第135話 縁談
ブリジットは事前に調べ上げていたトバイアスの戦果について言及し、トバイアスはそれを
彼は主に公国の北側の海で海軍に従軍することが多く、戦う相手は大陸の北方諸島を根城にする
そこで彼は
最近のトバイアスの急激な評価の上昇にはそれらの戦果が大きく影響していた。
「それにしても御父上はよく貴殿のご訪問を許されたな。アタシの最近の
ブリジットが優雅に紅茶を飲みながら
公国軍とは小競り合いが続いており、ブリジットはその剣で何十人もの公国軍兵士を斬り殺している。
ブリジットとトバイアスは紅茶と茶菓子や果物の置かれたテーブルを
ブリジットの背後にはユーフェミアが立っており、トバイアスの背後には彼の侍女が立っている。
「
トバイアスはそう言うと紅茶の
「ブリジット殿。私といたしましては無用な小競り合いで我が軍の兵士たちをこれ以上減らしたくない気持ちです。ただ、お互いの事情もありますので今すぐにどうこうというわけにはいかないでしょう。ですが……」
そう言うとトバイアスは身を乗り出した。
「こんな時代ですので協力し合える相手は多い方がいい。我が軍としては
そう言いかけたトバイアスの言葉をブリジットは
「トバイアス殿。アタシは言いたいことはハッキリと言う性格なので言わせていただく。正直なところ貴殿のことを情夫として受け入れるつもりはない。アタシの好みの問題なので、どうか気を悪くしないでいただきたい」
その言葉にトバイアスはわずかに悲しげな表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。
「……そうですか。確かに、男女の間には好みの問題は大きい。ブリジット殿のお
「そういう問題ではないのだ。このブリジット、一度口にしたことは
そう言うブリジットをトバイアスはジッと見つめた。
ブリジットもその視線をまっすぐに受け止めて彼を見つめ返す。
一歩も引かぬブリジットにトバイアスはフッと笑みを
「これは私の負けですかな。おっしゃる通りブリジット殿は心根を曲げぬ方ですね」
そう言うとトバイアスは立ち上がる。
「私はあきらめの悪い男だが、一方で女性を困らせることは好みません。ブリジット殿。我が父にはブリジット殿が大変
トバイアスは
ブリジットは胸の内で違和感を覚え、彼の真意を
トバイアスとて父親であるビンガム将軍の思惑を受けてここに来ているはずだ。
断られて、はいそうですかと帰るのでは子供の使いも同然だった。
(
ブリジットがそう
それを見たブリジットがわずかに目を見開いた。
侍女は
その美しく
「申し訳ございません。少し気分が……」
侍女は深々と頭を下げ、トバイアスはそんな彼女の態度に困ったものだと肩をすくめる。
すかさずユーフェミアが声をかけた。
「こちらこそ失礼した。今日はこの時期にしては少し暑いですな。どうぞごゆるりとお座り下さい」
そう言うとユーフェミアは
それをトバイアスは固辞する。
「いえ。お
そう言うとトバイアスは優雅に一礼して
だがそこで立ち止まるとふと振り返った。
「おっと。ひとつ言い忘れておりました。ブリジット殿は近いうちに分家のクローディア殿とお会いになられるとか」
「……よくご存知だな」
その話はまだあまり知られていないはずだったが、トバイアスの目には確信の光が宿っている。
知っているぞ、という目だ。
「クローディア殿の将来の夫候補である王国のコンラッド王子は我ら公国とあなた方ダニア本家とが手を結ぶことを警戒しております。逆にあなた方の戦力を手中に収めたいと考えているようです。クローディア殿との会談にはそのことを念頭に置かれながら
そう言うとトバイアスは侍女に、行くぞと声をかける。
彼女はブリジットにわずかに視線を送ると、深々と頭を下げた。
そして美しい黒髪を
ユーフェミアはすぐさま見送りに出て行く。
ブリジットは1人天幕の中に残り、
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