第5話

それから五年画過ぎ、僕は無事に医学生にとなっていた

そして僕は移植手術のスペシャルリストとなっていた

「おい。」

「何?」

今では内科に進んだ奴とも対等に普通に話をすることができる

「どうした?」

「今、ベストセラーになっている本のことを知っているか?」

「ベストセラー?」

僕は寝る間も惜しんで勉学に励んでいたため、正直言って本のことははっきり言って何も知らなかった

「何か、君にとか言う題名だっけ?」

「そうそう。」

「それで?その本に何かあんの?」

「だったら別にいいんだけど、この内容、妙に鼻に着くって言うかさ、妙に心あたりがあるって言うかさ、とにかく暇だったらこの本でも読んでみろよ、隣に置いとくからさ。」

「うん、分かった、ありがとう。」

奴は小さな本を白衣のポケットから恐る恐る取り出すと、僕の隣に置いて医務室を出て行った

誰もいない医務室

奴がいなくなっただけで、こんなに静かになってしまった

機械音と僕がパソコンを打つ音だけが、医務室に響き渡っていた

しばらくしたであろうか、ふと僕は指を止め、本に手を伸ばした

(あの本を絶対に読みそうにない奴が言うくらいなんだから、ちょこっとだけ読んでんでみようかな。)

僕はパソコンを閉じて、部屋を少しだけ暗くし、コーヒーを並々と入れて本を片手に取り、椅子を軽く倒した

私は後余命一年です

書き出しが始まった

でも私の寿命は一年だとは思いません

だってこの本があれば私自身はこの本の中で永遠に生きられるんですから

私は今日、ある人にとある課題を出しました

何があっても絶対に消えないものって何か分かる?

その子はすぐに気持ちだと言いました

私もそうだと思いました

でもそれでは会話が長続きしません

だから私はそれは違うと言いました

でも答えはそうだと思います


一年前のあの日、学校で急に倒れました

体育の時でした

突然倒れてそのまま救急車で病院に運ばれました

でもそこからさらに救急車でさらに違うもっと大きな病院に行きました

そこでは私は未分化ガンステージⅣだと言われました

すぐに抗がん剤治療、放射線治療、薬物治療などを始めました

長い長い治療でした

もちろん漢方や免疫療法と言った治療もしました

でも効果は全くありませんでした

そんな時、先生から未来の自分宛への手紙を書くと言う宿題があることを言われました

正直言ってこの人は何てひどい人なんだと思いました

だってこれから先がない人に未来のことなんて分かるはずもありませんから

でもどうしても私はこの手紙を書きたかった、だから書いた

けどいざ書こうとしたらペンも紙もないことに気が付いた

だから私は近所の文房具屋に出かけた

ちょうどその時、君と出会った

でも何だか恥ずかしくてなかなか顔を上げずにいられずにいた

でもあんとき少しでも声をかけていたらな、と今になってそう思う

でも学校にいる時、また急な体調不良になって、私は保健室で休んでいた

ふと窓の外を見ると、君が歩いて来ていた

そしてあまり柄がよろしくない人に絡まれていた

でもその人のいつもの周りの取り巻きはどこにも見受けられなかった

きっとその人の君に対する配慮だと思う

そこであることを聞いてしまった

君の妹が病気であると言うことだ

私はすぐに分かった

いつも私が入院している部屋の隣に今度新しくまた人が入るらしいと先生がおっしゃっていた

きっとそのことだと思った

でも私は黙っていた

でもそれからいくらかして私は君と図書室でたまたま出会った

私はこの本を書いていたUSBを落としてしまった

そしてそれを取りに戻った

でもそこには君がすでに立っていた

そしてその左手にはしっかりと何かが握られていた

でも私はそれを自分のだとは言い出せなかった

だからUSBを取り戻すために君をいろんなところに連れて行った

どこかで空きを見つけて取り戻そうとした

でもそれはなかなか叶わなかった

だからそれからいくらかして君の妹をそそのかして外に出かけた

そして君と少しでも近づける空間を作った

そうすればきっとすぐにUSBを取り戻せると思った

でも私は倒れてしまった

そしてばれてしまった

でも君は何にも言わなかった

もちろんUSBの話もしなかった

でもそれからいくらかして冬になった時、ふと窓側に見覚えがあるUSBが置かれていることに気づいた

私はすぐに看護師を呼んで、それが何何か確かめさせた

そして私のものだった

でも私はもう一つ気づいてしまった

君もまた、不治の病によってずうっと悩まされていた

でも私もまたそのことは黙っていた

だって君がまず始めに自らの口で実はこうだったと説明するべきだとそう確かにそう思ったからだ

でもそれは様々な方向に私たちを狂わせて言った

その後に私はアメリカに渡ることになった

これで話は終わっていた

これと僕の話とを合わせたらどんな風になるんだろう

これで話は終わり

「ふうーん、何か薄っぺらい話だな、でもま、いっか、だってたまたま落ちていた本を拾って読んだだけだし。」

そう言いながら僕は一冊の本を書店に本棚に戻して、本棚を後にした

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