第20話

「おはよう。今日も二人は一緒なのね」


 先週のちょっといやらしい雰囲気のお辰風コーディネートとは違って脱出ゲームを意識した動きやすそうなパンツスタイルの黒星さんの先制攻撃。


 白兎さんとは待ち合わせしたわけではないけど向こうが勝手にワープしてくるからさっき出会ったばかりなのに一緒にここまで来たように見えてしまう。俺と黒星さんをくっ付けようとするならこれは逆効果なんじゃないか?


「ふふ。黒星はわたしと良平の関係が気になるようだぞ。ただの友達ならこうはならない」


 俺にだけ聞こえるような小さな声でつぶやく白兎さん。俺へのメッセージなのか実況なのかは定かではない。別に俺に好意がなくても、男女のクラスメイトが一緒に居れば気になるのが女子高生というものではないかと思う。


「私には関係のないことだけどね」


 ほら、黒星さんのツンツン態度は今日も変わらない。デラレンが関わっていなければ俺への興味なんてこんなものだ。


「ほっほっほ。黒星の態度は実況し甲斐があるぞ。仕込みなんじゃないかと疑われるレベルだぞ」


「誰が何を私に仕込むのよ」


「それはもちろん……おっと。これはセンシティブなので控えるぞ」


 ニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべてスマホを見る白兎さん。たぶん『俺が黒星さんに種を仕込む』的なコメントが流れてるんだろうな。神様も結構ろくでもないと目の前にいる合法ロリが示しているのでたぶん当たっているし、即効でそんな発想が浮かぶ俺もろくでもない。

 それが男子高校生というものだから仕方がないと思ってほしい。


「それはそうと今日は三人一組で脱出ゲームだぞ。黒星よ。輪を乱すでないぞ」


「白兎さんに言われるのは心外ね。空気を読まずに実況する人に言われたくないわ」


「ほっほっほ。実況という第三者の視点が脱出のカギを握っているかもしれないぞ」


「ふっ。デラレンを甘くみないことね。きっとデラレンで培った経験とひらめきことが脱出のカギよ。地頭くん、白兎さんに思い知らせるわよ」


「お、おう」


 なぜか白兎さんに対抗心をメラメラと燃やす黒星さん。ツンツンの対象が移ったことで俺への対応がちょっと柔らかくなった気はする。だけど今日はチームプレイなんだからどちらに対しても教室で見せるような笑顔でいてほしい。


「あ、ここだよ。すごい。デラレン2のお城みたいだ」


「外観から世界を再現するなんて、脱出ゲームも期待できそうね」


「ちなみにデラレンの脱出ゲームは制限時間三十分で一組で三回挑戦できるんだって。失敗を重ねてプレイヤーがレベルアップするところも再現してるみたい」


「一回でクリアしてしまってもいいのでしょう?」


「脱出ゲーム初挑戦なのにすごい自信だね」


「デラレンの経験ならたくさん積んでいるもの。自信があって当然よ」


 妙に自信たっぷりな黒星さんを見ているとフラグのように思えて仕方がない。勉強ができればそれだけ知識や広い視野があるわけだからひらめきクイズにも対応しやすいのは間違いない。クイズ番組で無双する東大生がその良い例だ。

 だけど黒星さんからはそのオーラを感じない。むしろ追い詰められてあわあわする姿が思い浮かぶのは俺の願望だろうか。

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