第204話 王の選択

「ぐぬぬ...!!!」


「どうしましたか? クリスティアーノ王。早くお返事を返してくれませんか?」


 アルシェの言葉責めにクリスティアーノ王は苦悶の表情を浮かべる。


「どうした? 早く答えろよ!」


 俺の催促にさらに怒りの歯軋りまでしている奴の苦しんでいる顔が最高に見ていて楽しい。


(国か? プライドか? さあ好きな方を選べ)


 俺がニヤニヤしているとついに王は言葉を発した。


「...そこのアルシェ殿が本物である確証はどこにある?」


 そうきたので彼女は剣を掲げる。


「これを見てください! これこそ当家に伝わり王家の剣です! エトランゼ王国の刻印が刻まれた剣はこの一振りしかありません!」


 そう良いながら自身の剣を翳す彼女の姿に流石のクリスティアーノ王も舌を巻いていた。


「さあ、苦し紛れの言い訳タイムは終了だ。俺に頭を下げるか? それともアルシェの王国と敵対関係になるか好きな方を選べ」


 クリスティアーノ王はしばらく黙り込んだまま「...【弱体術師】を侮辱した件については誤ろう」と謝る気のない声質だは一応は謝罪している。


「クリスティアーノ王の非礼を許しましょう」


 取り敢えず謝罪してくれた事によって最悪の展開だけは避けるだけの脳はあるようだ。


 クズだが自分の事だけしか考えない最低の愚王ではないのかもしれない。


 まあ、こんな奴が王をやっている時点で俺からすればこの国自体滅亡したって問題ないどころか最高だがな。


 俺が冷や汗を拭っているクズの顔を見ながら愉悦に浸っていると...。


「だがそちらもこちらを馬鹿だの土下座しろだなどと言い切った事を謝罪してもらおうか!」


 完全に先ほどのテンションでウキウキとしている奴に俺は言ってやる。


「はいはいすんません。偉い王様に生意気な口を聞いてごめんなさ〜い!」


 俺は適当に謝っても良いのだ。


 何故なら俺が謝ってもあちらからすれば所詮は犯罪者の謝罪だ。


 どうせ意味のない謝罪として受け取られるに決まっている。


 しかしこちらがクズの謝罪を貰うと言う事はどうだろうか? 王様が一級犯罪者に謝るなんて光景はすごく爽快な気分になるだろう?


 犯罪者の謝罪と一国の王様の謝罪。


 どちらの方が価値があるかなんて明白だろう。


 俺はしてやったりと笑顔になる。


(ザマアミロ! このクズ王が!!!)


 心の中で何度も罵倒を繰り返した上で俺はクズに何の情報も与える事なく城から出ようとすると...。


「2度とわしの前にその醜悪な面を見せるな!!! 【弱体術師】!!」


 などと言ってきたので清々した。


「こっちだってお前の顔なんざ見たくねーよ!」


 俺は捨て台詞を吐いてクリスティアーノ城を後にするのでした。


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