第11話・特別合宿②

「よーし!Aチームの皆!今日からよろしくねっ!ケイトって呼んでね!」



「俺はクラリオだ。力には自信があるが、魔法支援は苦手だ、よろしく頼むぜっ!」



「グラン・アルデラです。よろしく」



「ナタリーよ、魔法支援なら少し得意だからよろしく頼みます。」




「エルダよ。よろしくねっ」



「ルミナです。皆さんよろしくお願いするわ」


自己紹介が終わった所で僕達は、ミッションに指定されている低レベルの魔物討伐へと向かっている。



「皆、この先におそらく、中級レベルの魔物が居ると思う、より一層集中力を高めておくんだ」



サテラは続く。


「グランくんの言う通り!皆気を引き締めようねっ!」



隊列になり一定の距離を空ける中、坂道に差し掛かる所で一人の少女がグランに近づく。


「まさか貴方が他人に注意するなんて、そんな一面もあるのね」



「僕をなんだと思ってるんだ、このチームのリーダーなら君が言えばいいだろう?」



「言われなくても、言おうとした所で君が割って入ってきただけよ。勘違いしないで」




「はいはい分かったよ」



下らないやり取りをしながらも、


グランは感じ取っていた。




やけに静か過ぎてる。想定されていた魔物の数の半分にもまだ満たないこの現状、他のチームに固まってるのか、あるいは別の…




「っ?!」



微かだがこちらに凄い勢いで何かが迫る気配を感じる。



隊列の前衛にはケイト、クラリオが居るが、二人は当然気づいてない。この殺気に、



瞬時に地面を蹴り、前衛まで駆け上がる。



途中、ルミナを抜かし、



「ちょっと貴方っ!いきなり何してっ」


今は彼女を気にしている暇はない




「ケイトッ!クラリオ!すぐに引き返すんだっ!」



「グランくん?」



二人は同時にこちらに振り返る。



「ダメだっ!振り返らずに走れ!!」


二人のすぐ後ろにまで影は迫っていた。



危ないっ!



もう一度地面を力強く蹴り、


状況を呑み込めない二人の頭上へと飛び込み剣を抜く。




同時に上級魔物、サーベルタイガー三匹は茂みから姿を見せる。





「あぁぁぁあっ!」






三体のサーベルタイガーは真っ二つになり



地面に転がる。



「「……っ」」


「グ、グランくぅぅんっ!」



ケイトに正面から抱きつかれ、


その場は騒然とする。



「ちょっとケイトさんっ、まだ近くに他の魔物が居るかもしれないからっ、、ねっ?」




「おいおい…死ぬかと思ったぜぇ、まじ助かったぜグラン」



「二人とも無事でよかったよ」




「まさに間一髪ね、貴方あんな後方からよく気配に気づいたわね、、」



ここでエルダの問に答えないのも少し怪しまれるだろう。



「索敵には少し自信があったから、間に合ってよかった」


ナタリーは震えながらも口にする。


「グランさん流石です。自分も索敵魔法を掛けていましたが全く気づきませんでした…」


「それにしてもよく切れてるぜ、、一太刀でこんな綺麗にすげぇな…」




「いや、それよりも、、このサーベルタイガーは確か…」



「ええ、貴方もやっぱり気づいてるのね」



「「ルミナ様っ?!」」



ケイトとナタリーは同時に反応する。



「何度も言うけれど、様は辞めなさい、私の家柄や立場は学園生活には関係ないわ」




「話の続きだけれど、そこのサーベルタイガーは中級レベルの魔物には登録されていないって事よ」



「ええ、ルミナさんの言う通り。あれは上級魔物に指定されているのに関わらず、三体も…」



どうやらエルダも気づいていたようだ。


そして



五人の視線全てが黒髪の少年へと向けられる。




「あぁ。そしてサーベルタイガーは元々集団行動をする事なんて滅多にないんだ。まるで何かから逃げている様にも見えた」




「とりあえずこの場は…」



「引き返すべきだ」

「進むべきよ」



「っ?!」



「「ルミナちゃん…?」」





「このまま進みべきと言ったのよ。他のチームに先を越されるわ。」



「君は正気なのか?!今は功績なんて物気にしてる所じゃない!たった今居ないはずの上級魔物に襲われたんだぞ?!」



「それも訓練よ…想定外に対応出来ない騎士なんて卒業後すぐに命を落とすことになるわ」




「今の僕達はそんな訓練や対応力を教えられていないんだ。異常自体が起きればすぐに宿舎に帰還し、状況を説明する約束だ。騎士の誇りがあるなら命令に従うべきだ」



彼女の軽蔑の眼差しは一段と鋭く、刺々しい。


「大体、君はさっきのサーベルタイガーの殺気でさえ反応出来なかった、これ以上先に行くのは無謀だ」




その場は静まり返る。時期王女は立ち尽くす。




少し言い過ぎた気はした。


どう訂正すればいいか、


思考を回転させようとした刹那




怒号が轟いた



グゴォッ!


ゴゴゴゴッ!




地面が激しく揺れる。






「おいおいっ!次はなんっ、だよ!」



「五人とも!体勢を建て直してすぐに山を降るんだっ!!急げ!!」




一斉に来た道を引き返す。が、




一人の少女は立ち止まる。




「ルミナッ!言い争ってる暇じゃない!

この振動はサーベルタイガーとはレベルが違うのは分かるはずだっ!」



彼女からの返答はない。



そして彼女は更に上へと駆け上がる。




「待つんだ!ルミナ!」





黙って先へと進む彼女の後を追う。




そして少年は同時に感じ取る。




サーベルタイガーの比にならない何かの気配を




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