第1話
「あれが勇者一味か……」
見渡す限り一面の高原。その小高い丘の上に、ハイドは一人佇んでいた。
その視線はここより遠方──真っ直ぐに続く平坦な道を並んで進む女子三人の姿に注がれており、時折「ふむふむ」と頷きを繰り返しながら、思考を働かせていた。
「どうやら、情報にあった通りのようだな。しかし本当に女三人だけで旅をしていたとは。それだけ腕に覚えがあるということか?」
これまでの戦闘記録を綴った報告書によると、何度も奇襲をかけては返り討ちにされているようだが、それほど屈強そうには見えない。どちらかと言うと華奢なくらいだ。
もっとも、あくまで遠目から見た印象なので実際のところはわからないが、しかしこれでも数々の修羅場をくぐり抜けて四天王にまで上り詰めたと自負している身──なので、まったくの見当外れということもないだろう。
「確か勇者以外は、それぞれ武道家と僧侶だったか。まあいかにもそういった服装はしているが、僧侶以外はただの仮装にしか見えんな……」
などと独り言を呟きながら、改めて勇者達の小さな姿を遠目から──正確には、人間の肉眼では輪郭程度しか捉えられないであろう距離から、魔族特有の視力の良さでまじまじと眺める。
まずはハイドから見て右端……確か武道家でファイという名の女から。
見た目は十七か十八と言ったところだろうか。赤髪のショートヘアで、いかにも活発そうな吊り目をしている。人間にしてはまあまあ整った顔立ちだろう。
服装は武道家らしく身軽な感じで、上はノースリーブのタートルネック。下は腰に上着のような布を巻き付けただけのショートパンツ姿。そして旅の荷物でも入っているのか、パンパンに膨らんだ大きめのリュックを苦もなく背負っていた。
次は左端の杖を持った長身の女……僧侶のアリア。
こっちは一番年長なのか、二十歳くらいに見える。しかも顔造形が非常に美しく、加えて服の上からでもわかるグラマーな体型をしていて、一層大人の色香を漂わせていた。
それでいて艶やかな長い金髪を優雅に靡かせ、その上清楚な白いローブを清楚に着こなしているせいもあってか、さながら女神のような神聖な雰囲気を感じさせるものがあった。まあファイ同様、人間には興味がないので、別にどうでもいいことではあるのだが。
そして最後は、真ん中の少女。
その名も、勇者ユーリ。
パッと見はちんちくりんと言った感じで、顔だけなら十三くらいにしか見えない幼い造りだが、身長から見て十五、六程度の年齢だろう。ただ良く言えばスレンダー、悪く言えば貧相(特に胸が)といった具合なので、やはり全体的に子供っぽく見える。
珍しいのが髪や瞳の色で、この辺りではめったに見かけない純粋な黒。そしてショートボブのさらさらな前髪を見たこともない黄色い花の形をしたヘアピンで止めていた。もしかすると彼女の故郷にしかない花なのかもしれない。
装備の方はと言うと、守備力よりも身軽さを優先してか、白い肩出しの上着に銀の胸当て──下は膝下丈のズボンにベルトで剣の入った鞘を留めただけの出で立ちだった。
しかし、なんと言うか、こうしてじっくり眺めてみても。
「やっぱ全然勇者っぽく見えんな。姿形から言って、奴らしか考えられないが……」
だが、本当にあんな奴らが魔族の襲撃を今まで退いてきたと言うのだろうか。
この間、魔王様と三下魔族の会話を聞いた限りではかなりの強運を持った連中らしいが、いくらなんでもそれだけで難を逃れてきたというのは出来過ぎな気がする。いっそ幻覚でも見ていたと言ってくれた方がまだ信憑性がありそうだ。
さて、そんな勇者達ではあるが、現在能天気に談笑しながら真っ直ぐこちらの方角へと近付きつつあった。
とは言え、未だ距離はあるし、なおかつハイドは丘の頂上にいるため発見される危険性はまだないが、このままここに留まっていれば話は別である。そろそろどう攻略するか決断しなければ。
「ま、とりあえずあいつらの実力を見ない限りはなんとも言えんな。となると……」
言いながら、ハイドはおもむろに着ている黒いローブの懐から、数粒の種を取り出した。
そしてその種を適当に振り撒き、続いて種を巻いた周辺に手のひらをかざして、呪文を唱え始めた。
するとハイドの呪文に呼応するように、種を巻いた地面から次々に魔法陣が浮かび上がり、煌々と輝きを放ち始めた。
やがて、魔法陣はさながら波立つようにうねり始め、その中から真っ黒い芋虫のようなものが──それも熊ほどの大きさもある不気味な生物が、地面から這い出るように下から上へと姿を現した。
魔法生物、人食いワーム。
その名の通り人間を主食とする魔物であり、とある魔族の研究者チームが魔法で作った、種を撒くだけで手軽に生成できる人造生物である。
