第2話・入学式典
「急げッ!入学早々遅刻なんてありえねぇだろ!」
「寝れなかったんだもん!ダンだってのんびりご飯食べてたくせに!」
「まぁ二人とも、慣れない道なのに油断してた僕が悪いし喧嘩はここまで!」
銀髪の少年と赤髪の少女、この二人の朝は機嫌が悪いに尽きる。いつも通りの事で慣れっこだが、流石に今日はそうも行かない。
「よし……間に合った」
「グランッ!止まってる暇なんてねぇぞ!
闘技場はあっちだ!」
入学式典は闘技場で行われるのが決まりだ。
全くどんな顔をして入ればいいのだろう。
「迷ってる暇はねぇぞ!サテラッ!」
「うん、分かった!」
バコンッ!
大きな扉をサテラが蹴り飛ばす。
会場の関係者、生徒、教員、の視線が一斉にこちらを向いているのは分かるがやはり辛い。
「Sクラスの残り組か、遅いぞっ、お前ら三人の席はこっちだ」
きっと女性の指導者だろう、この状況で救いの手を差し伸べて貰えるのは幸運でしかない。
「「「はいっ!」」」
「この奥に三つ空いている、そこに座れ」
「分かりました、ありがとうございます。二人とも先に奥に」
狭い隙間を先に進む二人、その後に続こうとするが右腕を掴まれる。
「待て黒髪、お前はこっちだ」
「え?」
「お前は今年度のSクラス首席だ。すぐに祝辞だ。裏口へ回れ」
「なっ、分かりました先生……」
まさか名門エリートコースの首席に自分が選ばれているとは思わなかった。そういうので選ばれるのは大抵は貴族のお偉い方の親族などが
親の圧や忖度で決められる物だと思っていたが、その辺は実力主義や公平さが平等な学園なのだろう。
そんなことを考えながら登壇していると、
暗闇からこちらに向ける厳しい眼差しが一つ。もちろん目立ってる所にいる訳で、視線なら数え切れないほどあるが、、なにか違うような。
黄金の髪…?、
一瞬気にはなったが、
進行役は待ってくれない。
「さて、今年度のSクラス首席の祝辞を持って、
幕を閉じましょう」
きっと、今から僕が行うことは、もっと前から、計画的に自ら選ばれると信じてきた者たちが何度も何度も練習を重ねてきた栄光のある事なのだろう。
ここに今立ってそんな人達に今どんな顔を向ければいいのか全く分からない、いや、自分は今どんな表情をしているのかも心配になるくらいだ。
だがもう辿り着いてしまった。
「Sクラス首席!グラン・アルデラ、前へ」
「はいっ!」
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