101号室 再開
次の日、
梅雨明けということもあり連日降り注いだ雨もようやくおさまり、
彼はカメラを持ちどこかへ出かけて行った。
その時の彼の表情は、まるで虫取りに出かける前の小学生のようなワクワク顔をしていた。
俺は久しぶりに人間化して彼について行く。
カメラを首にかけたまま、
トコトコと歩いていく彼は行く場所が決まっているようで、
やみくもにカメラを構えてシャッターを切るようなことはなかった。
5分ぐらい歩くとそこには公園があり、彼は迷わず公園に入っていった。
なるほど、確かに公園ならいい写真が撮れるかもしれない。
まぁ、彼が本当に撮りたい風景がここにあるかと言われたらそんなこと知らないが。
リンドウから歩いて5分の場所にあるこの公園の名前は
新緑というだけあって、木だけはやたらめったら生えているが、
無造作に芝生も伸びきっていて、空き地に近いような気がする。
それでも日当たりは良く、遊具もきちんと管理されているのか綺麗なため、
親子連れには人気があるようだ。
キャッキャッという声と共に何組かの親子が遊んでいる。
まだ遊具は濡れているような感じだったが、
ブランコや鉄棒をお母さんたちがタオルで拭いてから遊ばせていた。
やれやれ、子供が怪我しないように配慮するのは非常に骨が折れるな。
かといって、ベタベタな遊具で遊ばせて大怪我しては大変だし・・・。
最近の子達は怪我して学ぶということが少なそうだ。
そんなことを思いながら、
彼の方を見ると彼は木に向かってカメラを構えていた。
だが、
一向にシャッターを切る様子はなく、カメラを構える方向を変えるだけだった。
1枚くらい撮ってみればいいものを・・・。
しばらくそんな様子でカメラを構えたまま、
あーでもないこーでもないといった感じの彼に俺は痺れを切らし、
ついに
彼の前に姿を現すことにした。
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