ただ唯一難点なのが、人の形をしているだけでなんでも捕食してしまう悪癖があり、戦場に敵しかいない状況でしか使えない代物ではあるのだが、こういう場合ならば有効に発揮してくれることだろう。
「さて勇者ども。その力、存分に見させてもらうぞ」
☆
一方、その頃。
勇者達……もといユーリ達はと言うと、長い一本道を三人仲良く横に並んで談笑しながら、次の目的地を目指して歩いていた。
「そういえば、前の村を出てからずいぶん経つけど、この先の村まであとどれくらいで着くのかなー?」
真ん中にいる童顔の少女──ユーリのふと呟いた疑問に、その右隣にいる僧侶のアリアが「そうですわねえ」と懐から地図を取り出しつつ、
「たぶんこの調子ですと、おそらく明日の朝くらいになりますわね」
「そっかー。じゃあ途中どこかで野宿の準備をしなきゃいけないねー。あ、でもその前に昼食の方が先かな。朝からずっと歩き通しだから、さすがにお腹ペコペコだよ~」
「つってもさあ、どうせ保存食しかないじゃん? いい加減飽きてきたっていうか、そろそろ手作りの温かい料理を食べたい気分だぜ~」
そう嘆息混じりに不満を漏らしたのは、ユーリの左隣を歩く武道家のファイのものだ。
「そうは言ってもファイさん。わたくしたち、だれ一人として料理ができないじゃありませんの。わがままを言うものじゃありませんわ」
「わがままじゃなくて単なる願望だっつーの。アリアはいちいち言うことが細かいな~」
「んまっ。わたくしだって叶うならば温かい料理が食べたいですわよ。ただわたくしは純然に事実を述べただけであって──」
「まあまあ。ファイちゃんもアリアちゃんも気持ちはわかるけどさ、次の村に着くまでの辛抱だよ。それまで頑張ろう~!」
「はい! もちろんですわユーリさんっ」
「ほんと、アリアはユーリにだけは甘いよなあ……」
ユーリはのほほんと、アリアは嬉々として、そして残るファイは呆れ顔になりながら、果てしなく続く一本道をただひたすらに進む。
「でも確かに、だれか料理ができる人がいたらすごく助かるよね~。せめて私達でも簡単手軽に作れるものがあったらいいんだけど……」
「それはやめておこうぜユーリ。だってあたしら、目玉焼きすらまともに作れないじゃん。少し前にも黒焦げになった目玉焼きを作ったばかりだし。いや、あれはもはや目玉焼きっつーか炭って感じだったな」
「ああ、そんなこともありましたわねえ。それも確か四回目くらいの挑戦でしたわよね。どれも残念な結果に終わりましたけど……」
そう言って、揃って遠い目をユーリ達。
ちなみに、その元目玉焼きだったものは、捨てるにはもったないのでちゃんと三人で完食しました。とても苦かったです。
(こんなことなら、ちゃんとお母さんに料理を教わっておけばよかったなあ)
雲一つない晴天を仰ぎ見ながら、そんな後悔を胸中で漏らすユーリ。
とは言え、仕方がなかったのだ。まさか料理ができないせいでこんなにも不便になる日が来ようとは、それこそ微塵も思っていなかったのだから。
なぜなら──
(いきなりアニメやマンガでしか見たことのない世界に来ちゃったわけだし、こればっかりはどうしようもないよねー)
まあつまり、どういうことかと言うと──
ユーリはある日突然、それこそなんの事前準備もできず、日本という国からこの世界へとやって来た異世界人なのである。
いや、やって来たというのは少し語弊があるか。
なぜならユーリは、別に自分の意思でここに来たわけでないのだから。
ここへ来る前は確か近所のコンビニに行く途中だったのだが、突如として足元に出現した暗くて大きい穴に落とされてしまい、気付けばこんなファンタジー感溢れる世界に一人で来ていたのだ。最初はどれだけ戸惑ったか、言うまでもない。
(妖精の長老様は、おそらく事故かなにかで飛ばされてきたのだろうって話だけど、未だになにもわかっていないしなあ)
この異世界へ来たばかりの頃──というか、その直後の話ではあるのだが──穴の中へと落とされて、そのまま上空から深い森の中へとパラシュートもなく投げ出されたユーリは、そのままなす術もなく地面へと落下していったのだが、ちょうど落ちた先にスライムのようなぶよぶよした大きなものがいて、それが運良くクッションとなってくれたおかげで怪我もなく無事に生還したのだった。
で、話はそれだけに終わらず。
偶然にも、その場にいかにもメルヘン風な妖精さんも一緒に居合わせていて、よくよく話を聞いているとスライムに襲われている最中だったのだとか。
それがユーリの命を救ってくれたクッション、もといスライムだったのだが、どうやらそのスライムを落下の衝撃で倒してしまったみたいで、そのおかげで命拾いしたのだと言う。その後助けてくれたお礼にと、近くにある妖精の村へと案内してくれる流れとなった。
