第18話
「今日は楽しかったわ。だけど、くれぐれも学校でデラレンの話題を振らないでね」
「わかってるよ。学校での黒星さんとコラボカフェの黒星さん、別人みたいだったし」
「う、うるさいわね。私だって申し訳ないと思ってるんだから」
「申し訳ない?」
「いいから。とにかく次の日曜日は脱出ゲームよ。地頭くんから誘ったんだから忘れないように」
「もちろん。謎解きは黒星さんにおんぶにだっこかもだけど」
「意外と白兎さんが活躍するかもしれないわね」
「ほっほっほ。わたしはこの手のゲームは苦手だぞ」
なぜか得意気に笑う白兎さん。
「よかったな良平。黒星にカッコいいところを見せるチャンスだぞ」
「いやいや、俺だって謎解きなんてテレビのクイズくらいしかやったことねーよ」
白兎さんが俺と黒星さんをくっ付けようとしているなんて知れたら遊びに行く計画自体がとん挫しかねない。こそこそと小声でやり取りしているとこんな指摘を受けた。
「二人って本当に仲が良いわよね。本当に付き合ってないの?」
「付き合ってないよ。転入する少し前に知り合ってるだけでただの友達。ね?」
「そうだぞ。わたしと良平では釣り合いが取れん」
神様と人間だからだと俺は理解している。じゃあ、黒星さんは?
「たしかに白兎さんにはもったいないかもしれないわね」
「え?」
「ち、ちがっ。地頭くんにはもったいない。そう、言い間違えたの。白兎さんみたいな可愛いらしい子は地頭くんにはもったいない」
「だよね。うん」
「ほっほっほ。二人ともわたしの可愛さを認めるとはお目が高いぞ」
何となく黒星さんの良い間違いという形で流されたけど、間違いなく白兎さんにはもったいないと言っていた。つまり、俺を高く評価してくれたということだ。
「それじゃあ、私はこっちの電車だから」
「うん。今日はありがと。一人じゃコラボカフェなんて行けなかった」
「私もよ。これからもデラレンファンとしてよろしくね」
やけにデラレンファンを強調して黒星さんは上り線のホームへと向かった。俺と白兎さんは下り線のホームへと降りていく。
「あらあら、黒星の中である感情が芽生えてるみたいですな~」
「急にのろみんさん風の実況するのやめろ」
「照れ隠しかなあ? うふふ。噛み噛みで誘う姿もおもしろかったで~」
「やっぱり笑い者にされてたのかよ」
「そうでもないで。一生懸命さが結構ウケてたみたいで、良平を応援する声もちらほら」
「マジか……」
白兎さんが見せてくれた画面にはたしかに俺を応援するチャットのログが映っていた。
「学校では進展が望めない分、デートの時は神界での期待も高まるぞ」
「その期待に応えられる自信はないんだが」
「ほっほっほ。そこをアシストするのがわたしの役目だぞ」
それが一番不安なんだが……と言いたいところだけど、現に白兎さんの暗躍が来週の脱出ゲームに繋がっている。はんなりとポンコツそうに見えて時折スーパープレイをするのろみんさんみたいな、今日の白兎さんはそんな雰囲気を醸し出していた。
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