第12話 興味はない
「いつから……そこに?」
「君達が部屋に戻ってくる前からだ」
全部聞かれていた。
これでは、レンリの立場が悪くなってしまう。
でも、おかしい。
今メルヒオール様は屋敷に来いと言ったような。
「あのっ。レンリは私を助けてくれただけなんです。ですからっ」
「どうでも良い。君達にも事情があるようだが、興味はない。俺は、エミルの付き人として君達が必要であるから同行を求めた。剣に誓っても良い。そこに他意はない」
「……メルヒオール様は僕とコレットのことをどのようにご存じですか?」
「さあな。色恋沙汰に興味はない」
興味がないと言っても、普通、妹の婚約者に手を出した令嬢なんて屋敷に入れないだろう。
嘘だと知っているのか。それとも何も知らないのか。
彼の表情から何の情報も得られなかった。
後で問題になってレンリにまで迷惑はかけたくない。私は軽蔑されてもいいのだから、意を決して彼に尋ねた。
「あの。私がガスパルを襲ったという話は、御存じですか?」
「襲う? 打ち負かしたのか?」
あ。そっちの意味で取るのね。
昔の私のことを覚えているのかもしれない。
でも、知らないということは、フィリエルは何も話していないようだ。
「まあ、そうですが……」
「ガスパルはコレットに好意を抱かれ襲われそうになったと言ったのです」
割って入ったレンリの言葉の真意を確かめるように、メルヒオール様は軽蔑したような目でレンリを見据えた。
そして嘘ではないと分かったのか、納得したように呟いた。
「負けて悔しかったのだな」
「メルヒオール様。ガスパルの嘘は、負けて悔しかっただけの嘘ではありません。コレットの婚約を破棄させ、延いてはキールス家から追い出すための嘘だったのです」
レンリはメルヒオール様なら話が分かると汲んだのか、隠さずに話した。
「それを何故俺に?」
「コレットが国に戻れば問題が生じることがあるかもしれません。僕達を雇ってくださるのでしたら、お耳にいれておいた方が良いかと存じました」
メルヒオール様の鋭い眼光に臆することなくレンリが答えると、少し間を置いてから、メルヒオール様は口を開いた。
「レンリ=ベルトット。君はコレットの騎士なのだな」
「へっ? 違います。僕は剣は……。ただの執事ですよ」
「そうか。惜しいな」
レンリはメルヒオール様に気に入られたようだ。
でも、レンリはメルヒオール様を警戒しているみたい。
「コレット。エミルの部屋は離れに用意させてある。自ら出向かなければ、フィリエルや来客と出会うことはないだろう。しかし、君がフィリエルを心配しているのなら、一度会ってやってくれ。君の婚約式の日から、妹の様子がおかしい」
「あの。フィリエルは今、どうしているのですか?」
「さぁな。自分で確かめると良い。荷物をまとめておけ。明日の夕暮れには立つ」
「はい」
メルヒオール様は私の返答を聞くと何も言わずに去っていった
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