最初はユーリも意図して助けたわけではないので丁重に断ろうとしたのだが、相手がけっこう強情だったのと、右も左もわからない世界に突然やって来たばかりで色々と心細かったという事情もあって、結局厚意に甘えて妖精の村へと連れていってもらうことに。
そこで妖精達に手厚く歓迎してもらうばかりか、異世界からやって来たと話すユーリに親身に耳を傾けてくれた上、齢三百年だという最長老にも紹介してもらったのだが、残念ながら元の世界に帰る方法はなにもわからず、途方に暮れるしかなかった。
しかし幸いにも、妖精達はいくらでも村に居ていいと笑顔で言ってくれたおかげで、少なくとも寝床や食料に困ることはなかった。
だが、さすがに長々と居座るわけにもいかないという遠慮と、やはりすぐにでも元の世界に帰りたいという気持ちもあり、ユーリは早々に旅に出る決意をする。
そうして旅に出る話をした際、若い娘が一人で旅に出るのはなにかと大変だろうと、妖精達が旅に必要な荷物を用意してくれるだけでなく、とある特殊な力まで授けてもらい、互いに別れを惜しみながらも、元の世界へ帰る手立てを見つけるべく、ユーリは村を出たのであった。
(それからアリアちゃんと会って、ファイちゃんも一緒に旅をするようになって……色々あったけど、みんな優しくて良い人達ばかりだったなあ。みんなが助けてくれなかったら、もっと大変な目に遭っていたと思うし)
などと過去の思い出を反芻しながら、のほほんと頬を緩めるユーリ。
実際色んな人に助けてもらってきたユーリではあるが、今まで無事に旅ができたのは単に出会う人々に恵まれていただけでなくて、もっと別の──言うなれば奇跡的な強運のおかげでもあるのだが、当の本人はそれを知る由もない。
(そういえば、妖精さん達のアドバイスで異世界から来たって話はまだしてないけど、やっぱり信じてもらうのは難しいのかな? 異世界から人を召喚するような魔法は存在しないはずだから、正直に話したところで頭を疑われるだけだって言っていたし。でも、いつかちゃんと話せたらいいなあ。元の世界に帰る日が来た時に、ちゃんとお別れしておきたいし。実際その日が来たら寂しくて泣いちゃうんだろうけど)
「ところでさー」
と。
ユーリが感傷に浸っていた間に、未だアリアと料理の件で話し込んでいたファイが、ふとなにかを思い付いたような口調で話題を変えてきた。
「野宿すんのはいいけど、どこで準備するつもりなんだ? こんな見晴らしの広過ぎるところだと、魔物が来た時にやばいんじゃね? どうぞ好きに寝込みを襲ってくださいって言ってるようなもんだぜ?」
「そうは言われましても、今のところ木の一本も見えてきませんし……。やはり交代で見張りをすることになるのでは? ちょっと面倒ではありますけれど」
「だいじょーぶだいじょーぶ。たぶんその内良い場所が見つかるよー」
「相変わらずお気楽だなあユーリは。ま、あたしも強い魔物と戦えるなら、全然文句はないけどなー」
「あなたも人のこと言えませんわよ……。どんだけバトルジャンキーなんですのよ……」
などと三人で雑談していた、その瞬間。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴっ──
という地響きのような音が、突如としてユーリ達のいる地点の遥か前方から響いてきた。
「……な、なんですの? このとてつもない音は……」
「まるで、なにかの大群がこっちに押し寄せてきているような音だよね。まだなにも見えてこないけど……」
「しかもこれ、野生の牛や馬が走っているような音じゃないぜ? なんか地面を無理やり引きずっているような、そんなおかしな感じだな」
「……ひょっとして、魔物とか?」
ユーリがなにげなく漏らしたその一言に、アリアもファイもすぐさま警戒態勢に入った。
「どうしますのユーリさん。逃げるなら今だと思いますが……」
「う~ん。今逃げるのは逆に危険なんじゃないかな? どこにも隠れる場所なんてないし、けっこうすごいスピードで来ているような音だから、その内追いつかれちゃうかも」
「つーことは、ここで迎え撃つっきゃないってわけだな! よーし、数も多そうだし、久々に腕がなるぜ~!」
「ファイさんったら、こんな時に不謹慎な……」
「まあまあアリアちゃん。却って頼もしいと思えば、気持ちも楽になれるよ~。あ、もちろんアリアちゃんも頼りにしてるよ?」
「お任せくださいユーリさん! ユーリさんの貞操は必ずわたくしがお守りしますわ!」
「守るもの違くね? いや、それでアリアに気合いが入るならいいんだけどさー」
非常時とは思えない緩いやり取りをしながらも、ユーリ達はいつでも機敏に動けるよう、臨戦態勢に入る。
