第3話・最初の朝
明朝6時
「ふぁ〜あぁ……昨日の今日で朝早すぎねぇかここ」
ふらふらと学園寮の廊下を歩む銀髪の少年、
彼の頭は今爆発していた。
長年の付き合いであり慣れっこだが、寝癖がここまで悪いのはきっと彼以外には居ないだろうと確信している。
「確かにね、でも仕方ない仕方ない」
「確かに、入学式の次の日から授業とは思わなかったよ…昨日はスピーチで散々な目にあったし…」
「まぁ、この寮は流石に国が運営してる学園なだけあるけどな、お城に住んでるみたいだ」
「うん、こんな待遇はきっとSクラスだけだろうけど」
この学園は毎年各クラスピッタリ15人になるようにわけられる。つまり学園全体では75人、と言いたいが、今年は僕達三人が土壇場で特待生として迎えられた事になり、Sクラスのみ18人、学園全体は78人となっている。
昨日の入学式が終わりまず最初に寮への案内だった。
学園の生徒は特例の許可を得ない限りは全員寮生活になる。半強制的にも聞こえるだろうけど、厳しい規則がある訳でもなく、ダンが言った通りまるでお城に住んでるような感覚であり、何はともあれ、つい数日前にこの国に到着したばかりの僕達にとってはやはり寮生活はありがたい事だった。
各クラスによって、寮の大きさも全然違うのがやはり格差を感じさせる。
確か一番下はDクラスだったか、
下と言っても彼らも高級なホテルの様な寮であり、貴族の出身でない僕らには
違いはあまり分からないが、プライドが高い貴族は一年間、苦痛を味わうだろう。
ちなみにクラスが変わる事は入学試験または、
進級をする一年に一度だけ、三年間在籍する生徒は多いは多いが、1年や2年余りで区切りをつけ、どこかの騎士団などに配属される物もいる。
「これ美味いなっ!グラン!お前の料理とも並ぶかもしれねぇぞ?!」
「当たり前だよダン、寮の食事は毎日、選りすぐりの一流シェフが腕に力を入れて作ってるんだから、僕なんかが勝てるわけないから…」
「俺はお前の作る料理も負けてないと思うけどな、そう落ち込むな、ほぼ互角って所だ」
「謎のフォローありがと?」
「それよりよ〜グラン、さっきから、いや、
昨日のお前のスピーチからやけにお前の事睨んでるやつ居るけど、なんかしたのか?」
「え、」
相棒は僕が背中を向けている奥を指さす。
「ほらアイツ、すっごい殺気放ってるぞ…」
「いや、なんでそうなるのさ……僕じゃなくてダンの方見てるのかもしれないだろ」
「いや、あれは間違いなくお前だ。お前がスピーチの時この世のものとは思えない眼差しで見てたぞ」
「この国に来たばっかりなのに、誰かに恨まれるようなことした覚えは一切ないんだけど」
「向こうはあるみたいだぜ、あの感じ」
相棒は僕の方をを二回叩き
「授業までにもうひと眠りするわぁ、確か最初の授業八時からだろ?」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!まだ僕食べ終わって…」
「んじゃまたあーとで」
相棒はまたふらふらと階段を上がってゆく。
クラスメイトの視線がこんなにあるのに……なんで一人にするんだよ!
内心怒りの矛先を相棒に向けた所で、
食器を戻しに立ち上がろうとすると。
「グランくんおはよっ!今日からよろしくね!!」
「よろしくお願いしま……す…」
クラスメイトだろうか、まだ名前が分からない…
僕も特に一人じゃする事ないし、部屋に戻ろうかな。
「ちょっとアナタ!」
再び痛い視線を感じ逃げる様に歩く速度を上げる。
「アナタよ!黒い髪の!」
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