第266話 強襲
いきなりの強襲に俺は体が行動できなかった。
ただ優樹の方に手を伸ばして見ていることしかできなかった俺は深く後悔した。
(動け! 間に合え! デバフの一つでも入れるんだ!)
しかし詠唱は間に合わない。
リィカの刃がきらりと光ながら優樹の胸を薙ぎ、フワンの放った氷の魔法が体を突き刺す!
優樹も頑張って抵抗したのだが、流石にこの2人には敵わない。
「和希...」
最後までこちらを見据えていた彼女が倒れる瞬間に俺は再びあの黒い気持ちに落ち着いていた。
「2人とも、まだ小鳥遊優樹は死んでいません。かの者には然るべき報いを」
「ごめんね回復の姉ちゃん。死んで」
「...主人の命令ですので、お覚悟を」
2人の刃が再び優樹に届きそうな時だった!
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!」
柄にも無く感情で叫ぶ俺の目の前にメニューが開く。
『感情の昂りを確認しました。【苦悩の杖】【生きる苦悩】の取得条件を達成します。【苦悩の杖】が【憤怒と憎悪と嫉妬と恨みと忘却の杖】と共鳴し【憤怒と憎悪と嫉妬と恨みと忘却と苦悩の杖】に進化しました』
『感情の昂りにより[【叛逆の意思】【弱者の怒り】【怒りの魔力暴走】【怒りの弱体術師】【嫉妬の悪魔】【恨みの連鎖】【忘却の向こう側】【生きる苦悩】【感情の勇者】【憤怒と憎悪と嫉妬と恨みと忘却と苦悩の杖】]を強制発動します』
今まで以上の負荷が俺の体にのしかかる。
いや...これは...、心に作用しているのか?
全身が重たくなるのと引き換えに、頭の中はただ目の前の敵を殺すことだけに特化されていて凄く静かで落ち着いている。
ただ...、心の中が苦い...。
この世の苦しみを全てトッピングした飴玉でも舐めているようだ。
苦しい、辛い、痛い、苦い。
そんな感情の渦に流されていると言うのに頭中だけは酷く冷静だった。
俺の中にドス黒い何かが入ってくる。
感情、感情、感情。
これも? あれも? 全て俺の感情だ。
憤怒と憎悪と嫉妬と恨みと忘却と苦悩。
全て俺がこの世界に叩きつけている負の感情。
「消え失せろ。俺の前から
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