第7週 決意の時

「涼介と付き合うための手伝いをしてほしい」


そう先週の日曜日に言われてから数日がたった。その時のぼくは、かなり動揺していたことを覚えている。


「美咲さんが涼介くんのことが好きだなんてなぜぼくに言うのか?」


「なぜ関係値の浅いぼくに手伝いを依頼したのか?」


「なぜ、手伝いがそもそも必要なのか?」


そういった様々な疑問がぼくの頭の中を駆け巡った。さらに美咲さんとはまともに話したことはまだ数えるほどしかなかった。やはり、不可解な点は多かった。けれど、ぼくにとってこういった形であっても美咲さんと関わることができるということに大きな魅力を感じていたのも事実だった。ただ、返事だけは一旦保留した。


「少し、考えさせてもらえませんか?来週の歴史学の授業の時には返事を返せると思います。」


そう言って、その日は美咲さんを家まで送り届けた。その間は一言もお互いに言葉を発することはなかった。


ここ数日間、かなり悩んだ。仮に手伝ったとしてぼくにできることなんてあるのか?


こういうことって仲良くしてくれている涼介くんを騙すことにならないか?


もともと、ぼっち大学生だったぼくにとって今の状況はとても恵まれたものだと自分から見ても思う。すべては涼介くんがぼくにあの時話しかけてくれたから、今がある。


「さえないぼっち大生が美少女の恋のお手伝いをする」


この文字列のインパクトはやはり大きい。もはや、非日常としか思えない。確実にぼくの周りの人間関係は「ラノベ化」していると言ってよかった。


今回の件に足を突っ込んでしまうと、どこまでぼく自身が「ラノベ化」に突き進んでしまうかはまったく予想はつかない。


別に今までの日常に大きな不満があった訳ではなかった。ただ、涼介くんが話しかけてくれたあの時から大学生活が「楽しい」と思えるようになったのも事実だ。


葛藤しながらもぼくのなかでは答えは出ていた。さまざまな想いを胸に歴史学の授業を受けに大学に向かった。










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