第8週 非日常は加速する。
歴史学の授業が終わり、意を決して美咲さんに話しかけようとすると、その前に涼介くんがぼくに声をかけた。
「いっちー!今日も食堂だろ?一緒に食べようぜ!」
そう言ってくれたのだが、今日は珍しく大事な用事があったのを忘れてはならない。
「ごめん……、今日は美咲さんに用事があるんだ……」
少し申し訳なさそうに断った。すると、涼介くんはぼくの耳に口を近づけて
「いっちーやるじゃん!全然いいよ!楽しんでな!」
そう少し楽しそうに言った。何か勘違いされていると思ったぼくは、
「そんなんじゃないよ!」
とちょっと語気を強めて言った。
「そんなに怒らなくてもいいじゃーん!
じゃあまたな!」
そう言って涼介くんは去っていった。さて、本番はここからだ。早く見つけないと美咲さんが帰ってしまうかもしれない。そう思い、教室の中を見回すと1人の女性と目があった。
美咲さんだった。駆け足で美咲さんの方に向かい、
「日曜日の件で返事したいんですけど、この後時間ありますか?」
と尋ねた。すると、美咲さんは少し笑顔になって
「うん!大丈夫だよ!じゃあ、近くにあるファミレスにでも入ろうか!」
と言った。
ファミレスに到着し、ぼくはミートパスタ、美咲さんはオムライスを注文した。そして、この注文の待ち時間の間にぼくは返事をしようと決意した。
「美咲さん、日曜日の件、ぼくなりに答えが出せました。」
「うん、ちゃんと聴くよ」
「ぼくがこうやって今美咲さんと話せているのも涼介くんのおかげです。いままでぼっちだったぼくにとって大きな出来事です。そして、まだそんなに回数は多くないけれど、美咲さんと関わってきて、とてもいい人だなと思いました。そんな人たちの幸せへの手伝いができるなんてとても魅力的だなと思います。」
ここまで自分の想いを人にぶつけたのは初めてだった。こんな自分でも、もしかしたら人の役に立てるかもしれない。意を決してぼくは言った。
「美咲さん、あなたの恋の手伝い、ぼくにさせてもらえませんか?」
美咲さんは、ぱっと明るく笑顔になり、
「うん!もちろんだよ!これからよろしくね!いっちー!」
そう言った。言い終わった頃合いにちょうど頼んだミートパスタが到着した。食べると普段より少し味が濃く感じた。
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