第14話


椎名くんのサポートの反動で、わたしが最初に入室すると、最終列に座っていた高沢さんに気づかれてしまったのです。


「 椎名くん!おはよう! 」


「 うっす! 」


「 どうしたの? 全身ずぶ濡れて 」


「 ちょっとな! 」


「 黒木さんと一緒にきたの? 」


「 まさか、偶然廊下でバッタリ・・ 」


「 ふーん・・ 」


「 あれ? 」


「 なに? 」


「 椎名くん ほっぺから血が出てる 」


椎名くんを見上げると、ペロン と舌を出しています。


反省の色無しです。


「 どうしたの? 」


「 転んだ 」


「 ほっぺからどうしたら転べるわけ!? 」


「 俺にしかできない特技 」

 

「 ぷッ! へんなの・・・それより・・ 」


「 ん? 」


「 それってなんの意味 ? 」


椎名くんの右手に拘束されたわたしの左手を凝視する高沢さん


「 無接点解消の儀式! 」


「 何それ? 」


「 じゃあ 黒木ッ! またな! 」


失敗、手を放す余裕なんて無かった。


椎名くんがあんなことをしたからです。


動揺が止みません。


『 はい!黒木さんに、椎名くん!早く席に着いて下さい!授業を始めます! 』


「 は、はい、すみません 」


彼の手を振りきり、何事も無かったかのようにいちばん前の席に着いた。


しかし


椎名くんの言った 『 またな 』の発言に対して、みんなの視線がわたしに集中してしまったようです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る