第265話 高坂和希と言う名前②

 俺はその光景に言葉を失った。


 あの強敵だったリィカやフワンが俺の前で跪き、こうべを垂れていたからだ。


「なっ...?」


「驚かれるのも無理はありません。この場にいる守護者の中では私めが1番の強者ですので、今は私が守護者達を統括しましょう」


 アル子が深く頭を下げたままそう呟いていた。


「高坂和希。貴方様には私達の主人と出会って貰いたく探していました」


「お前達の主人だと? さっきお前らは俺の事を主と言っていなかったか?」


 頭の中が混乱していると言うのに余計な情報を更に送りつけられては困ってしまう。


「はい、私共の主人は貴方も同格として扱うように古の時代から教えられていましたので、私達からすれば貴方も主人と同格の存在なのです」


「...悪いがそんなに古い知人は知らない」


 そう、俺はこの世界に来てまだ1年も経っていないのだ。


 そんな知人がこの世界にいるはずもない。


 そんな事を話しているとアル子が手を差し出してきた。


「高坂和希様。どうか私どもの手をお取りください。貴方様にはこんな腐った世界よりも価値ある世界で生きる権利があります」


「腐った世界か...。それだけは同調してやる」


 そう、この世界は俺に厳しすぎる。


 甘かった事なんて殆どないほどだ。


「それでは、私どもと共にきてくれるのですか?」


 その問いにはこう答える。


「悪いがそれは却下だ」


「なぜ?」


 ...俺は優樹の方を見つめる。


「優樹は連れて行けないんだろ?」


「...優樹。小鳥遊優樹ですか?」


「ああ」


「...すみませんが彼女には主人よりを請け負っていますので承諾できませんね」


「なに...?」


「聞きましたか? フワン! リィカ! 目の前の小鳥遊優樹を葬りなさい!」


「「はっ!」」


「えっ!?」


 驚く優樹に強者の2人が襲い掛かる!!!


「やめろ!!!」


 俺が叫び声を上げた時にはもう遅い。


 奴らの攻撃が優樹に突き刺さる瞬間を見ていることしかできないのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る