臨界突破超越者の無自覚異世界無双譚
Leiren Storathijs
第1話 無自覚異世界無双
私は誰? 此処はどこ? ……。
え、マジでここどこ!?
俺はいつの間に、緑の木々が深く鬱蒼と生えた暗い森のど真ん中にいた。
四方八方見渡しても、獣道らしきものは見つからず、出口なんて見つからないんじゃないかと思うほどの真っ暗さ。
そして自分は誰なのか。どうにか頭から捻り出そうと考えるが、まるで厳重にロックが掛けられているかのように、記憶という過去を思い出すことを遮られ、全く思い出すことが出来ない。
なんてそう頭をしばらく抱えていると、たった一つだけロックが外れ、自分の名前だけ思い出すことが出来た。
……。まぁ、それはいいとして。ここが森だって分かっているなら早く出口を探さないといけないよね。
と言っても当然出口は分からないどころか見えない。まぁ、こういう森なら真っ直ぐ進めば何とかなるか。
そう俺は森から出るために歩を進めた。
森は本当に暗く、それとも今は夜なのか。上から太陽らしき光は一切入ってこなく、足元も暗闇が続く。
そこから分かるのはただならぬ不安。早く森から出たいのは山々だが、どうも一寸先さえも闇なのは、恐怖と呼ぶには意味の違う不安が押し寄せてくる。
「あー早く、外に……誰か人でもいいから……」
声は弱く細くなり、こんな暗闇で叫んでもきっと届きはしないだろう。若しくは危険な目に遭うかもしれない。
このまま俺は森の中で遭難して餓死でもするのだろうか。それだけは嫌だなぁ……。
と、次の時に俺は足を止める。
「グルルル……」
聞けば分かる。獣の唸り声だ。
あぁ、ついに出会ってしまった。暗闇で方向感覚も失い掛け、精神もすり減っていると言うのに、こんな時に獣に遭ってしまうのは、不幸中の不幸としか言いようが無い。
獣に食われて死ぬのは、遭難して餓死するより、辛いだろう。
今すぐにでも逃げ出したい。でも、逃げた先が獣のいる場所だったら?
獣と面と向かって戦うべきだろうか? でも、そんなので本当に逃れられるだろうか?
いくら改善策とも言えない策を思いついては考えても、それが最適解とは全くもって思えなかった。
どうしたら……どうしたら良いんだ……!
「ガルルル……グルアアア!!」
その時だった。俺は咄嗟に地面に落ちていた木の枝を拾い、死に物狂いで思いっきり木の枝を剣に見立てて振り下ろした。
「来るなあああああ!!」
次回が明滅する。一瞬耳がキーンと鳴れば、爆弾が爆発したかの様な轟音が鳴り響く。
次に、光。目を細めてしまうほどの強烈な太陽の光が俺の目に差し込む。
砂埃、さっきの轟音のせいだろうか。周囲は砂塵が舞い、視界が悪くなっていた。
「ごっほ! ごほ! げぇつほ! う、ゔぅん!! かーぺっ!! え……なんだこれ……」
喉が痛くなるほどの咳き込みと、痰を吐き、視界がだんだんと良くなれば、俺の目の前には太陽があり、暗闇が続いていた森は地面ごと大きく抉れ、その抉れた地面は、まるで隕石の通過点だと思えるほどの灼熱の炎が燃え上がり、ずーっと地平線のその先まで抉れた道が続いていた。
俺はその信じられない光景を見て、尻を付けば、そのまま動かずただ唖然とすることしか出来なかった……。
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