そうして、しばらく魔物の姿が視認できるようになるまで待機していた時、それは轟音と共に姿を現した。
芋虫。
まさに芋虫としか形容できない、しかも普段見知っている芋虫とは明らかに大きさも口の形状も異なる生物が、大挙としてこちらの方へと迫ってきていた。
「ひぃぃ! き、気持ち悪い! 見ているだけで鳥肌が立ちますわっ!」
押し寄せる芋虫型の魔物達に、顔を真っ青にして悲鳴を上げるアリア。
しかし、こればかりはさすがに無理はないと思う。比較的虫が平気なユーリでも、あんなおぞましい姿の魔物が大群で来たら、普通にドン引きする。
「数は十匹ってところか。殴りがいがあるってもんだぜ」
一方ファイはと言うと、あんな光景を目の前にしておきながらウキウキとした表情で拳を構えていた。
(ファイちゃんは全然動じないなあ。まあ、その方がこっちも安心できるけど)
ファイからしてみたら、この程度大したことではないのだろう。
実際彼女はかなり強い方だし、今までずっとファイと一緒に戦ってきたユーリも、その実力を認めてはいるが、向こうは初めて相手にする魔物──下手に突っ込ませるのは得策ではない。
(それにアリアちゃんも少し腰が引けているしね。ここは私がちゃんとしないと!)
どこか危なっかしい様子を見せる二人に、自身の頬を叩いて気合いを入れるユーリ。
別にだれがリーダーというわけでもないのだが、実質今まで場をまとめてきたのは、他ならぬユーリだ。だからと言うわけでもないが、今回もやはりユーリがリーダー役を担った方がいいだろう。
それ以前に、アリアは少し慎重すぎる節がある上、ファイに至っては考えなしに暴れるところがあるし、ユーリ以外に適任がいないという事情もあったりするのだが。
「ファイちゃん、絶対一人だけで突っ込んじゃダメだよ? できるだけ私やアリアちゃんのそばであの子達を撃退してね。アリアちゃんは私達の後方で援護して。いざという時は一人で対処してもらうことになるかもしれないけど、大丈夫?」
「わ、わかりましたわ。ケガをされた時はいつでも呼んでくださいまし。すぐに駆け付けて治療いたしますわ!」
「えー? 勝手に動いちゃダメなのかよー? まあ、ユーリがそう言うなら素直に従うけどよー」
ユーリの指示に、アリアは強張った表情で力強く頷き、ファイはどこか不満顔ながらも言われた通りにその場に留まった。
そんな二人に「ありがとう」と笑顔で礼を述べつつ、ユーリも鞘からショートソードを抜いて前方の敵をじっくり見据える。
砂煙を巻き上げながら、こちらへと接近しつつある芋虫型の魔物達。
今のところ方向を変える気はないのか、真っ直ぐユーリ達に迫ろうとしているところを見ると、向こうもこっちを獲物と捉えたと判断してよさそうだ。
となれば、衝突は必然。
戦闘は、免れない。
(ま、最初からそのつもりだけどねー)
そんな風に苦笑をこぼしつつ、芋虫のごとく気色の悪い上下運動を繰り返しながら猛然と迫る魔物達との距離を目測で見定めていく。
その距離、約五百メートル。時間にして、接触するのに五十秒と言ったところか。
確か百メートル走の日本記録が九秒台。パッと見、魔物達はそれよりも遅く感じられるが、しかし、こうして眺めているだけでもかなりの迫力だ。
しかもそれが十匹もいるのだから、そのおぞましさたるや、筆舌に尽くしがたいものがあった。
(これは、すぐに迎撃態勢に入っておいて正解だったかも。もしもあの時逃げていたら、その内追い付かれて無駄に体力を削っていたところだったよ~。ファインプレー、私)
なんて自分を褒めている場合ではなかった。今の内にみんなを鼓舞しておかなければ。
「もうじき来るよ! ファイちゃんもアリアちゃんも、準備はいい!?」
「おうよ! いつでもOKだぜ!」
「はい! 援護はお任せください!」
良い返事だ。この分だと心配はなさそうである。
そうして、ちょうど今にも魔物達が飛びかからんとした位置で──
「いくよ! 突撃ぃ!!」
ユーリのその大声に、待ってましたと言わんばかりにファイが前に躍り出た。
「しゃあ! まずは一匹目ぇぇぇ!」
宣言通り、一番前に出ていた魔物の横っ腹目掛けて、ファイが凄まじい飛び蹴りを繰り出した。
「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアっ!?」
人を丸のみできそうなほどの円形の口から、魔物の絶叫が轟く。
その後ファイに蹴飛ばされた魔物はそのまま真横へと転がり、数秒だけ痙攣したあと微動だにしなくなった。
「はあっ!」
見事先手を打ってくれたファイに、ユーリも負けじとそばにいた魔物を剣で薙ぎ払う。
が、ショートソードでは浅いのか、傷口こそ付けられたものの、決定打にはならなかったようで、すぐに距離を取られてしまった。
ならば……!
