第202話 クリスティアーノ騎士団

「いたぞ!! 【勇者】様と【賢者】様だ!!!」


「【勇者】様は凍結状態になっているぞ!」


「【賢者】様は重症だ! 早く医療班を呼べ!!」


 手厚い国の援助に俺は苦虫を潰したような顔をしていた。


(石川は自ら国の森に火を放ったんだぞ? しかも飛び火して騎士団の連中を焼き殺した。充分罰を受けてもいいレベルだとおもうんだけどな)


 俺はこんな奴らよりもまだ生きているであろう被災者達を救った方が幾分かマシだと考えていると...。


「おいっ!! 【弱体術師】!!」


 兵士長が俺に武器を向けてくる。


「貴様!! 【勇者】様と【賢者】様に何をした!? それに後ろにいるモンスターはなんだ!? 人型の魔物か!? そんな者を使役しているとは穢れた悪魔め!!」


 相変わらず佐藤と石川がやられたら全部俺のせいにしてきやがるな...、まあもう慣れたけど。


 俺は耳をほじりながらだらけた表情を浮かべる。


「なっ!? 貴様私の話しを聞いているのか!?」


「聞いてねーよ。こんな所で時間を使わないで被災者の1人でも救ってきたらどうだ?」


「【勇者】様と【賢者】様の安全確保が最優先事項に決まっておるだろう!!! 民間人の救助など次の次の話だ」


 その言葉を聞いた時に後ろからケロナが飛び出してきた。


「あんた...、それ本気で言ってる?」


 ドスの聞いた声で自分よりも身長の高い兵士長を見上げるケロナの威圧感は凄い。


「ぐっ...! 私は【弱体術師】の使役する魔物なんぞに屈しはしないぞ!!」


「何を焦っているの? 私はただ聞いているだけだよ? ねぇ...本当に守るべきか弱い国民よりも自分で戦える力を持った者たちの救助の方が大事だと思う? 勿論自分の命を守れる者達の命は大切だよ国防の為にね。でも私が見た感じあの2人はそこまでの重症じゃない。もっと助けるべき人がそこら中にいるのにその発言は良しといた方がいいよ」


 ケロナの言葉に生き残っていた村人達が悪意のある瞳で兵士長を見つめている。


「ぐぬぬ...! 貴様ら!! 何を見ている!? 見せ物ではないぞ!! 散れっ!!」


 剣を振り翳して弱い者振り払う姿を見て苦笑するケロナ。


「あんた、いい性格してるね。そんなんじゃあろくな死に方はしないよ?」


「モンスター風情が! 私が鉄槌をくれてやる!」


 そう言いながら剣を振り上げてケロナに斬りかかる兵士長だったが...。


「ふ〜ん...。こんな小さなこの頭も叩ききれないような奴が兵士長してるんだ。この王国終わってるね」


「ば...馬鹿な。真剣だぞ? これは...」


 兵士長の放った斬撃を避けることもせずに頭で受け止めるケロナの姿に周りは驚いていた。


 まあ、俺は別に驚かないがな。


 フワンと同レベル程度には強いであろうこいつが兵士長如きに傷つけられるわけがないだろう。


 劣勢を悟った兵士長はすかさず剣を納めてこう呟いた。


「【弱体術師】貴様には王から城への出頭命令が出ている」


「あっ? 俺は今から生き残っている連中に無償で薬を提供するつもりだったんだが? そんな俺を王とは言え強制的に出頭させてもいいんですかね〜!? 被害が大きくなるだけだと思うんだけどな〜!?」


 俺は大量にある【回復薬】をちらつかせる。


 圧倒的不利な状況を悟った兵士長は黙りこくりその場で捨て台詞を吐きながら「少しだけ待ってやる」と言わせてやった。


「ふん! 最初からそう言ってろよ無能ども」


「ぐぬぬ...」


 言い返してこれない奴の顔を見て清々する俺は村人に【回復薬】を始めとした各種薬草を無償提供したのでした。

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