第14話 決起会
教会に着くと、シスターが笑顔で迎えてくれた。町の人達に相談したところ、みんなで協力してジョルジュを追い出そうという話になったそうだ。
シスターは今まで見た中で一番イキイキとやる気に満ちていた。
「明日の朝、パラキート町長の家に皆で直談判に行きますよ!」
「む、無理はなさらないでくださいね。――でも、あのジョルジュという人が話を聞いてくださるか、心配です」
護衛に町の人達が傷つけられでもしたら、と思うと不安だ。
「でも、声をあげることが大切なのよ。私一人では簡単に力で捩じ伏せられてしまうけれど、みんなで声をあげれば、より大きな力となって上の方々にも届くだろうって」
「上の?」
「ええ。さっき現れた隣国の騎士の方が教えてくださったの。ここはサウザン侯爵領の一部なのだから、侯爵に訴えればいいって。こんな小さな町のことなんて、侯爵様は取り扱ってくれないって思っていたのだけれど、そんなことないって言ってくださって、みんなでジョルジュの事を取っ捕まえることにしたのよ」
「取っ捕まえ……って、町の人に怪我人でも出たら……」
「大丈夫よ。スー爺さんとトルク爺さんは元騎士ですし、ミハエル爺さんのお父様は近衛騎士だったのよ。明日は張り切って鎧を着てくるって」
みんなお爺さんみたい。
それに、ミハエルさんは騎士でもなんでない。
きっと助言をしたのはメルヒオール様だろう。
一体何を考えているのやら。
「とても不安です。その隣国の騎士の方も手伝ってくださるのですか?」
「いいえ。その騎士の方は、明日エミルを迎えに来ると仰って町を出たわ。そんなに心配しないの。パラキートの人はタフなのよ。それより、エミルをよろしくね?」
「あ……」
「あの子が母親を失っても笑顔で居られたのは、周りに皆がいたからだわ。今はまだ、慣れないところへ一人でなんて行かせられない。でもエミルが行くと決めて、コレットさんに一緒にいて欲しいと言ったのなら、側にいて見守ってあげて欲しいわ」
「はい」
「でも、いつでも戻ってきていいからね。その為にも、明日は頑張らなくちゃっ」
「ほ、本当に無理はなさらないでくださいねっ」
シスターと話した後、エミルも教会に現れたので、子供達といつも通り過ごした。今日が最後だなんて思えないくらい、いつも通りに。
◇◇◇◇
貸家へ帰ると、ゲインズ夫妻達がご馳走を作ってくれていた。レンリもその場にいて、私へ苦笑いを向ける。ラッヘさんは既にお酒を手にして顔を赤くさせていた。
「明日は朝からパラキートさんとこの愚息狩りだからなっ。決起会だっ!」
この町の人達は、みんな血の気が多いみたい。
明日の決起会と銘打っていたけれど、本当はエミルと私達のお別れ会だそうだ。
ミリアさんがこっそり教えてくれた。
エミルはブドウジュースを何杯もおかわりしてご機嫌で、レンリは明日の事を私と話した後、ラッヘさんとゴードンさんに付き合ってずっとワインを飲み続けている。二人はだんだん呂律が回らなくなっているのだけれど、レンリは顔色一つ変化ない。
「コレットさんもいかが? 大人のジュース!」
「ミリアさん。ありがとうございます。私、初めてなんですけれど」
「一杯くらいなら平気よ~」
「じゃあ……」
レンリは平気そうだし、多分私も平気よね。
私はワインを一気に飲み干した。
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