第111話 レジーナとの外出
夏が終わり、秋が来た。
大地を焼くような真夏の日差しも弱まり、朝や夕方はかなり過ごしやすくなっている。
そんな早朝、大地を駆ける一頭の馬に2人の人物が乗っていた。
そしてその後ろにはボルドが乗っている。
両腕と両足の骨折からようやく
歩行練習などもレジーナによる厳しくも優しい指導のおかげで順調に進み、無理をしなければ普通に歩けるまでにボルドは回復していた。
この日、レジーナはそんなボルドを連れ出し、馬に乗って初めての外出をした。
「ボールドウィン。もっと強く
ボルドは戸惑いながら、治りかけの両腕でレジーナの腰に回した手にギュッと力を入れて密着する。
今朝、レジーナから出かけることを告げられた時は
だが馬に同乗して行くことを聞いたときは、さすがに
ブリジットの情夫であった彼は、他の女性に自分から触れてはいけない。
その
だが、今の自分はすでにブリジットの情夫ではない。
情夫ボルドはあの夜に
とにかく情夫だったことを知られるわけにもいかないので、ボルドはレジーナの後ろに乗り、意を決して彼女の腰に
それにしても彼女の騎乗技術は見事なものだった。
堂々と馬を乗りこなしている。
それに腰に
ブリジットの体を幾度となく見て触れてきたボルドだからこそ分かることだった。
(こ、この人……本当に修道女なのかな?)
修道女の服はしっかりと使い込まれたもののようで、ところどころほつれたり
もしかしたら修道女になる前は色々あった人なのかもしれない。
そんなことを思いながらボルドは周囲の景色を見回した。
小屋のあった場所はどこかの森の中であり、そこを抜けて一時間ほど林道を走る。
林道の両脇は人の手が入っておらず
ここに来るまで旅人の1人とすら、すれ違わなかった。
だが、そこから少し走ると両側の森が開け、突如として巨大な岩の壁が現れた。
「ここは……?」
「ワタシの仕事場よ」
そう言うとレジーナは岩壁に沿って西側へと馬を走らせる。
すると道は徐々に
「うわぁ……」
ボルドは思わず
そこは岩山の頂上だった。
ここに登るまで見てきた岩壁は、岩山の側壁だったのだ。
岩山の高さは十数メートルといったところだろうか。
その頂上は平らな地面になっていて、反対側の
そして岩山とはいえ足元には土が
そんな頂上の中心部には池があった。
「
そう言うとレジーナは馬をゆっくりと歩かせて池に近付いて行く。
(空に浮かぶ大地みたいだ)
周囲を見回しながらボルドはそんな感想を抱いた。
池の水は
レジーナはここまで走ってきた馬に
そこでボルドは思わず
直径20メートルほどの池の向こう岸にはいくつかの石造りの建物があった。
それらは
「あれは……?」
「遺跡よ、どのくらい前か分からないけれど、昔ここには人が住んでいたみたいなの。数年前に偶然ここを発見してね。色々と手を加えればここに大勢の人が住めるようになるんじゃないかって思ったの。以前にあなたに話したでしょ? 新しい国を作りたいって。その都をここにする予定なのよ」
「こ、ここに都を?」
そしてボルドの手を取ると彼を馬から降ろす。
走り続けてきた馬は池の水をうまそうにゴクゴクと飲んだ。
「あの……ここを都にすると言っても……」
そう言い
十分な広さがあるこの場所を、レジーナがたった1人で都として開発しようとしているのならば、それは無理がある。
そう言いたげなボルドに
池をグルリと回り込むようにして反対側にある遺跡へと足を踏み入れると、その石造りの遺跡が住居ではなく公共の場であったことがボルドにも分かった。
「ここで皆、この池の水を飲み水として採取していたみたいね」
遺跡の一部が池の上にせり出していて、そこから見える
岩山の上であり、水源はここしかない。
かつての住人たちが共同でこの場所を使っていたことが
どのくらいの時間を
「ボールドウィン。少しここで待っていてくれるかしら? 人を呼んでくるから」
「人を?」
「ええ。ここで働いている人たちよ」
そう言うとレジーナはボルドをそこに残し遺跡の裏側へと姿を消した。
ボルドがそこで数分待っていると、やがて彼女は戻ってきた。
その後ろには十数人の人々が付いてきている。
男性、女性、老人に子供もいる。
「……えっ?」
そこでボルドは思わず
その人々の中に女性が5人ほどいるのだが皆、背が高くガッシリとした体格で赤毛に
そう。
忘れもしないそれはダニアの女の特徴だった。
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