「変換! グレートソードっ!」
ユーリのその言葉に呼応するように、手に持っていたショートソードがみるみるうちに特大な剣へと変容していった。
その大きさ、刀身だけでもユーリの身長ほどもあり、とてもじゃないが普通の女性が扱える代物じゃなかった。
「──そりゃあっ!」
それをユーリは悠々と真横に振りかぶり、すぐ眼前まで迫っていた別の魔物を二匹まとめて斬り裂いた。
黒い体液をまき散らして、どさりと倒れ伏せる二匹の魔物。
ユーリはそのまま攻撃の手を休まず、少し前に仕留め損ねた魔物に向かって大剣を振り下ろした。
「キシャアアっ!?」
今度こそ致命傷を与えられた魔物は、激痛に悶えるように地面をのた打ち回ったあと、最後に少しだけ苦鳴をこぼしたあとにパタリと息絶えた。
これぞ妖精達から授かりし不思議な力──『武器変換能力』だ。
ここで具体的に説明すると、自分が見聞きした武器ならどんな物でも顕現できる上、何度でも際限なく使用できる、非常に便利な異能力なのである。
もっとも、発動するにはなにかしら代価となる武器を手にしている必要があるし、銃や爆弾といった複雑な構造をしている物までは変換できないという難点もあるのだが。
まあ、仮に銃火器類が顕現できたとしても使い方がわからないし、こうして様々な武器が使えるだけでもユーリにしてみれば十分に御の字だ。
(妖精さんに感謝するのはもちろんだけど、小さい頃から私に色んな武術を教えてくれたおじいちゃんやお父さんにも感謝しなきゃね)
過去の稽古の日々を反芻して懐かしみつつ、ユーリは真横から飛びかかってきた魔物を下から振り上げて一閃する。
こんな状況の最中で物思いに耽られるほど余裕でいられるのは、ひとえにユーリの身体能力がずば抜けているからだ。
それと言うのも、ユーリの家は先祖代々武術を嗜む家系で、それも剣術や槍術、果ては弓道にまで手に付ける、とんでもない家系なのである。
そんな家なので、当然ユーリも幼き頃から祖父や父といった師から武術を学んでいたのだが、女児ながら才能ある動きを見せたことと、ユーリ自身運動するのが元から好きだったため、めきめきと上達していった。
その上、ユーリは幼少期からとんでもない怪力の持ち主だったため、グレートソードのような重たい武器でさえ自在に扱えるほどの才覚を持っていた。
もしもこれが平均的な女子の身体能力で、なおかつ武術なんてなにも習っていない状態だったら、きっと今のように魔物と戦うことなんて到底できなかっただろう。
(これもみんなのおかげだよね~。妖精さんにもらったこの能力も私にピッタリだし、ほんと、みんな良い人達ばかりで良かった~)
自分に訪れた様々な幸運を、すべて周りの人達のおかげであると解釈するユーリ。
妖精達と出会ったばかりの頃もそうであるように、本当に周りの者が善良であっただけで無事に生きていられるほど、この世界は甘くない。ただ単純に運が良かっただけだ。
なのに全然そのことに気付く素振りもないのは、この少女が鈍感というか、ひとえにおバカさんであるからに他ならない。
まあ、それとは別に、極度のお人好しという要因も多いにあったりするのだが。
さて話は今の戦況に戻るが、これでユーリは通算三匹もの魔物を倒したことになる。
最初の一匹はファイが倒してくれたので、残りはあと六匹ということになるが──
「おらおらどうした! さっきから全然歯応えがねぇぞおおおっ!」
続々と襲いかかってくる魔物達を、しなやかな動きで次々と蹴散らしていくファイ。
その動きはさながら舞でも踊っているかのようで、一切の躊躇もなければ無駄もない。
掌底や回し蹴りといった一つ一つの動作が実に洗練されていて、武術を習っているユーリから見ても、思わず惚れ惚れとしてしまうほどだ。
それでいて荷物を背負ったままでああも身軽に戦えているのだから、もはや感嘆の息しかこぼれない。
(やっぱりすごいなあファイちゃんは。私も空手は習っていたけど、徒手空拳じゃ絶対ファイちゃんには敵わないなー)
聞いた話だと、ユーリと出会う前はずっと修行の旅に出ていたらしいが、これだけ強いということは、よほど修練を積んでここまで至ったのは想像に難くない。
いつもはバトル好きで、食にうるさいところのあるファイではあるけれど、こういった部分は素直に尊敬してしまう。
そんなファイの活躍もあって、魔物も残り二匹となった。
これならば、特に被害もなく無事に終われそうだ。
などと、ついうっかり戦闘中に気を緩めてしまった、その時だった。
