第82話 呪い解除

「さあもう少しですよ...」


 少し時間がかかったがようやく神父の呪い薬でダウンしていた優樹の息が安定してきた。


「ここまでくれば命に別状はないでしょう」


「優男。助かった」


「力になれて光栄です」


 彼はにこりと笑いながら俺の方を見てくる。


 全員が安心しきっていると...。


「まだだ! まだ終わってない!!!」


 神父のクソ野郎が立ち上がり俺たちに武器を向ける。


「これが最大出力の【奮起】状態で放つ【ジャッジメント】だ!」


 俺を狙って星の粒子が放たれる!


(強化された状態であの技を放ちやがった!)


 完全に無防備な背後から奴が最大威力の技を放ってきたので回避のしようがない。


 俺の頭の中に【死】の文字が浮かび上がる。


 しかし、それは俺に当たることはなかった。


 ドンッ...と俺を押した者がいたからだ。


「...貴方に死なれては小鳥遊様に合わせる顔がありませんからね」


 ニッコリと笑う優男の笑みに俺は唖然としていた。


 星の粒子が優男を包み込み焼き尽くす!


 最大出力の【ジャッジメント】は先程よりも数段威力があったのだ。


 優男のレベルでも耐えきれなほどの破壊力に俺は立ち尽くしていた。


「父様?」


 後に残る黒ゴケた遺体に擦り寄るシュナ。


「父様? 目を開けてください...」


 その様子を見ていた神父が舌打ちをしながら「外したか! だが次は当てる!」そう言いながら魔力回復薬と回復薬を飲んでいた。


 冷たくなって行く優男の体をゆすり続けるシュナの姿を見た俺の中にドス黒い気持ちが溢れ出る。


(俺のせいなのか? 俺がこの町に来たから優男は...、フォルトは死んだのか?)


 そう思うと俺は自分が許せなくなる。


 プチン...と俺の中で何かが切れる音がした。

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