第5話・目的

学園理事長室


北の塔の最上階に位置するその部屋から

少し枯れ目の笑い声が響く。


「ワッハッハッ!そうかそうか!初日の朝っぱらからルミナと揉めたか!それはいい事だな!」



感情を裏表なくすべて表情へと変える、まるでどこかの誰かを見ているかのような。



「まさか、俺が寝ぼけて部屋に戻った合間にそんな事になるなんて思ってもみなかったぜ」



何かに感心するような笑みを見せる銀髪の少年。



「え〜私朝食の時間も部屋でぐっすりしてたから、そんな騒ぎもちろん気づかなかったよ!、その場に居たらボコボコに言ってやったのに!」



「こらサテラ、一応この国の王様の前だよ」


透き通るように美しい赤い髪を指くるくると巻

きながら愚痴をこぼす少女の口を左手で塞ぐ。



このままよからぬ事を口にする前に



「へへっ、」


「なんで嬉しそうにしてるんだか」


「でもその王様の娘と喧嘩しちゃったグランはちゃんと反省してるの?」



痛いところをつつかれた。



「本当に…つい…やってしまった。」



「なにも、殺すつもりはなかったんだ……みたいな感じで言わなくてもいいのに」



「そうだともグランくん、六年ぶりと言ったんだろ?ルミナはそれくらい君の存在に注目したのさ」



「でも、国王」


「元々は私の責任でもある。すまない…」



「そんなっ!国王陛下頭をお上げください!行く宛てもなくさ迷っていた僕達の事を迎え入れてれたのは陛下です。恩があるのは僕達の方です」




十年前


帝国の進軍により生まれ育った故郷の村を失った僕達三人は帝国軍事育成機関にて訓練を施された。


小さな内に技などを習得し、戦場を経験することで、国家機密である色々な特殊部隊に配属されることになる。


当時の僕達三人はすでに大人に引けを取らないくらい優秀な功績をあげていった。



二年後

僕だけダンとサテラとは異なる部隊に配属された。



帝国最上位騎士団と呼ばれる部隊、

「終焉」

帝国のトップの実力をもつ若き天才だけが構成された特別チームだ。


全部隊からたったの十名だけが選出される

最上位騎士団に入り、命令のまま功績を残していった。


そして、三年前の対戦で帝国の非道極まりないやり方についていけなかった僕は

別部隊で動いていた二人と協力を図り。

対戦に乗じて姿を消し、帝国を後にした。



数日間他国を渡り旅をしていた僕達は

当時の国王陛下率いるドラゴン討伐騎士団と遭遇した。もはや壊滅状態の騎士団に代わり、僕達がドラゴンを討伐した。

そして国王陛下から直属にスカウトを受け、


帝国との大戦後から結ばれた列強四カ国同盟にて、特例でパラディンの資格を与えられた。


四カ国同盟、連合とも言われるが、その切り札「パラディン」、ドラゴンを単独で倒す事ができる者と言われている。


その後、同盟軍から依頼を受ける度に

それを引き受け続けて今に至った。



そして今、国王陛下から召集があり、新たな任務を命じられた僕達は同盟軍の依頼からは一時離脱し、特別任務に当たっている。



もう二度とあんな惨劇を起こさないように、


僕達三人の目的はそれだけだ。



「おい?グラン……グラン」


相棒に肩を揺らされた事で自分がぼっとしていた事に気づく。



「あぁっごめん!ちょっと考え事してたんだ」



「そうか、」



「グラン、、」


「ワタシはねグランくん、君たち三人の話を聞いた時、本当に胸が痛かったよ、その割には君たちを上手いように使っていると言われるかもしれない、だからその時はこの国を捨てて行っても構わないと思っているよ」



「いえ、そんな事は、」


「いや、こういう話を先にしてくれてんだグラン、ありがたいことだ」


「うん、でも僕は、、身勝手に捨てるような事

は誓ってしない。陛下にも恩がある。」


「……」


パチンッ


掌を合わせる音に自然と視線が集まる。



「さて、そろそろこの話は終わりにするとしようか」



「では引き続き三人とも、表向きは任務もそうだが、あまり経験がなかったこういう普通の学園生活でしか学べない事もあるだろう、長い休暇だと思って心を落ち着かせてくれたまえ、

では。」



頭を下げ、陛下は先に部屋を後にした。


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