最終章 「黒幕は身内」とか!

第55話 黒幕の正体

 領地に戻って、作戦会議となった。女神とは、まだ通話中である。


 こんなの、王都の人たちになんか聞かせられない。パニックになる。話すとしても、内容がある程度まとまってからだな。


 まさか、【世界の裏側】を使ってこの世界に侵食しようとしていたのが、モモコの祖父だったとは。


『いわゆるラスボス的な存在ですが、名前は龍洞院りゅうどういん 将鬼まさき


 こちらでは、魔将ましょう鬼龍きりゅう】と名乗っているそうだ。


 オレは、モモコをじっと見た。


「ん、なにクニミツ」

「モモコの別名である『ロザ・ドラッヘ』と大差ない、中二ぶりだな、と」

「あんなのと、一緒にしてほしくない」


 モモコが、頬を膨らます。


「たしか龍洞院は、広域暴力団だったよな」

『はい。モモコさんが盗んだものが、彼らにとって重要だったのです。また、あなた方にとっても』

「ん? モモコって、金を盗んだんだよな?」

『巨大組織が、あんなはした金ごときであなた方を追跡なんてしません。本当のお金だったら、くれてやるくらいだったでしょう』


 しかし、龍洞院はオレたちを血眼で追いかけてきた。それこそ、殺す勢いで。


「私が盗んだお金が、そんなに大事だった?」

『ではアタッシュケースの中を、確認しましたか?』

「そういえば、一度も開けていない」


 おいおい。とんでもない物を運んでいた可能性があるな。


『実は、お二人が盗んだものは、異世界へのカギだったのです。それこそ【世界の裏側】の』

「マジか!?」


 だから、オレたちが選ばれたのか。


「奴らは、異世界へ行って何をするつもりだったんだ?」

『支配です。現代チートなんて使えば、こんな低文明の世界なんてあっという間に蹂躙されてしまいますから』


 日本の支配が頭打ちになった龍洞院は、異世界にターゲットを絞ったという。


「現代日本から異世界へ行く方法とか、研究されていたの?」

『はるか昔からあります。それこそ「神隠し」なんて、極秘裏に異世界へ向かう方法のひとつなんですよ』


 神話の時代は、神の世界と人間界は地続きだったらしいからな。


『それで、ある程度解明されかけたときに、あなた方が異世界へのカギを手に入れてしまったと』

「魔王復活にも加担している?」

『はい。魔王というのは、日本でいうと「高エネルギー」っていうんですかね?』


 扱いはシャレにならないほど難しいが、存在しているだけで魔物が活性化してしまうとんでもない代物らしい。


『すごーくベタな言い方を致しますと、【永遠の命】が手に入ると思っているらしく』 


 それを、鬼龍は手に入れようとしている。


「クニミツ、かなりマズいのではないか?」

「そうよね。鬼龍ってのは、相当ヤバい奴みたいだし」


 オレも、たしかにそう思う。


「マズいのか?」

『魔族と契約し、彼は人としての理性など失っていまして』


 居場所はわかっているそうだ。端末に、鬼龍の根城の位置を書き込んでもらう。


 とはいえ、相手はモモコの身内だ。人間なのである。


「人間相手に、全力を出していいものか。まして相手はモモコと血縁関係だ」

「私は、身内だからこそなおのこと、止めないとって思ってるよ」

「そうか」

「それと、ここではなんでもあり」


 うわーっ。すごいうれしそうな顔になったぞ。


「今までさんざん私を苦しめてきた根源に、何をやってもいい」


 銃を指で撫でながら、モモコはウットリとした。相当、嫌な思いをしてきたのだろう。


「ましてや、この世界の人たちに嫌がらせをするなら、私は容赦しない。相手が身内でも」


 さっそくモモコは【作業台】に銃を置き、アップグレードを開始した。

 【かまど】にも火を付けて、素材を加工する。


「レティ姫から、【錬金ツボ】の使い方も教わったモジャ」


 その他にも姫はお礼として、使えそうな素材を大量にくれた。


「試してみよう」


 一日かかりで、武器を仕上げる。

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