第2話新人教育

日勤の朝。

新人が入社してきた。湊理恵24歳である。前職は銀行員だったらしい。

一先ず日勤の指導を石神と同い年の村田俊一が担当した。

湊は仕事覚えが良く、二週間日勤の指導を受けると、夜勤に入る事になった。

夜勤の指導は石神が担当した。

「湊さん。僕は教えるの厳しいから、そのつもりで」

と、石神は言った。

石神は後輩に”裕太君”と呼ばれて、先輩らしく後輩は接してくれないので、嫌でも厳しく接しようと考えたのだ。

まずは、夕食の食事介助。歯磨き。オムツ交換。

湊には出来るだけ、障害の軽い入居者の介助をさせた。

夜勤は3人体制で、山下憲夫さんが施錠やカーテンを閉じる当直をしている。山下さんは、41歳である。


夜勤者は途中、3時間ずつ仮眠休憩がある。入居者に問題が無ければのことだが。

そして、3時間おきのオムツ交換、体位交換。

朝、6時を過ぎると早出の職員が出勤してくるので、ベッドから車イスに移乗し朝ごはんの準備をする。

そして、石神が湊にお茶の量を指導し、布巾で水回りを拭いていると、布巾を床に落としたので、拾おうとすると、


ブッ!


ビクッ。


石神は湊の横で放屁し、その放屁を自分自身で驚く失態を犯した。

石神は湊に、

「お尻のバルブが緩くて、すいません」

と、頭を下げた。湊は爆笑した。

やっちまった。また、この新人からも気軽に裕太君って呼ばれる羽目になる。

ことの経緯を休みの村田に電話して、夜勤明けに2人でビールを飲んだ。

「村田、やっちまったよぅ~」

と、泣きつくと、

「大丈夫、大丈夫!スカンク」

「うわぁ、お前まで!」

「石神さ、そういう所が後輩に人気があるんだ」

と、言われて慰められたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る