ、島を統一すると初代の長となったのだ。
当時その島には以前にさらわれて来た男たちがいたが、その中に1人だけ黒髪の男がいた。
ダニアは美しい顔立ちのその男をいたく気に入り、自分の夫としたのだ。
やがてダニアは3人の子を生んだ。
金色の髪の娘と銀色の髪の娘、そして黒髪の息子だ。
以来、時は流れて砂漠島には多くの赤毛の民と、それを
彼女たちは皆、赤毛の女たちよりも圧倒的に身体能力が高かったが、その反面で短命だった。
一方、黒髪で生まれる子はほとんどが男児だったのだが、彼らは女たちのように体は強くなかった。
だが、彼らには他の者にはない不思議な力があったという。
そのひとつが天候や天災の予知だった。
そうした力を駆使して黒髪の男児らは一族のために尽くしたという。
しかし時折、黒髪の女児が生まれることがあった。
彼女たちは呪いの子と呼ばれ、一族から
黒髪の女児たちも男児たちと同じく不思議な力を持っていたが、一定の割合で肉体的にも
そうして生まれた女児は必ずと言っていいほど人格が
そうしたことが続き、ダニアの子孫たちは黒髪の子が生まれた時に男児であるとホッと胸を
中には赤子のうちに間引きをしてしまう場合もあった。
それゆえ、島には徐々に成人する黒髪の女が少なくなっていた。
だがある時、恐ろしい力を持つ黒髪の女が島の外から現れたのだ。
黒き魔女と恐れられたその黒髪の女は、時の族長であったダニア直系の金髪の女王を圧倒し、激しい戦いの果てに女王を討ち取った。
そして黒き魔女は金髪の一族を根絶やしにしようとしたのだ。
だが、その混乱から助け出され、島を出て大陸へと渡った姉妹がいた。
殺された時の女王の娘であった金髪のブリジットと銀髪のクローディアだった。
後の初代ブリジットと初代クローディアである。
この時から砂漠島には金髪銀髪の統治者がいなくなった。
黒き魔女は自分の後継者を増やそうと黒髪の子らを幾人も生んだが、彼女の力を受け継ぐ者は1人も現れなかった。
それどころか病弱で早世してしまう子がほとんどだった。
後継者のないまま黒き魔女は老いて死に、島はダニアが現れる以前のように赤毛の者たちがいくつもの部族に分裂して争い合う
そしてさらに時は流れ、その砂漠島には黒髪の2人姉妹が生まれていた。
姉のアビゲイルは黒髪の者たちに受け継がれた不思議な力を持っていたが、分別を
だが妹のアメーリアはそうではなかった。
アメーリアは幼き頃から異常に力が強く、さらには残忍な性格であり、小動物や家畜などを何の理由もなく殺したのだ。
呪いの子だと恐れられたアメーリアはわずか5歳の頃、両足に重い
だが、彼女は生きていた。
生きたいという生物としての原始的な本能がアメーリアの力を大きく開花させ、彼女は海面へと浮上した。
そこから彼女は近くを航行する漁船に拾われ、他の島の小さな漁村で保護された。
島民が100名ほどしかいない小さな漁村だ。
そして一度失敗したアメーリアは学習していた。
自分の力を見せることなく、従順な子を演じて善良な漁村の老夫婦に育てられたのだ。
彼女が15歳を迎えて成人になる頃に老夫婦は順番に病でこの世を去った。
その後は生きるために漁村の村長の息子の嫁となったが、ここで彼女はずっと温めていた計画を実行した。
村人全員が出席した結婚式が開かれた夜に、数人の優秀な船乗り以外の村人全員を殺したのだ。
地獄のような光景に震える船乗りたちを
そして生まれ故郷である島に10年ぶりに上陸したのだ。
それからたった1年でアメーリアは島の有力部族をいくつも支配下に治め、黒き魔女の再来として恐れられた。
かつて彼女を捨てた者たちは一族郎党、口にするのも
それからアメーリアは1年、2年と時間をかけて島内の部族を吸収していき、恐怖による圧政を強めていく。
その中でアメーリアの
5歳年上であった姉のアビゲイルは、ある族長の妻となり、息子を2人と娘を1人生んでいた。
姉の夫は残されたわずかな部族の族長の1人で、アメーリアに対して必死に抵抗をしていた。
だが、
だがアメーリアは姉を許さなかった。
自分は殺されかけたというのに、その後も
自分を信奉する狂信者たちに島を任せ、アメーリアは数名の部下を
だが、この燃え盛る
大陸に渡ったアメーリアは数名の部下と共に伝染病にかかり、彼女以外の全員が命を落とした。
そして自分も死にかけたのだ。
だが、山間の粗末な小屋で最後の時を迎えようとしていたその時、運命はまたしても彼女の命を
その小屋の前を通りかかった1人の男が、偶然にも彼女の
まだ若いのに真っ白な頭髪を持つその男が目の前に現れたその時、
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