第203話 クリスティアーノ王
俺は仲間達と共にクリスティアーノの王に会いに向かった。
なぜこのタイミングで顔を見てやろうかと思ったのかと言うと、何があってもケロナがいれば恐らく大丈夫だろうと思ったからである。
「...」
何やら重苦しい表情で俺の事を見てくるクリスティアーノ王。
「此度の戦争大義であった。誠に遺憾ではあるがな」
「あっそ」
俺は手を振って王を小馬鹿にする。
「貴様! 王の御前であるぞ!」
などと言われるが俺は目の前の男に一切の敬意を表するつもりは無い。
いや、むしろ奴が敬意を表するべきであろう。
「貴様が俺たちをここに呼んだ意味は分かっているぞ。今回と前回で意識を持って戦争を乗り切った勇者が【弱体術師】である俺だったからだろう?」
「ぐぬ...」
悔しそうに拳を握っている奴に俺は言ってやる。
「頼みの綱の【勇者】も【賢者】もとんだへっぽこだもんなぁ!! このままじゃ流石にやばいと思ったお前が取る行動は一つだろう。恐らくだが俺がどんな過程を得て力を得たのか聞きたいんだろう? 誰が教えるかば〜か!! どうしてもって言うのなら教えてやらないこともないが、貴様にそれができるのか? 土下座して教えてくださいって言えるのか? お前のような脳足りんが?」
必死に怒りを抑える奴の顔を見るのは堪らなく面白い。
「【弱体術師】!! 貴様!!」
いきなり玉座から立ち上がり兵士達に俺たちを捕らえるように頼む王に対して動くアルシェ。
「クリスティアーノ王! 少しよろしいですか?」
「むっ? 誰だお前は? 悪いが小娘と言えども【弱体術師】のパーティだと言うことだけで罪状に問わねばならんな」
苦笑するクリスティアーノ王に対して静かに呟くアルシェ。
「私はアルシェ=エトランゼ。訳あって【弱体術師】
彼女の名前にその場にいた皆が驚く。
「いまエトランゼって言わなかったか?」
「まさか!? あのエトランゼ王の一人娘が【弱体術師】なんかのパーティに!?」
その状況を見て俺は察した。
(...多分だがクリスティアーノ王国よりもエトランゼ王国の方が力が強いんだろうな)
「今のクリスティアーノ王の発言は私を助けていただいた【弱体術師】様への侮辱とみなして良いのですね?」
その言葉に黙り込むクリスティアーノ王の苦悶の表情がとても良い。
(いいぞ、もっと苦しめ。お前は俺に謝るかエトランゼ王国を敵に回すかの2択を強いられているんだからな!)
「ぐぬぬ...!」
今にも血管がはち切れそうなほどに怒りの篭った顔で俺の事を睨んでいる奴の表情がとても良い。
(さあどっちを選ぶ? プライドか? それとも国か?)
聡明な王ならば当然後者を選ぶのだが、このクズ王ならば前者をとりかねないな。
そう思いつつも俺は奴の返事を楽しみに待っているのでした。
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