人は見た目によらず

 



「ねぇねぇ、よっしー。モンスターズコレクションって知ってる?」


 それはとある休み時間。

 毎度と言って良いほどの、唐突な始まりだった。


 ん? モンスターズコレクション? モンスターを捕まえて育てて進化させるゲームだろ。知ってるも何も、結構ブームになったゲームじゃないか。確か小5位かな? 初代モンスターズコレクションが発売されたのは。例に漏れず、俺もドハマリしたよ。


「モンスターズコレクション? 勿論知ってるよ。ブームにもなったし、めちゃハマった」

「おっ? やっぱりぃ?」


「それにしても、なんでいきなりそんな懐かしいゲームの話?」

「いやー、今朝ニュースで入ってたんだよねー。新作出るって。だから懐かしくなってさー? ゲーマーのよっしーなら確実に知ってると思って」


 ゲーマーって……完全に見た目と雰囲気で判断してない? いやまぁ……半分位は正解だけど、今思えばあの頃のモンコレ以上にハマったゲームって無かったよなぁ。


「ゲーマーでなくても知ってるだろ? あれ? そんな話するって事は、意外にも不思木さんもハマったたとか?」

「意外にもってなんだよー! 失礼なっ!」


「いやいや、ゲームにハマってる姿が想像できなくて……」

「何言ってんのさ―、散々隣でその姿見てるでしょー?」


 えっ? あっあぁ……確かにスマホゲー一緒にやってるな。って、そんなのスマホの画面に集中してて物理的に見えないわっ!


「そうだけど、プレイ中は画面に集中してるからな……」

「そっ、それは確かに。……じゃあ、今度から真正面向いてプレイしよっかー?」

「はっ、はい?」


 真正面って……いやいや、それはそれで色々と集中出来なくなりそうなんだけど……


「それとも、密着して隣同士の方が分かるかなぁー?」

「ふふふっ、普通で大丈夫ですっ!」

「冗談冗談ー。何本気にしてんのー? よっしー」


 ……くっ! 結局、いつも通り不思木さんペースじゃないかっ! ここ数日……というかほぼ毎日手のひらで踊らされっぱなしだぞ? 特に、あの信楽ラーメン食べに行ってから、その度合いが増えた気がする。


 なんというか、この辺りで俺もズバッと反撃したいもんだよ……まぁそれが出来てればこんな状態にはなって無いんだけどさ。


「そいえば、よっしー? モンスターズコレクションで最初にゲットしたモンスター誰だった?」

「最初?」


 これはそれこそ人による選出だよな。物語開始早々、3匹のモンスターから1体を選ぶ工程。選んだモンスターによって物語の難易度も変わってきたりしてさ? 進みやすさを取るか総合的な強さを取るか? それこそ、その人によるんだよな。


 けど、そんな中……俺は水タイプのミズッキー一択だった。最終的に結構強いし、見た目が綺麗に進化するんだよな。


「私はね? ミズッキー一択かな?」

「ミズッキー!?」


 なっ、なに? まさか3分の1が被るとは……


「うん。そだよー? よっしーは?」

「俺も……ミズッキーかな?」

「ウソ―? やっぱり強いし、最後のミラズケアが可愛いんだよねぇ」


 ……マジか? 理由まで一緒なんですけど?


「そっ、そうだよな? 序盤に苦労するけど、その分後半楽だし」

「分かる分かる―! 周りはキスモス推しが多かったけどねぇ」


「あぁ、俺の周りもそうだった」

「やっぱりぃ? なんか、よっしーとはゲームのウマが本当に合うかも」


 この見た目同士でウマが合うなんて、俺からは口が裂けても言えなよ。にしても、正直結構合うのは合う。好みというか、ジャンルも。


「あっ! ねぇ、よっしー? モンコレの新作って、スマホ版も配信されるんだよ? リリースされたらさ? 一緒にやろうよー」

「えっ? モンコレの最新作を?」

「うんうん! リメイクらしいしさ―? 良いでしょ良いでしょ?」


 うおっ。だからそのにんまり笑顔じゃない、普通な笑顔止めてちょうだい。マジで可愛く見えるんだからさ。


 大体卑怯だよな。その顔でお願いされて……


 断れる男子は居ないってのっ!!


「あっ……と……まぁ良いよ?」

「やったね? きまりぃー!」


 いやなんだろう。出来ればフェードアウトしたかったのに、日に日に不思木さんに引き込まれてる気がする。


 むしろ不思木さんは大丈夫なのか? 俺なんかとこんなに話して、ゲームなんかして……逆に心配なんですけど?


「じゃあ、バージョンも決めなきゃね? 私は……」


 でもまぁ……


「やっぱりー、クロニカルローズかなっ!」



 心底楽しそうで良かったよ。



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