第2話 測定不能(物理)

 「おいおいおいおい……! なんだよこれぇ! ありえねえだろ! これ、お前がやったのか?」


 俺はただただ唖然としていると、目の前の光景を偶然目撃した人間がいたのだろうか。とにかく驚いた表情をしながら、尻餅を付く俺に近づいてきた。


「え……? いや、わかんない……」


「ったくびっくりしたぜぇ……いきなりとんでもねえ暴風が吹いたと思ったら……地平線の向こうまで地面が抉れらぁ……。

 これがお前の仕業じゃねえってんなら、どこの誰がやったんだろうなぁ?」


「さ、さぁ……?」


 まさか。俺がこんな力を持っているだって? んな馬鹿な。例え本当だとしても、馬鹿げた力だ。

 きっと、どこかの誰かが俺の叫び声を聞いて、通りすがりで助けてくれたのだろう。そうに違いない。


「っと、いつまでそこで尻餅付いてんだ? その身なりからしたら……どうせ迷い人だろお前」


「迷い人?」


「おうよ。この決まって現れる身元不明の者って意味だ。

 今お前がいる森は迷い人の森つってな、異世界転生ひゃっほーって意味不明な言葉を発する若者や、いつまでも赤ん坊みたいな泣き喚くおじさんとか。

 まぁ、色々とやべーやつが出てくるんだ。そして、そいつらの唯一の共通点は……服装だ」


「服……?」


「お前のその服……なんて名前だ?」


「……制服じゃないのか?」


「制服ね……そう。その制服。見たことが無いいどころか、存在しない服なんだよ。外国にも何処にもな。ま、そんなことはどうでも良いだろ。

 お前、行く宛はあんのか?」


「いや、ないかな……?」


「よっしゃ。なら近くの町まで案内してやるよ。迷い人が一番最初に向かうのは冒険者ギルドって決まってるからな!」


「そ、そうなのか」


 俺は、その男の話に流されるまま、訳も分からずついていくことにした。

 冒険者ギルドとはなんだろうか。俺と同じような"迷い人"は必ず行く場所と言っていたが、案内所みたいな場所なのだろうか?

 確かに本当に迷子なのなら、そこにいかなければいけないだろう。


 そう俺は男について行くと、森の暗闇とは大違いなほどに活気の溢れた町についた。

 店らしき家から呼び込みをする者、人混みにぶつかりながらも走り回る子供、雑談をしながら町の中を歩く多くの人々。


「よし、ここが冒険者ギルドだ!」


 冒険者ギルドに着いたらしい。

 それは二階建ての大きな建物で、剣が二本クロスした紋章の看板が立てかけられていた。その紋章の下に何か記号のような文字のような物が見えるが……。この冒険者ギルドの名前でも書かれているのだろうか。

 全く読めなかった。


「さぁさぁ、冒険者登録登録ぅ! 姉さん! この人の冒険者登録をお願い!」


「はい。畏まりました。登録料、銀貨二枚。丁度頂きますね。えっと、そちらの方の名前は?」


 そこにはとても綺麗な女性が受付カウンターにいた。名前を聞かれたので、俺は正直に答えた。


「最上稟獰です」


「モガミ・リンドウ? はい。畏まりました。では……冒険者登録する前に魔力値を測らせて下さい。

 こちらは登録者が戦闘に適しているか、適していなかったら、冒険者ギルドを通して別の仕事を紹介しますので。

 こちらの水晶に手を置いて下さい」


「はい」


 女性から青色透明で光沢のあるまん丸の水晶を渡される。

 魔力値測定。恐らくこれで俺の人生は左右するのだろう。まぁ、出来るなら安全な仕事を頼みたいがな。戦闘なんてする気は更々無い。

 俺は静かに水晶に手を置いた。


 すると、水晶はじんわりと光りだし、その光はだんだん強くなる。


「お、いい感じじゃん。どこまで上がるんだろうな?」


 水晶の光は続いて更に光を強め、目を細めないと眩しくていられない程に光が増す。


「わぁ……これはなかなか凄いですよ! 戦闘の適性はバッチリです!」


 だが、水晶の光はまだ収まることを知らなかった。次にはほぼ真っ白になるまで輝き、冒険者ギルドの建物内全体を明るく照らす程の光力を生み出す。


「やっべ! こんな光みたことねぇぞ!」


「これは最早ベテランクラス!!」


 水晶の光は次に点滅を始めた。バチバチと激しく点滅し、目が痛くなるほどに。


「これはこれは、英雄クラス!!?」


「すげぇなモガミ! やべぇな!!」


 だがまだ治らない。それどころか遂には水晶に急速にヒビが入る。

 ピシピシピシッ! 何か不味いような気がする。


「駄目ッ! 手を離して!」


「え?」


 水晶のヒビはより細かく出来るようになり、耳をつんざく高音が鳴り始めたおかげで、受付の女性が何か言ったような気がしたが、俺には全く聞こえていなかった。


「おいおいやべぇぞ!! みんな避難しろおおぉ!!」


「なんだって? なんか言ったか?」


 そして次の瞬間だった。俺の視界は一瞬真っ白に埋め尽くされると、凄まじい爆音と共に爆風が俺の身体を吹きさらし、俺はただ困惑したまま、水晶に手をふれながら棒立ちしていた。


「何が起きてるんだあああああ!」


 そうして視界が開けると。そこには

 確か俺は冒険者ギルドとかいう建物にいた筈だ。

 だが建物は完全に消滅し、俺は謎の途轍もなく大きなクレーターのど真ん中で立っていた。

 一体、何が起きたというんだ……。

 

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臨界突破超越者の無自覚異世界無双譚 Leiren Storathijs @LeirenStorathijs

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