「キシャアアアアアアっ!」
「──っ!?」
背後──それも頭上から響いてきた魔物の叫声に、ハッと弾かれたように体を反転させるユーリ。
そこには今にもユーリを襲わんと飛びかかろうとしている魔物がおり、それも数秒としない内にあの大きな口で食われてしまいそうなほどの距離まで肉薄されていた。
とっさに地に下ろしていた大剣をすぐさま振り上げるユーリではあるが、しかし反応が遅れたせいもあって、防げそうにない。
これが最初に手にしていたショートソードならまだ対応できたかもしれないが、グレートソードのような重量のある剣では、いかな怪力持ちであるユーリと言えど、空気抵抗も邪魔をして間に合いそうになかった。
「主よ! どうか彼の者に聖なる守りの壁を……!」
と。
命の危険を感じた瞬間、後ろから聞こえてきたアリアの声と共に、突如としてユーリの前に神々しく輝く光の壁が瞬く間に出現した。
「キシャア!?」
突然現れた光の壁に、そのままの勢いで衝突する魔物。まるで虫篭にへばり付く芋虫のような有り様だ。
もちろん、この好機を逃すユーリではない。光の壁が忽然と消えて、魔物が地面へと落下したその瞬間と同時に、ユーリは一気に間合いを詰めて大剣を振り下ろした。
「てぇいっ!」
「キシャアアアアアア!?」
真っ二つに切り裂かれ、分断された魔物の躰が宙に舞う。
そのすぐあと、二つに分かれた魔物の躰は地面へと落ち、おびただしい体液を流しながら絶命した。
「ありがとうアリアちゃん! 助かっちゃった!」
後方にいるアリアに向けて、親指を立てて礼を述べるユーリ。
そんなユーリに、
「いえいえ! これくらいお安いご用ですわ!」
と、アリアは心底嬉しそうな笑顔を浮かべて返事をした。
先ほどの光の壁はアリアの技──正確には法術を使って顕現させたものだ。
法術。
それは神への祈り──つまり信仰心によって発動する術のことである。
以前アリアから聞いた話だと、法力という源を媒体に、信仰する神から力を借りることによって起こせる奇跡を、一般的に法術と言うのだとか。
などと説明を受けたものの、正直な話、よくわからなかった。
なんせこういった不思議なものとは無縁の現代日本でずっと過ごしていたのだ──それこそマンガやアニメでしか見たことのないものを実演を交えて解説されたところで、理解できるはずもなかった。
ちなみにこの法術、どうやらよほど強い信仰心と日々の鍛練を積まないと扱えないらしく、実際使い方を説明されてもちんぷんかんぷんだった。
神への敬虔とかすべての創造は神から始まったとかスピリチュアルなことを言われても、典型的な日本人であるユーリには言っている意味すらわからなかった。
まあそれはファイも同じだったようで、アリアのありがた~い話を聞いても「なにそれ食えんの?」と歯牙にもかけていなかったが。
ともあれ、これで魔物も残すところ一匹だけとなった。
「ってあれ? その残り一匹は?」
先ほどまで視界にいたはずの最後の一匹がいなくなり、きょろきょろと周囲を見渡すユーリ。
「おーいユーリ~。それならあたしが片付けておいたぜ~」
と、いつの間にやら近くまで来ていたファイが、最後の一匹らしき魔物の尾を引きずりながら、悠々とユーリの前までやって来た。
「よいせっと! しかしこいつら、ほんと見掛け倒しだったなあ。せめてもう十匹くらいいたら、ちっとは楽しめたかもしれないのに~」
「やめてくださいまし! さっきのでも十分気色悪かったのに、あんな巨大な芋虫みたいな生物がもっといるところなんて、想像すらしたくありませんわ!」
軽々と魔物を放り捨てながら残念そうに言うファイに、アリアが心底嫌そうな顔で身震いした。よほど嫌なのか、顔色すら青ざめていた。
「それにしてもこの魔物、どこから来たんだろうね。初めて見る魔物だったけど、集団で来たわりにはあんまり統率が取れていなかったし。なにがしたかったのかもわからなかったし」
「言われてもみればそうですわねえ。あからさまにわたくし達を襲う気満々ではありましたけれど、人間や他の動物を狙っていたのなら、単独で行動した方が相手にも気付かれにくくてやりやすかったでしょうに」
「そこまで知能が高くないんじゃね? それか基本的には集団で死肉を漁るけど、たまに生きている奴を襲う習性とかさ」
「なんだかハイエナみたいだねえ」
グレートソードを元サイズの剣に戻して鞘に収めつつ、思ったことをそのまま口にするするユーリ。
