第126話 祝杯④
「どうしても...か?」
「どうしてもだ」
俺はクラールとのやりとりに決着をつける。
「悪いが俺は【弱体術師】。一応異世界より召喚された勇者の1人でこれからも命を賭けて魔王軍と戦って行かなくちゃならない。そんな戦いに無関係のお前を巻き込みたくないんだ」
俺が【弱体術師】である以上、ここで一緒に盗賊団をやろうという彼女の提案に賛同はできないのだ。
だんだんと激しくなっていく奴らとの戦争に備えて少しでも強くなっておかないと確実に次の戦争で死ぬだろう。
明らかに佐藤達よりも強いリィカとかいう吸血鬼の少女の登場により俺は内心焦っている。
(あいつ絶対魔王軍に幹部とかだろう。絶対に出てくるに早いって!)
あれはゲームで言うところの負けイベ的な物なのか? そう考えるのは浅はかだと思う。
こっちの世界で死ねば教会で生き返るなんていう甘い考えは捨てておいた方がいい。
所持金の半分で生き返れるのなら安い物だが、今のところ死んだ者が蘇ったという話は聞いたことがないからだ。
これだけ勇者と言う存在に対して信仰心の様な物が根深い世界で勇者が生き返ったと言う情報さえ出てきていないのが事実を助長させていると思う。
この世界で死ねば恐らく現実と同じなのだと今の所結論づけるしかない。
そんなすぐ死ぬかもしれない奴と結婚したら後で悲しむのは彼女の方だろう。
故に俺はこの世界での婚姻は考えないようにしている。
取り敢えず全ての戦争を終えてからでないとそう言う気分にはならないだろうな。
全ての戦争を終える。
つまり魔王の討伐だ。
そんなの何年先になるかも分からない。
それなら着いていくと言われたが、彼女にはこの場所で守るべき部下達がいると言い一蹴した。
優男の命で俺に着いてきてくれているシュナや自分の意思でもう護るものも何もないラカラは別だがな。
優樹は...、幼馴染だからか考えた事ないな。
まっ、あいつは大丈夫だろう。
あっけらかんとしてるしな。
優樹に対する信頼度だけはMAXな俺の発言なのだった。
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