第21話


『 コト 』


「 みーつけた! 」


見つかちゃった!?


「 今度は、引っ掻かきは無しね 」


また、無理矢理キスしようとしてるの?


わたしは慌てて机の下から飛び出した。


「 そ、そんなことを言われても、変なことしようとしたら、またキャピんってしちゃうから! 」


あれ?


何故か後ろ向きのままの椎名くん


彼の背中に向かい大声で叫んでしまった。


わたし・・じゃ・・ない?


「 黒木 ? 」 


「 は、はい… 」


「 ここで、何してんだよ 」


「 べ、べつに、け、決して、盗み聞きをする為にいた訳じゃなくて、わたしはただ、ここでお弁当を食べようとしていただけです 」


「 ふ〜ん・で?・・いつから? 」


「 あ!?えと、そ、それは、最初の中村さんが… あッ!… 」


口を両手で塞いでみたけれど既に遅しです。


「 聞いてたのか? 」


「 い、いぇ・・あ、で、でも予約が3か月待ちとか、先約があるからとか、そういった話はいっさいな〜にも聞いていませんので・・ハッ!?」


「 ふ〜ん・・いっさい・・何も? 」


もう、どんな言い訳もできません…


「 あ、あの、い、今のは嘘でした、じつは、全部聞いてしまってまして…ご、ごめんなさい! 先約の人との待ち合わせを邪魔してしまうので、わ、わたしはこれで失礼いたします 」


最低…


気まずくなって、その場から逃げるようにドアへ向かい走った。


「 待てよ! 」


「 先約の相手なら、もうここにいるよ 」


「 !?・・ 」


わたしが振り返ると、椎名くんはゆっくり近づいてきた。


わたしの前で立ち止まると、大切そうに抱き抱えていたタオルの中から、小さな子猫が

ぴょこにゃんと顔を出した。


椎名くんはわたしに身体を寄せて、子猫を目の前まで近づけてくれた。


「 こいつ、誰かみたいに気が強いから引っ掻かれないように気をつけろよ 」


だれか?とは?…


「 みぃちゃんはそんなことしない・・」


すると、子猫は乗り出してきてわたしのマスクにスリスリしてくれた。


「 マジかよ、俺の時の対応と全然違うし・・ 」


「 ミィ♪ 」

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