EP.3 結局「バレなきゃ犯罪じゃない」です!
「秋川美野里。」
はいっ!なんでしょうか!?
「貴方は本当に母親のお使いに行きましたか?」
いえっ、実は今朝とどいた差出人不明の手紙と地図をもとに図書館にいっていました!.....とはいわず。
「行きました!!」
と嘘をつくわけです。少々良心に針が刺さりましたが問題はないです。なんたって怒られたくないのですから。はい!
自然と目が泳いで、黒や白、青で統一された部屋の壁掛け時計に目が行く。17時15分をさしていた。
この味気のない部屋は紛れもなく、りょうの部屋。わたしの家から三十秒もしないで着けるというお隣さんで、だからか幼稚園よりか前に知り合ってたんだっけ。
「根拠は?」
「へ?」
思い出にふけっていたからか、目が点になる。
「根拠は?」
二度同じトーン、同じ言葉でそういう。
「え?……あっ、やばっ」
そうだ。羽柴りょうの手札の中に「根拠は?攻撃」っていうものがあったのを忘れてた!
「ポ○カのやりすぎか?」
え?なにそれ?
「……。」
無言になるりょうを放って、わたしはというと、頭を抱えていた。
だってこの人、根拠がないと納得してくれないんだもん!
どうしようどうしよう、お使いにいった証明をしなきゃいけないわけ!?
「買い物にいったなら、買ったものとかあるはずだろ?なんですぐ出さないんだ?」
どんどんと圧をかけてくるりょうに、ぐぬぬ、と押されてしまう。
た、たしかに……。ああ〜!一回家帰ればよかった!!それなら冷蔵庫から適当なもの引っ張り出せたのに!
「どうする美野里?」
にやにやと、なんとも不気味に微笑む姿にいらっとする。
りょうめ…⋯!!絶対このことわかって論破してるんでしょ!
「このこと、っていうのは?」
あっ、え、ええっと、それは。
「そろそろ白状するんだな。」
きらりと真っ黒だった瞳がわずかに光る。
その圧力に押されて、いいかけようとしたそのとき。
「りょうー?美野里ちゃんをおうちに帰してあげなさーい!もう6時よー!」
「は、はーい!」
やや叫びと同じくらいの大きさで返答するりょうに、開きかけていた口が勝手に閉じた。
嗚呼、りょうのお母様!間一髪のところですくってくださってありがとうございますっ!!
「と、いうわけなので、帰りまーす!!」
まったねー!と元気よく手を振ってすばやく部屋を出ようとする。
これ以上一緒にいたら、いわなきゃいけないはめになるし、いったらいったで、すごい怒号をくらいそうだから、もうあなたとはおさらばだ!
「ちょっ」
あわてたような声が背後で聞こえるも、なにも問題はない。
鼻歌を歌ってしまいそうな勢いでドアノブを手にかけた。
「ってことで、ばいば〜い!」
「だから話はまだっ」
そんな声すらも無視して、ぱたりと扉を軽やかに閉めた。
結局、わたしは「ばれなきゃ犯罪じゃない」区域に入れましたとさ。めでたしめでた……くは、ない、かな。あは、あはは〜。
⋯⋯もう絶対りょうには嘘つかないでおこ。
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