まあハイエナと言うより、蛆虫の方が見た目は近いかもしれないけど。
「で、こいつらどうすんだ? こんなの置いたままにしておいたら、馬車が来た時とか邪魔になっちゃうんじゃね?」
「確かに、ファイさんの仰る通りですわね。もっとも、これだけの死骸の山を通り抜けるだけの度胸があったらの話ではありますが」
「あ、そっかー。このままだとみんなが通る時にびっくりさせちゃうかもね。じゃあファイちゃん、私と一緒に運ぶの手伝ってくれる? アリアちゃんはもしも馬車が来た時のために迂回してもらえるよう頼んでもらっていいかな?」
「わ、わかりましたわ」
「しょうがねぇなあ。あーあ、せめてこれが食料になればなあ。その場であたしが食べて全部平らげるんだけどなあ」
「ご冗談でしょう!? これを食すとかゲテモノ好きにもほどがありますわよ!」
「別にゲテモノが好きってわけじゃねぇよ。食べられる物ならなんだっていいってだけ。つーか、だったらアリアも手伝ってくれよなー。運ぶの面倒なんだからさー」
「い、嫌ですわよ! 見ているだけでも鳥肌が立ちますのに!」
「ファイちゃん、無理強いはダメだよー。ほらほら、早くどかそう~」
と。
それぞれ分担して作業を始めようとした、その直後、
「うああああああああああああああっ!?」
突然響いてきた悲鳴に、ユーリ達は一斉に作業の手を止めて視線を交錯させた。
「…………今のって、間違いなく人の悲鳴だったよね?」
「それも、この芋虫型の魔物が来た方角からでしたわよね? ということは……」
「だれかが芋虫野郎に襲われているって考えるのが自然だよな。どうすんだ、ユーリ?」
「もちろん、今すぐ助けに行くよっ!」
言うが早いか、だれよりも一目散に駆け出して、悲鳴が聞こえてきた方へと急ぐユーリ。
そんなユーリの後ろ姿を追う形で、ファイとアリアも全力で疾走する。
「見えた! あそこ! 男の人がいる!」
ユーリが指差したその先──道の真ん中にいる白髪の少年が、背後から怒涛の勢いで迫る芋虫型の魔物から必死になって逃走していた。
どうやら今回の魔物は一匹だけのようだが、少年に戦う意思はないのか、立ち向かおうとする素振りは一切見られない。よく見ると武器も所持していないようだし、どこかの行商人が荷物を置いてここまで逃げてきたのだろうか?
しかも難点を付け加えるならあの少年、足が少し遅い。あれではユーリ達が辿り着く前に食われてしまいそうだ。
早くなんとかせねば。できれば今すぐ敵を倒せる方法で。
(だったら……!)
「──変換! 長槍!」
素早く剣を抜いて長槍へと変化させたあと、それを魔物がいる地点へと狙いを定めつつ、手ぶれを起こさないよう徐々にスピードを緩める。
本当は弓矢の方がよかったのかもしれないが、弓道はあまり得意ではなかったし、なにより威力が心許なかったので、一発で仕留められそうな長槍を選んだのだ。
槍と言っても、なにも無策に突っ込むわけではない。それでは敵を仕留める前に少年の方が先にやられてしまう。
そこでユーリが考えた打開策。それは──
「いっけええええええええっ!」
長距離からの槍投げ、である。
槍投げ自体は、武術の一環として祖父から習わされていたが、実戦で使うのはこれが初めてだった。
しかも今回は動く目標の上、すぐそばに人がいる状況──いくら楽観思考であるユーリと言えど、さすがに緊張を禁じ得ない。
けど自信はあったし、なにより躊躇している場合ではなかった。
これがベストの答えだと思ったし、これなら確実にあの少年を助けられるとも判断した。
だから、ユーリは迷いなく槍を投擲した。
絶対に少年に当たらないよう、腕や手に全神経を集中させて。
そうして、勢いよく宙へと飛翔した長槍は、やがてゆっくり綺麗な放物線を描いて地面へと向かい──
「キシャアアアアアアアアアアっ!?」
見事、走行する魔物の胴体を貫いた。
「ナイス、ユーリ! あとはあたしに任せとけ!」
「うん! お願いファイちゃん!」
後ろから猛烈な勢いで追い抜いていったファイに、ユーリは笑顔で見送る。
「これで本当のラストだあああああっ!」
槍に刺されて身動きができすに悶えるだけの魔物に向かって、空高く舞い上がるファイ。
そして魔物の頭部目掛けて、ファイは渾身の踵落としを喰らわせた。
この強烈な踵落としに、見るも無惨に頭部を粉砕された魔物は、苦鳴すら上げられずに大量の血飛沫を周囲に散らして息絶えた。
「そこの君! 大丈夫だった!?」
