恐るべき交友関係+チャラ男




「んー! 食べたぁ。じゃあよっしー、アタシ行ってくるわ」

「あっ、はいよー」


 とあるお昼休み。お弁当を食べた不思木さんはそう言うと、颯爽と教室を後にする。


 なぜ、いちいち俺に報告していくのか。

 最初は突然の行動に、しどろもどろの返事しか出来なかった。

 しかし、それも今となっては冷静にそんな疑問さえ考える様な、余裕さえある。


 ただ、今もなおその理由についての答えは見つかっては居ない。


「さてと、俺も行くか」


 なんて事を少し考えながら、不思木さんを見送った後、俺も続くように席を立つ。

 そして廊下を歩き、たどり着く場所。そこは……


「はぁ! 今日もいい天気だなぁ」


 高校の屋上だ。


 入学してからその存在は知っていたものの、どうせカップルやらリア充の巣窟だろうと近付きはしてなかった。

 ただ、いつだったか上山と下山の3人で屋上の話になり、男3人で来たのが最初。


 するとどうだろう、見事に誰も居ない。

 もうしばらくすると、カップル来るんじゃね? なんて下山の卑しい発言の元、入口の上にある貯水タンクの横で待機していたものの……マジで誰も来なかった。


 悔しがる上山、下山だったけど……俺としては良い休憩場所じゃね? なんてウキウキした訳で……いつからか昼休みはここで過ごすのが日課になっていた。


「よいしょっと」


 貯水タンクの横。いつもの場所に横になると、俺は青空を仰ぎながら優雅な時間を過ごす。


 あぁ、心が洗われる。


「キャッキャッ」


 ……なんだろう。この楽しそうな声……って、あの人達か。

 ボッチ貴族の耳に聞こえる楽しそうな声。しかしながら、毎日の様にここに居れば、大体誰なのかは想像がついた。


 えっと……やっぱりな。

 体勢を変え、少し見下ろすと……校舎脇の辺りに見える人だかり。


 そう、明らかに陽キャ共の集まりで間違いない。

 ましてやその中心にいるのが、


「マジですかー?」


 不思木さんならなおの事。

 いや、今日もパリピってますなぁ。


 不思木さんにギャル3人衆。更には校則ギリギリの陽キャ達。

 ギャル達の師匠とも呼べそうな先輩方。


 そんな人達が決まって集まるのが、ここから見えるD棟の校舎脇だ。

 人気のないC棟の隣。しかも反対側には校庭しかないから、先生達の目にも届きにくい。ましてや、D棟そのものが部室やら部活関係の教室が多い。


 良くもまぁ、そんな絶好スポット見つけたもんだよ。いや? 代々陽キャ・ギャル達に伝わる伝説の場所というやつか。


 にしても、よくも毎日……


「はははー」

「マジウケるー」

「キャハハー」


 笑っていられるよなぁ。


 陽キャ達は、本当に何をする訳でもなくただ笑っているだけだ。

 そしてその容姿は、クラスを代表するだけあって……悔しいが全員が中の上以上。


 そんな中、話の中心に居る不思木さん。

 そのコミュ力は一体どこから溢れているのだろうか。


 ……あっ! あの人、3年の美女ランク上位の崎本先輩じゃね? 流石に綺麗だな。


 ……おっ! あいつは去年2年生ながらイケメンランキング2位になった城崎先輩か。遠目から見てもキラキラしてやがる。


 うおっ。あのバインバインしてるのは、学校一の巨乳の柳先輩か。歩くだけで、ここからでも揺れてるのが分かるんですけど!


 いやいや、マジでカースト上位のパーティー会場だな……って! あいつは……っ!


 去年のイケメンランキング1位。

 そしてそのイケメン爽やか雰囲気の裏は、とんでもないクズ野郎。

 京月じゃねぇか!


 あの野郎、懲りもせずに不思木さんに馴れ馴れしくしやがって。

 不思木さんもこの場でチクっちまえばいいのになぁ。いや、その場の空気を読んでるんだろうな。

 笑顔で対応してるわ。


 ……そう考えると、不思木さんも気を使っているって事なのかな。

 だとすると、あの笑顔……



 本当に本物か?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隣の席でにんまり笑う、不思議なギャルの不思木さん 北森青乃 @Kitamoriaono

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画