魔物が完全に動かなくなったのを見届けてから、慌てて白髪の少年の元へと走り寄るユーリ。
当の少年はと言うと、よっぽど切迫していたのだろう──魔物が倒された瞬間と同時に腰を抜かしたあと、ほっと安堵の溜め息を吐いてユーリを見上げた。
「は、はい。おかげで助かりました……」
こうして間近で見ると、ユーリとさほど歳が変わらない感じの少年だった。
なかなか端正な顔立ちで体型もスマートだが、先ほどまで魔物に追われていたせいもあってか、どことなく頼りないという雰囲気が際立つ。
その頼りなさを強調させているのが、少年の身なりだ。
なにかしら魔法効果のある物かもしれないが、足首まである長い紺色のローブを羽織っているだけで、武器もなければ身を守れそうな物すら所持していない。まるでちょっと近所まで買い物に来ましたと言わんばかりの軽装だった。
先ほどまで必死に逃げていたところを見るに、ファイのように素手でも戦える体術を身に付けているわけでもなさそうだし、いつどこで魔物が襲ってくるとも限らないこのような場所でその身なりは、さすがにちょっと不用心ではないだろうか。
「はあはあ……。や、やっと追い付きましたわ……」
と、ユーリから遅れてやって来たアリアが、息を切らしながら少年の前に立った。
「それで、おケガなどは大丈夫ですの? もしよろしければ、わたくしの法術で治癒して差し上げますが……」
「あ、いえ。幸いにも無傷でしたから」
アリアの問いかけに、苦笑しながらゆっくり立ち上がる少年。
どうやらその言葉に嘘はないようで、まだ恐怖が残っているせいか顔色は優れないが、体調は問題なさそうだった。
「しっかしお前、本当に危ないところだったなー。あたしらが偶然通りかからなかったら、今ごろ魔物に食われてたぞ」
「あ、それは私も思った。どうしてこんなところに一人でいたの? それにずいぶんと軽装みたいだけど……」
ファイの言葉に、ユーリも同調して訊ねる。
「ああ。実は僕、魔法の修行で各地を旅しておりまして。ここへもこの先にある町を目指して歩いていたのですが、途中で突然そこで息絶えている魔物に襲われまして……」
「あら、魔法使いの方なんですの? それなら魔法で対処できたのでは?」
「本当に突然だったもので、魔法を使う余裕すらなかったんですよ。僧侶であるあなたなら理解してもらえると思うのですが、法術も魔法も呪文の詠唱が必要となりますから」
「……なるほど。納得ですわ」
少年の返答に同意して頷くアリア。
そういえば、前にアリアが言っていたことをふと思い出した。
魔法使いも僧侶も基本的に後方支援でこそ力を発揮するタイプであり、接近戦は苦手な場合がほとんどであると。
「それに、最初はもっとたくさんの魔物がいたんですよ。その時は魔物の注意を逸らしてくれる道具を使ったので大部分はどこかへと去ってくれたのですが、なぜかその内の一匹だけ残ってしまうわ、結局持っていた荷物をすべて失ってしまうことになるわで、散々な目に遭いましたよ……」
トホホと少年は肩を落として、見るからに悲壮な顔で重い嘆息を吐いた。
「そっかー。それは災難だったねー。もう少し早く私達と会っていたら、なんとかなっていたかもしれないけど……」
「いえいえ。こうして命を助けてもらえただけでも感謝ですよ。本当に危ないところを助けてくださって、ありがとうございました」
深々と頭を下げる少年に、ユーリも「当然のことをしたまでだよー」と笑顔で応えた。
「あ、そうだ。この先の村なら私達もちょうど行くところだったし、よかったら一緒にどうかな? その方が安全だと思うんだけど」
「お、それは良い案だな。いざとなればあたしらで守ってやれるし」
「困っている人をこのまま放っておくわけにもいきませんしね」
三人の申し出に、少年は見るからに驚いたような顔で、
「えっ? い、いいんですかっ? こんな急に同行させてもらって……」
「全然問題ないよー。どのみち目的地は同じなんだし、それにどうせなら三人より四人で行った方が楽しそうだもん」
「そ、それは僕としても助かります! ではお言葉に甘えさえてもらいます!」
「うん。これからよろしくねー」
とそこで、少年はふとなにかに気付いたように「あ」と声を漏らしたあと、不意に両手を叩いてこう続けた。
「そういえば、まだちゃんと名乗っていませんでしたね。僕の名はハイド。魔法使いのハイドです。以後お見知りおきを」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます